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[全てが終わるのを、近藤は複雑な気持ちで眺めていた。
コハルが手にした携帯電話は、生者の世界との繋がりを象徴するようで。――自分には関係ないモノ。そう思うと、もう存在しないはずの心臓がキリキリと痛む。
ふと窓の外を見れば、今まで墨をぶちまけたように真っ暗だった世界に光が射し始めていた。
きっともうすぐ、彼女はここから出て行く。そして、自分には二度と手の届かないところへ、帰ってしまう。偽汽車に魂を捕われた己は、彼女の夢に現れることすら叶わないのだ。
名を、呼びたかった。叫べば、振り返ってくれる気がした。]
――っ、……!
[二度、三度、喉元まで出かかったその名前を、愛しい音を、寸前で飲み込む。
この道を選んだのは、自分。死を受け容れたのも、自分。
だから赦されない、と、理性は知っている。痛いほどに。……それなのに。]
――生き、て……。
[己が肉体を失った直後は、それだけが願いだったはずなのに。そして、それは叶ったのに。]
どうして……こんな……――、
[ほどけた想いは、徐々にひとつに固まり、尖り、己の心を容赦なく突き刺す。]
行くな……、俺を置いて行くな……!
[喘ぐように浅い呼吸を繰り返しながら、遠ざかって行くコハルの背中を目で追う。
魂はもう、此処から動けない。生者の世界に帰って行く彼女には、触れられない。
あぁ、そうなのだ。]
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