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頂きます。
[盛って貰ったかき氷には砂糖水をかけ、みぞれにして食べた。ごちそうさまでした、と改めて手を合わせる。去っていくセイジを見送って]
……今日は、蝉が特によく鳴いていますね。
[木の上を仰ぎ見て、ぽつりと呟いた。ホズミに挨拶をしてから、男もその場を去り]
[がた、がたたん!
激しい音と共に若葉は椅子からバランスを崩して落ちた。]
いててて…
どうしたんですかー?
[飛び込んできた教諭が告げたのは、1人の人間の死体報告。それは遺体の解剖、解体依頼でもあった。]
アンちゃんが?
――――…すぐ向かいます。
[ともに長く過ごしてきた家族故の虫の知らせのようなものがあった。最初は小さなものだったが、時間が経てば経つほど強い確信に支配されていく]
ねえ、お地蔵さま。
うちのばーちゃん、見てない…?
[村の端、二つ目の地蔵まで辿り着き誰の前でも見せたことのないような弱々しい呟きをこぼす。
ふと、地蔵の裏側の草が倒れているのに気付く]
……?
―小料理屋―
おはよう。ポルテさん。
[若葉が学校へ向かったすぐ後、小料理屋に着くと、水の入った木桶を台所に置いて]
水ここに置いておくから飲んでね。また後で野菜も持って来るよ。
[若葉が来た事や病状を聞いたりした後、残りの木桶を手に畑へと向かう。]
お地蔵さま、ちょっと失礼します。
[地蔵に手をかけ、奥を覗き込む。ごく最近、ヒトが踏み荒らした跡があった]
ばーちゃん?
……いや、一人の足跡じゃない。複数…。
[少しの逡巡を見せ]
ちょっとだけ。ちょっと。
[誰にともなく許しを請うと、さらに奥 ―禁忌の場所― へ進む]
― 村長の家 ―
はぁ、…はぁ、…っく。
お待たせ……しました。
[小さな肩を上下させながら村長の家に運ばれたアンの姿を見る。
最初の発見者がマシロで、アンが森の奥で見つけたことも聞かされた。
他の村にいる医師もその席にはいたが数は多くない。その後、死因を解明するのと同時に腑分けも始められる。
それにより、彼女の死が 自然死とは明らかに異なり、人の手によるものだと解れば村長は人を集会場へ集まるように村中に連絡が走るのだろう。]
[何処を目指すでもなく、道を歩いていく。ふと、草履の爪先に何かが触れて足を止めた。見下ろせば、仰向いた蝉の死骸が落ちていて]
……、
[見慣れた光景ながら、瞑目して手を合わせた。右手で左の袖の先に触れるのが、男の「手を合わせる」仕草だった。実際に掌二つを重ねる事はできなかったが]
……死。
[そう、呟いて]
[男を含めた村人達が集会所に集められたのは、それから幾らか経ってからの事だった]
――道端――
[仕事道具を取りに自宅へ戻るかと思った矢先、村長からの使い人に呼び止められた]
え、アンちゃんが?
獣にやられたのかしら。
[戴きに向かおうとするホズミの耳に入ったのは、それが殺人と思しきこと、そして、集会場へ来るようにとの言葉だった]
―学校―
[明らかに学生ではない若者が、こちらへ駆けて来るのが見えた。
昇降口から教室まで回って来ると、清治を名指しして集会所へ来るようにと告げる]
え、今からですか?
その、一体何が……
[事情を訊いたが答えははっきりせず、ここでは言い難い事らしいと察せられた]
わかりました。今すぐ向かいます。
授業はとりあえず自習な。縦笛の練習しておいて。
[生徒たちに手短に指示すると、学校を出て集会所へ]
―――足だ。
[そう思ったのまでは覚えている]
……ここは…診療所…?
[独特の薬品の匂いがした。
しばらくして、ワカバから自分が森の奥でアンの死体を発見したことを告げられるだろう]
[死体を発見した自分がアンの流れ出る血を見て啜り、体中に血を浴びて民家の辺りまでふらふらと歩いていたところを保護されたこと、
アンの死因から、自分が容疑者として疑われていることを知るのは、もう少し後になる]
[腑分けの際に切り肉片の欠片も洗浄した腸に血と共に詰めた。こうしておくとある程度保存がきくものとなる。それが村長の好物らしい事も、繰り返す作業の内に知る事となった。]
はふ、…
[両手も白衣も赤に染まり、暫くは血の匂いが抜けないのだろうなと思う。]
……え? アンさんが……?
[瞬き、当惑したような声を零した。歩いていたところを話しかけられ、アンが死んだという事を告げられた。連絡を伝えた者は緊張したような顔で頷き、潜めた声で言葉を継いだ。
アンは人間によって殺されたものらしいと。そして、すぐに集会所に向かうように、と]
誰かに、殺された……なんて。
……、わかりました。今から行きます。
[返事をすると、まだやるべき事が残っているからか、連絡者は何処かへと歩いていった。汗が一筋伝う程度の間、思案するように佇んでいてから、男も歩き出し]
――集会場――
冷めないですね。
暑いですもんね。
[手持ち無沙汰にお茶を淹れた。
湯飲みを並べたちゃぶ台の横に正座して、そわそわと、落ち着かない様子]
あの、ところで、アンちゃんはどういう……?
この村に、罪人が いるんだね。
[確認するように呟いてから、アンの死体状況を細かく書いた手帳を鞄にしまう。]
見つけなきゃね。**
―集会所―
[学校を離れた所で、漸く明かされる。
村で起こった、一つの『殺人事件』。
生贄ではない娘が、人間の手で殺されたのだと]
それは、……え、アンさん?
そうだったんですね……。
[詳しい状況を訊く内、集会所に辿り着く。
戸を開ければ、そこには自分以外にも容疑者の顔があった]
―道端―
[ほずみの家に向かう途中、村長の使いの者に声を掛けられると立ち止まって]
ああ、こんにちは。野菜ですか?今、ほずみさんの家に届ける所だから、これを届けてから…って違う?
アンちゃんが…?
そういえば、最近あまり姿を見なかったけど…
集会場へ?はい。分かりました。
[この村では先天性の疾患や異常で、若くして死ぬ村人も少なくはない。しかし、普段とは違う様子の使いに困惑した表情を浮かべつつも、集会場へ向かい、アンが殺された事を知った。]
……今日は。
[程無くして集会所に辿り着くと、既に集まっている幾つかの姿に挨拶をした。詳細や対応の如何は村長から話されるとの事だったが、まだその姿は見えないようで]
大変な事になりましたね。
アンさんが……
[呟くように言って、少し俯いた]
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