むかしむかし、森のなかで、こぶたとオオカミが、であいました。
2ひきはいつしか、ともだちになりました。
はれた日には、たかいたかい木の下で、おいかけっこをしていました。
ゆうがたになると、2ひきのおなかはぺこぺこです。
こぶたは、おおむぎをムシャムシャとたべました。
『オオカミさんはたべないのかい?おいしいよ!』
『きょうは、おうちに帰るよ。ママがまっているから』
あめの日には、せまいあせまい穴ぐらで、からだをよせあっていました。
あめがあがると、2ひきのおなかはぺこぺこです。
オオカミは、穴ぐらでみつけたネズミをたべました。
『こぶたさんはたべないの?おいしいのに!』
『うん。ママがごはんをつくってまっているから』
それからどれだけの日がすぎたのでしょうか。
こぶたは、すっかり大きくなりました。
それでもオオカミは、『こぶたさん』とよぶのです。
ある日、オオカミはおおむぎをたべました。
そしてつぎの日、おなかをこわしました。
『うーん……。うーん……』
うなりながらねむっているオオカミのおうちに、こぶたがやってきました。
『オオカミさん、大丈夫?』
『君はどうしてあんなものが好きなの?』
こぶたは、かなしい気もちになりました。
けれど、わらったままでいました。
ある日、花ばたけで2匹はあそんでいました。
『こぶたさん、元気ないの?』
『あのね、きのう兄さんがいなくなったんだ』
『まいご?』
『ううん。ママは、もう帰ってこないよ、って』
オオカミは、くびをかしげました。
そして、その日はこぶたの姉さんがいなくなりました。
オオカミのお母さんは言いました。
『ぶたは、ぶたにくにされる、うんめいなのよ。かみさまが、きめたこと』
『うんめい?』
はじめてきいた、ことばでした。
それなのに、オオカミのむねは、きゅ、とくるしくなったのです。
おちばがふりつもり、せかいはこがね色にかがやいていました。
オオカミは、ひとり、すわりこんでいました。
赤いおちばにかこまれて、そらをあおいでいました。
『こぶたさん……』
のどから、ひゅう、という音がしました。
オオカミは、心のなかがからっぽになった気がしていました。
その夜、森にはオオカミのなきごえがこだましました。
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