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カレーどうぞ。
[先ほどよそったカレーを、レンに何食わぬ顔で差し出す]
プレーチェとひつじさんはお散歩?
行ってらっしゃい。
おはよう。さては君も起きたばかりかね?
名前はレン、というのだね。
改めて私はライデンという、宜しく頼もう。
[レンに挨拶を返したところで、響く鐘の音に]
ん……?
鐘、か。何処かにあるのだろうか?
[不思議そうに呟く。
また、と、去るプレーチェを見送って]
[プレーチェを見送ると、
すとんと椅子に腰掛ける。
残ったプリンを食べつつ、会話を聞くともなしに聞いている]
[いつしか。
テーブルの上で眠り落ちている。
隣には、綺麗に畳まれた*黒い上着*]
…医者?
[ライデンとか言う男に言われて、自分の姿を省みる。]
あぁ、そうかも。
どうすればいいかは、知っていた。
[不思議そうに首をかしげて。]
僕は、ユウキらしい。
どうもまだ…眠くてね。ボーっとしてしまうな。
ふむ。
どうにも、此処にいる者は皆して色々な事を忘れてしまっているらしい。
かくいう私もそうなのだが……何だか奇妙な感覚だ。
[口元に手をあて、ううむ、と大げさに悩む仕草を。
名乗る相手に]
ユウキ、か。
宜しく頼もう。眠い、というのは……
起きてすぐだというなら、気持ちはわかる。
[頷いてみせ。起こした椅子に座り直し、改めてカレーを食べ始める。そのうちに眠ったらしいペケレに気付くと]
む。此処で寝ていては……
風邪を引いてしまうかもしれないな。
とはいえ運ぶわけにもいかないから、……
[少し考えてから立ち上がり、ペケレの傍に歩み寄った。隣に畳まれていた上着を広げ、相手の肩にかけて]
お散歩。お散歩。
[頭上には昼よりずっと弱い光]
月。
[しばし立ち止まり見上げていたが、思い出したようにまた歩き出す。
墓碑群のある石畳は、素足をひんやり冷やした]
―二階―
[たまたま見つけた階段を登り、最上段に腰かけて。そのまま下を見下ろしてみる。世界を包む孤独の闇が、色を変えていくのではないかと思ったから。しかし、闇は何処まで行っても闇のままで。世界は、やはり暗かった。]
あぁ、鐘の音が聞こえる。
…カナメ? どうしました。
[やおら、ここから退出をと、
促す声色は硬さを帯びていた]
この部屋がイヤですか?
どうして、ですか。
[面白い所を邪魔され、
対するルリの問いも少しばかり強くなる。
だが今の所は、声はパートナーで]
――テンマ?
[肩を包んだ温もりに瞬く。
[振り向き、相手を確かめた顔が、
ゆっくり、ほころんでゆく。
彼の言葉を聞けば、その笑みは――]
テンマ、眠るですか。
[そして手渡されたものを、
握りこみも放しもせずに。掌で受けて]
鍵ですか。
でも。でも。コジンの――テンマだけのが鍵です。
[鍵をもったまま、彼の冷たい指先へ
そっとルリの手の甲が触れた。けれど]
[亡霊は、人気の少ない通路で、鳴り響く鐘を聴いた。
カラン――… とろり 重くなる瞼。
カラン――… じわり 食欲の記憶。
己には薄く透けるようだった、生と死の帳が厚くなり
世界は蒼く蒼く冷えゆく。その冷たさも記憶にはあり…]
…ああ、鐘の音が聞こえる。
[螺旋階段へ腰掛ける失人の呟きを拾い、彼の傍らへ佇む。
空気を震わせぬ声音はKnock――響きは、どこか甘い。]
終わりの始まりに、祝福を。
[失人は、そこでしばらく景色を眺める事にした。誰かがそこにたどり着き、失人がその存在に気がつくまで。]
孤独の闇は覚えている。
しかし、その癒し方は忘れてしまった。
[失人は、月の光を浴びながら考えた。世界の色を変える術を]
[どうぞお好きに、という――
微睡む亡霊の目をルリはただ見つめた]
時がきたらきっと、テンマにお返します。
[そのまま彼の手を引き、
祭りの映像をさし、次に会った時は、
こんな楽しそうな遊びをしようと誘って。
やがて去りゆく背を見送る、表情など誰にも届かない]
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