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[男(?)が出て行ったときに開いたドアから、
生暖かい風が入ってきていた。
わずかなそれすらも、男の眉間にしわを寄せさせるには充分。]
あっついな……。
[日差しは凶悪で、できるならばずっと電車に乗り続けていたい。
車内の冷房は男には丁度良く、日差しを遮る座席の位置も
大きな魅力のように思われた。]
[好きかどうか。そう問われて思考を巡らせる
"坊ちゃん"は一度、最後まで読んだ事がある。主人公が最後に赤シャツ等に天誅を加えるのを、何故かよく憶えていた
きっとこういった痛快な展開を何処かで望んでいるのだろう。話の主人公とは違って、こっちの世界では首と引き換えにはなるが
そんなことを巡らせながらどうまとめたものかと頭を回転させる。
女学生と同じタイミングになっているのは偶然として面白い、とも感じていた]
[眼鏡越しに、秘めた思いをもって対峙する――
――なんて、言えればかっこいいのだが。
実際男子学生がやってることはガンつけだ。
そのうえ、対象は、寝入ってる同年代ではなく、
彼の鞄にくっついている兎だ。
かっこ悪さにかっこ悪さをトッピングした動きは
電車の片隅でしずかに行われているのだった。
そして弓道部男子学生は、やおら、行動を起こした。]
かわいーじゃん
[起こさないように酷く小さく呟いた。
視線の先には、アメリカンコミックスーパーマンさながらの
カラーリングをした、プラスティックの熊が笑う。
この細かな作業を、相手を
――しかも見知らぬ相手だ!
途中でばれてしまったらどうするつもりだったのか――
起こさずやりきった自分へ拍手したい気持ちでいっぱいだった。]
[彼はやりたいことをやりたいように
為して立ち上がる。
自分の作り出した光景を幾分か満足げに眺め、
そして少しだけ、首をかしげた。
寝入る学生の両手だ。
ペンだこのようなものか、
指先に現れている微かな徴を見、
それから自分の手を見て、小さく肩をすくめると
学生の前から去った。
振り返らず、一番前の座席までいくと身を預けた**]
[今度は明確に、女学生の方を向いて]
…基本的には古典文学全般が好きだが、その中でも夏目漱石は読み易い
だからだろうか。ふいに読み返したくなるんだ。
まぁその点では、好きなんだろう。
[平坦な声で、返事を返して]
…君は?
[問いを投げ返した]
[何だっただろうか、思わせぶりな女の話。
よく知っているものとは違ったはずの、女の言い方。
「迷える子――解って?」
そうだ、ストレイシープ。]
[苛立ちの原因のひとつに、思い至る。
……あのときの、駅前での妹の顔。
そこに浮かんだ、不安そうな色。
それが、先に見た少女にもあったのだ。
だから、男は自分も不安を煽られたのだ。]
[探すわけではない。
断じて、心配しているわけでもない。
だが――男は先程見掛けた少女がどこに座っていたかと、
狭い車内をもう一度改めた。
自分の不安が、具現化されているような気がした。]
/*
正確には首が飛ぶのも恐れず行動すること、だな
どのみち現代にはほぼ通用せん。
まぁ虚構と現実の区別がついてないと言えばそれまでだが
あ、あの。なにかの縁ですし。
良かったら……。
[ガサゴソと、鞄の中から。
丁寧に折りたたまれた紙を取り出して。
震える手で、「イケメンさん」に差し出した]
(お願い、受け取って――)
[天にも祈るような気持ちで]
(ああ、もう)
[目がぐるぐると回る。顔が熱い。
声が上ずってしまったことに、「イケメンさん」は気付いただろうか。
もっと自然に差し出すつもりだったのに。
どうして自分は]
(「なにかの縁」って、なによ。ばかばか)
[もっと良い言い回しがあっただろうに。
日常のはずの電車内での、ちょっとした非日常。
今日の自分はどうしてしまったというのだろう。
心臓は今にも爆発しそうで]
(「お色気さん」が! 悪い!)
[あんな挑発をされなければ。
いつもどおりに読書して。いつもどおりに通学する。
ただそれだけだったはずなのに。
どうして自分は、メールアドレスが書かれた紙を握って、こんなに震えているのだろう]
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