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おめでたい話とか、おめでたい話とか…。
有ったらちゃんとモミジに話すわよ。真っ先に。
[夏なんだか冬なんだかはっきりしない秋生まれの男との仲を誤解され、少し呆れたようにため息を吐き出し、モミジに手招きされるも、逆にモミジを自由帳へ手招きし、それぞれ見える絵面の話に耳を傾けていたのは昨日の話。]
[いつの間にか赤に消されていたアンの名前。だけど、ここで誰か赤いペンを持っていただろうかと思い起こしてみるが、記憶には思い至らず]
何か……やだな。
[好奇心よりも先に立つのは不気味さ。何だかこのままここにいる気になれずに、席を立つ]
んじゃね、また。
[軽く手を振って別れを告げるが、一人の少女がいないということが、大きな騒ぎになるとはまだ*気づかずにいた*]
[あのあとなんとも思わず帰宅したポルテの自宅の郵便受けには、確かに何も入っていなかったが。]
……なんじゃこりゃ?
なになに…?
【冬木夏彦 否 人攫い…かも】?
……新たな都市伝説? ってったて、この村かなり田舎だしなぁ…。
[少女がひとり姿を消したとポルテの耳に入るのは、まだもう少し*先のこと*]
―昼・自室―
凛子ちゃんがいれば起こしてくれるのに。
[部屋を共にしていた姉が、東京で一人暮らしを始めたのは数年前の話になる。
それなのに今でも、寝坊するたびに思い出してしまうのは、朝から五月蝿かった姉のこと]
サボりたいなぁ……。
[布団を畳んで押入れに仕舞うと、ゆるゆると制服に着替えて家を出た]
―喫茶店―
え?
いえ、昨日ここで見たきりです。
[マスターに問われたアンの行方。
自分のように寝坊しただけではないかと訊ねるも、昨晩帰宅していないという説明をされて黙り込む]
[もう一杯コーヒーを飲んで、帰り際にまた自由帳を見ると、少女の名前が真っ赤に消されていた]
…そういえば見ないな。いや、もう帰ったとしても不思議じゃないんだが。
しかし…
[赤い色から不吉なことを連想する。振り払うように頭を振って喫茶店から*出た*]
―回想・昨日、喫茶店―
アンちゃんの名前が、消えてる?
[ナオの呟きに、自由帳に目を落とす。確かに赤く塗られているけれど。見つめていると、あの変てこな絵がまた動きそうな気がして、目を逸らす]
……へんなの。
[しかし。やがて運ばれて来たオムライスに心を奪われて、すっかりそんなことは忘れてしまって。夕方、店に迎えに来た母親とともに、帰途についた]
―翌朝・喫茶店に向かう道―
すったか。すったか。すったかすー♪
たのもーう!
[昨日と同じように、喫茶店の扉を開ける]
アンちゃん、いつものねー。
[けれども、アンの姿はなかった]
ちょっと夜遊びしてたら帰りそびれたんじゃないですか?
マスターったら心配性なんだから。
誰かに会ったら、訊いてみますよ。
[憔悴した様子のマスターに昼食を注文することは憚られ、学校へ向かうことにした。
人影があればアンの行方を訊ねようと*思いながら*]
[険しい顔のマスターが、あちこちに電話をかける様子を不安そうに眺めていると、サヨが来店してくる]
キョウコちゃん!
[何となくホッとして、サヨに声をかけるが、彼女とマスターのやりとりを聞いているうちに、ふたたび気分が重くなる]
アンちゃん。どこ行ったのかなぁ。
[サヨの後姿を見送りながら、所在無げにスカートの裾を*いじっている*]
―翌日・自宅―
アンが行方不明?
[お袋からそんな話を聞かされても実感なんてありゃしない。
こんな平和な村で、人が一人消えて、それが知り合いだなんて、受け入れられないのが普通だろ。]
お泊りとか家出とか事故とか、そんなんじゃねぇの?
[後の2つは出来ればごめんだけどな。]
ゆーかい?へーきへーき、俺なんか誰もさらわねぇって。
[心配性なお袋の言葉を半分聞き流して部屋に戻る。]
…さて、夜刀も動いてる事だし、こっちの仕掛けも動かしとくか。
[手紙と、それからもう1つ。願われた者を異界に誘う仕掛け―
俺自身は舞台に上がる気はねぇ、けど上げられてもそれはそれで面白そうだ。]
―面白くなってくれよ?
―翌日―
[蝉がみんみんと鳴く中、喫茶店へとたどり着いた。
ベルの音と共に中にはいれば、いつもと違う緊張した雰囲気に、戸惑いを覚える]
マスター、何があったんですか?
[険しい顔のマスターが、アンが行方不明になったと、話してくれた]
アンちゃんが?!
はい…お家にも連絡がないと…
[話を聞くために、カウンターに座った。しかし、座れば何も注文をしないのも気が引ける。
周りを見れば、ルリが所在なさげにしているのが目に入り]
あ…レモンスカッシュお願いします。…ルリちゃんのも一緒に。2つ。
[連慮しつつ注文をした]
[マスターから話を聞きながら、レモンスカッシュに口をつける]
そうですか…どこにも連絡はないと…。警察からもなにも情報がなくて…まるで神隠しにあったよう、ですか…
[不安げなマスターに、大丈夫ですよ、と声をかける。
しばらくして、レモンスカッシュの中の赤いサクランボを口に含んだ。
舌の上で、真っ赤なサクランボが軽く踊る。
口の端で、ちろりちろりと、赤い茎が揺れ動いていた]
−回想・昨晩−
え、アンが行方不明!?
[驚きを隠さず、いや隠せずに叫ぶ。昼間アンを見たことを言えば、そのときのことを根掘り葉掘り聞かれ]
確かに、いつもとは様子が違いましたし、気が付いた頃にはもういなくて。
すぐ戻ってくるんだろうって思ってたんですけど……。
[だけど、あの自由帳のことは言えなかった。気味が悪いというだけで、関連性には乏しい話をしてもややこしくなるだけだ]
−翌日・道−
[昨日のことが頭を離れなくて、足は自然に喫茶店へと向いた。誰かが何かを知ってる気がして。それに]
……戻ってきてればいいんだけど。
[自警団の人が山狩りをしても見つからなかったというけど、もしかしたら戻ってるかもしれないから]
[仕掛けを準備してから、いつものようにサテンに向かう。
本日も晴天なり。]
いい天気だなー、ほんと。絶好のプールびよりってやつ?ま、俺には無縁…。
[昨日の室内プールの約束を思い出して、ちょっと足が鈍る。]
…………アイツが残ればいいだけか。自腹って最終手段もあるんだし。
[自分に言い聞かせるようなのは…否定しない。]
―喫茶店―
ちわーっ、マスター、カレー1つ!
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