──あっつ……。
[右、左、右。並木道に繋がる階段の最上段を、丁度右足で踏み締める。12段。
折りたたみイーゼルに30号ほどのキャンバスが入ったカーテン…もとい、手製のバッグを肩に引っ掛け、手には筆洗い油入りのアルミ缶、筆と絵の具が限界まで詰まった工具箱が握られている]
…太陽、爆発しろ……いや、したらあかん…。
[えっちらほっちら、荷物を揺らしながら真っ直ぐに木陰を作る木の根元へ。
ついた途端乱暴に荷物共々腰を落し、深々と溜息をついた]
[向かい側のベンチでは、少女たちが談笑していた。
眉を寄せぐっと目を凝らすと、片側の少女には見覚えがある。
高校時代の部活の後輩だ。名は、確か──]
トリヤマ……じゃねぇな、小鳥。小鳥川!*
[店の奥から、不意に怒鳴り声]
こらァ バク !
[厨房から顔を出すのは、この店の雇われ料理人]
勝手に漁ンな っていつも言ってんでしょ! !!
其処らじゅう ベタベタ触ってたら
うちのオーナーが…
[云いながら、小姐は大股で店内へ歩み来る。
眦の切れ上がった双眸は、バクを軽く睨んで。
それから、
オーナーと呼んだ相手――ンガムラを見遣る。
さしたる混雑もなかったランチタイム後の、小休止。
小姐の両手にはひとつずつ、熱々の小さな*蒸籠*]
[>>9青いパステルで描いていた『扉』の絵から顔を上げる]
ライデン先輩どうしてこんなところに。
あはは、さてはもう大学がイヤになっちゃいました?
でも「こーひーぼーる」だなんて、アナタ誰から聞いたの?
[グラスを扱う手にはハンカチ。
お供えと聞けば先代から譲り受けたレシピ、ぴらぴら捲る手を止めて]
お供え、もうそんな時期か。
そう言えばおねぎちゃんがトリュフチョコ、美味しそうに食べてたわあ。
ま、あの人が美味しくなさそうに食べてるところなんて見たことないけどね。
[店の奥から響く声にびくりとしたら、注いでいた炭酸がグラスから溢れた。
慌てて布巾をかき集める]
え、あら、だ、大丈夫よ。
慣れたもの、指紋のふたつやひとつや……ええと。
[パオリンと合わせた目は多分動揺ありありとしていて。ただ両手に持っている食べ物を見れば]
アナタも美味しそうに食べるわよねえ。
[感心したように言った]
寄る年波には勝てません。
ってネギヤさんよく言ってるやつですか?
[>>16ライデンに、にやにや]
文化祭用に絵本描いてるんです。
[青だけで描かれているスケッチブックをぱらぱらとめくる]
[小姐はレンゲに小籠包をのせて、
あつあつの肉汁をちゅっと啜る。]
、、 、…
んん 〜〜〜 っ
[口の中をヤケドしそうな其れを飲み込むと
眦の切れ上がった双眸は満足気に閉じる。]
おいしいっ。
心配しなさんなって、バク坊。
お供えものはとびっきりのを作ったげる!
…これ食べたらねっ?
[思いっきり客を後回しにした。]
せっかくお祭なんだから、浴衣着てヨーヨー掬ってわたあめ食べて射的してりんごあめ食べて星のお菓子交換したりしたいじゃん。
[ライデンと距離を置くニキに首傾げ]
あ、ニキちゃんです。
こちら美術部の先輩だった、ライデン先輩。