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[蹲り、手を伸ばす少女を見上げて。]
僕には出来ると思っていた。
治せると、救えると。
…本当は、何の力も持ってやしなかったんだ。
食い止めることも、遅らせることも出来ず、ただ看取ることしか、
僕には、出来ない。
ライデンは覚えてないのね。写真を撮ったときに、会ったのに。寂しいわ。
[笑みはだんだん引いていく]
カナメは教えてくれなかったのかしら?
ここには、ひとをくらうものが眠っているって。
私は──博士たちの言葉を借りるなら『恐ろしい失敗作』 。ひとをくらって生きるもの。
楽園。
[次々に口にされるその言葉が、酷く空虚な物に思えて手が震えた]
>>+22
きっと、救えていたよ。
[指先は、掠めるようにユウキの髪の毛を撫でる]
救いは、生きることだけではないもの。
[少女が優しくかける言葉に、それでも首を振り。]
彼女を、あんなふうにしてしまったのも。
[透ける手は、褐色の肌を切り裂いて装置を埋める感触を覚えている。]
まだ不完全だったんだ、あの技術は。
けれど、そうしなければ彼女は…
私は……
[ペケレの言葉に下ろした手を握り締め]
ひとを、くらうもの。
[抑揚の薄い復唱は、暗に聞いていなかったという事を伝えるようで。
カナメはただ、生き延びるために手向けろというルールを。そして役目とを伝えた]
「人を喰らう失敗作」……
そんな……君がそれだと、言うのかね?
バクもそうだったのかね……?
赤ずきんちゃん。
そんなにわからないと言わないで。
人の脳は──忘れない。
思い出すきっかけを失っているだけ。
カナメの部分は決して消えない。
>>+24
それは自分の為?
それとも、誰かの為という大義名分?
[低い囁きは、感情を抑えたように平坦に]
同じことなのに。
子どもみたい。
[ユウキのつむじの辺りを、ぐいっと指で押した。
くすくすと笑い声が響く]
カナメ。
私の役目は、何だった?
本当の私の役目は……何だ?
君は誰で、私は誰なんだ?
[口からは問いばかりが零れる。空気はひんやりとしているというのに、肌が汗ばみ]
忘れたんじゃない、思い出したくなかったんだ。
眠らせて、鍵をかけて。
眠らせて、鍵をかけた。
プレーチェ。キミは、救われた?
[涙を流せぬ目は、雨の日の犬のよう。]
あぁ、ここは楽園さ。
正確には、楽園への入り口だ。
なぁお前達、人間の作った建造物の中で。
人間が作った技術で、眠っていたはずの俺達が。
何故誰の助けも借りず、今日まで生きていたか。
わかるか?
何故キッチンには沢山の食材がある?
何故水もやらぬのに草木が生きている?
わかるか?
それがわかれば、楽園への入り口は開く。
考えるといい。
俺達は消えたんだ。
死んだんじゃない、消えたんだ。
[クスリ、クスリ。]
そう。
私は、にんげんを、食べる。
[赤い花が手向けられた墓碑を見やる]
[バクの名前を聞くと、表情が悲しげに揺らぐ]
バクは、人の夢を食べるのよ。記憶を食べる。
ひとを、くらっていきる――
[不思議な、ふしぎその響きが、
身体をはしりぬける]
『プレーチェは、ここに。』
『アンはここに。』
[その、意味する所はしれるだろう]
[頬をたどるペケレの指は、
すこし目を細めて受け入れた]
カナメ――?
>>+26
[向けられた瞳に、伸ばしていた手をわずか引いた]
あたしは、救いを求めていたの?
[質問に質問で返して、戻りきらぬ記憶を取り戻そうと気は焦る。
気がついたときには、真顔で首を左右に小さく振っていた]
でも、誰も恨んでないよ。
わからない、だがもしかすると…
すべては最初から何も無く、
すべては最初から誰も居ず、
ある事を望むものの為に綴られるただの美しい夢。
…いや、そんなはずは。
――うるさい。
[カナメの声を振り払う]
[その行為は哀切を含んでいて]
[いや増してくるのは、影たちの声]
獏が…。
獏は…自分の夢を取り戻そうとしていた。
食べるのは…その、ため?
入口。箱庭。
カナメ――。
[聞こえる言葉を反芻する。
しかしどれも、プレーチェの中で意味が掴み取れない]
"I pray for the dream to."
[両手で耳を押さえ、口から零したのは“最期”に聞いた言葉。
思い出せるのは、遠い遠い、父と母のぬくもりのみ]
君はひとを食べるもの。
バクはひとの夢を食べるもの。
二人は……
[乾いた口内。空気だけを飲み込み]
私は、
[言いかけて頭を押さえた。
俯き、何かに耐えるように]
[影の方へ耳を澄ませる]
…。
レン、だいじょうぶです。
ペケレなら、ライデンなら。怖くはない、です。
それにライデンとは、起きる前に…眠る前に…ともだちだったのかもしれない。
[あの写真]
結びつきは――
[言いかけて口を閉ざし]
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