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[どれくらいそうしていただろう。
女はゆっくりと寝台から身体を起こした。
のろのろと身支度を整えて、
泣きはらした顔のまま部屋を出て行く。
探そうと思うものがある。
死の気配はひとつではなく、だからきっとあるのだろう。
辿りついたのは、マティアスの部屋]
あ………
[覚悟していたとはいえ、その事実に声を失う]
ごめ…、……なさ…
[かたん。と、音が鳴った。
自分が壊れた扉に寄りかかった音だと気付く余裕はなく]
ごめ……、な…さい…
[口元を覆う指の間から繰り返すのは謝罪の言葉。
縫い付けられたようにマティアスと、
嘆くクレストを見つめる目からは涙が溢れ出す]
怪我…、して……のに
[そのままずるずると床に座り込む。
クレストらの方へ歩み寄る力はなく、
部屋の入り口で、ただぽろぽろと涙を零した。
昨夜のマティアスの声>>2:150
疑われたのに、なお謝ってくれた心優しい声。
結局、そんな思いだけをさせて死なせてしまった。
声にならずに、やがて顔を覆って泣きじゃくる]
[さて、部屋に入ってからどれだけの時間が過ぎたか。
>>3扉の向こうのヴァルテリの呟きは耳に届かずとも、>>6流石に怒鳴るような声は聞こえる。]
……やれやれ。
折角のデートだというのに、邪魔をするとは野暮な奴だな。
[どうやら、思う通りにはいかないようだ。人狼が誰であるか、その手法はどうであるかを見てみたかったのだが、仕方がない。
また来る、と、嘘とも本当ともつかぬ言葉をドロテアに残し、ニルスは腰を上げて扉の外へと出る。
そこにユノラフだけではなく、ヴァルテリの姿を認めれば些か意外そうに目を瞠った。それから、視線をユノラフへと流し。]
なんだ、二人ともそんなに私が心配だったのか?
[ニルスは冗談を紡ぐような口調で言い、口許に笑みを浮かべた。もし部屋に長居した理由を問われれば、調べ物があったと嘘を吐く。
そうして二人と連れ立って、居間へと戻って投票の話を聞いた。]
[ニルスは少しの逡巡の後、一人の名前を記して投票する。
恐らくは誰からも名を書かれないであろう人物の名。
根拠も理由もなく、というのはニルスの主義に反する。
謎は解いてこそのものであり、あてずっぽうで真相に辿り着くべきではないのだ。
尤も、そんなことを言っている状況でないのも、また確かなのだが。
考えようにも、あまりにも材料は少ない。
それから貰いそびれていたお茶を貰い、幾らか話をしてから、ニルスはユノラフを伴って自室へと引き取る。
流石に一つのベッドを二人で使う気にはなれず、別室から布団を一枚失敬してユノラフはベッドの上へやり、自らは床に陣取った。
いつものように本の頁を指先で捲りながら、しかし読む速度はいつもよりも随分と遅かった。]
……もし、人狼としての目覚めが意識的なものではなく、それこそ夢遊病のようなものであったとしたらそれは、人狼本人にも自らが人狼である、と分からないということになる。
つまり、例えば俺が人狼だったとしても、俺自身はそれに気付いていない、という可能性もあるということだ。
そもそも、ここに集められたのが人狼であると疑わしき者ばかりだと言うなら、きっと誰が人狼に目覚めてもおかしくはなかったんだ。
[パタンと音を立てて本を閉じ、ニルスは床に寝転がる。
目の前に広がる天井をぼんやりと眺めたまま、普段より幾らか砕けた口調で話す。
言い聞かせるものでも、説くものでもない、ただ思考を垂れ流すだけの言葉。]
苦悩の内にあるのは何も人間だけではない。人狼に目覚めた者も、きっと同じだ。
此処にいる者を欺き、殺さねばならない。それはきっと、辛いことだろう。……早く謎が解ければ、より早く苦悩は終わる。
その為にも、もしお前が見極める者なら……絶対に、死ぬなよ。
[最後に願望を添えて、ベッドに背を向けるように寝返りを打った。そのまま振り返らず、眠りに落ちるまでニルスはじっとしていた。**]
[居間で行われる投票は、翌朝、開かれる。
だから一度は自室へと引き上げることにして]
ユノラフはニルスと一緒におるのか。
まあ、気をつけるべきだしの。
[二人へと一度視線を向けて頷き。
日が暮れる頃には自室へと上がっていった]
[夜が明けるにはまだ早い時刻。
暗い屋敷の中は明かりをともさねば歩く事も難しい。
それでも、目が覚めてしまえばそれ以上寝ても居られずに。
居間へと降りて]
……どうなった、か。
[投票箱へと視線を向け。
中身を取り出す。
一枚。4枚。4枚。
かかれた名前は三人分]
ふぅむ……
[自らの名前がかかれた紙に視線を落し。
それから、同じ数だけそろった二人の名前を見る]
――おや、アイノ……
[そんなとき、投票が気になったのか。
名前をかかれた娘が降りてきた。
寝たのか、寝ていないのか。
それは分からぬままに――投票の結果を見た娘の反応に、わずかにため息を零し]
そうさな、お前さんの、名前だ。
どちらを、えらぶのかって……?
[さぁて、と首を傾げる。
娘が死にたくないと逃げるのなら、それはしかたのないことだ。
けれど――逃がす事のできる場所など、この屋敷の中にはなくて]
……クレストとおまえさんと。
どちらか、なんて、なぁ……
[ちいさな吐息を零し。
どちらかに、かたよっていれば、まだ。
決断はたやすかったのに。
そうでないからこそ。
怯え、恐れ、そして反抗へといたる娘の行動をみやり]
……恨まれてやるから。
向こうへ、先にいっておいで。
[今におかれた果物ナイフを手にした娘の手を捻り。
奪い取ったナイフを、そのまま、娘の咽喉に刺した]
かわいそうに、なぁ……
[止したナイフはそのままに、傷口から溢れる血の匂いをかぐ。
息耐えるまで、腕の中で抱きとめ。
二階へと、つれて上がることはできなかったから。
居間の隣にある、遊戯室のソファーへと、ねかせにいく]
[投票箱]
[名前を書いた紙が入れられていく。
その様をじっと見て―――
自分の分も含めた全てが集まれば、
ゆっくりと歩み寄った]
この、投票は。
処刑者を決める―――と、
そういうもの、なのですわね。
人が生きるための暴力。
きっと、それは…
[紡ぐ言葉は語尾を消し。
暫し目を伏せてから、部屋へと戻るのだった*]
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