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[軽快な黒猫のタンゴのメロディに乗って踊る文字は、道行く人は新手のプロモーションだと思っただろうか。
それは3回繰り返すと唐突に切れて、元の宣伝を流し始める。
アン・シティで作戦を練るときに、有事の際の経過駅での合流箇所の打ち合わせをしていた。
いくつか指定してい有る中の、3つ目の場所を思い出す人はいるだろうか]
では、行くかのう。
[運転手にチップをはずむと、三毛猫を肩に乗せたまま車を降りた]
[明け方]
……『悪党のために警察があるなんて思い上がり』
[窓のそとに飛ぶ影をみて、呟く。
それは、旅する鳥だったか、餌を求めて彷徨う鳥だったか、白かったか、黒かったか、解らなかった。
行く先を見れば、ドゥ・シティが見えてきた*]
─古いホテルの一室─
[その街で3番目に古いホテルの一室にとある会社の名義で部屋を押さえていた。
三毛猫を肩に乗せた老人を止める事なくそこに案内し、ソファでくつろぐことにする]
さて、のう。
[仲間には伝わるかもしれないが、警察はもちろん『ブラック・キャット』を知る他の機関の人間の目に付く行動。
普通であればバカなこととしか思えない行動を取っておきながら、なお、楽しそうにソファでくつろいでいる**]
それとも。
[列車移動を好む自分をお呼びだろうか。
だとすればそれは十分に警戒に値する]
プロフェッサーがやっているってことも、ありえるけどね。
[どちらにしても、暗号は流れた。
わかるものには解るだろうし、知りたい者は知ろうとするだろう]
何かが足りんのう。
[しばらくして、何かを思い出したかのように忌々しい顔になると、すわり心地のよいソファから立ち上がり、フロントに電話を掛ける]
日本茶と和菓子を持ってきてくれたまえ。
[やがて届いたソレを見て目を細める]
大福……か。
呼ばれているなら、行かなくちゃね。
[仲間であれば向かうのは当然のことだ。
観光客然とした大きな鞄はお気に入りのブランド品。スマホを取り出すとアドレスを開きながら、改札をくぐる]
[コールが3回、相手が出る]
どう、ホワイトラビットは大人しくしてる?
手を焼くようなら大福を上げて頂戴。
[捕らわれた彼は、警察が彼のことを「ホワイトラビット」と呼ぶことに、驚いたかどうか]
暗号が流れた。
ここのシステムもザルね。
[からかうように言えば、少し不満そうな声が返った]
いいじゃない。
相手は1世紀前のバケモノだもの。
[下手をすれば1世紀以上かもしれない]
じゃあね。
あとのこと、おねがい。
[僅かに声を小さくして、告げると、通信を終わる]
― 古いホテルの一室 ―
[ホテルスタッフの格好をして、廊下を歩く。
持参するのは大福だ。駅の観光案内所で大福の有名なお店をきいて、寄ってきた。
すでに、みんな揃っているのか。
それとも誰もいないのか。
それを調べる時間はなかったが、あまり遅れる訳にもいかない。ドアをノックする]
お客様、サービスです。
[尋ねれば予約した人間からの指定だという。
溜息をついてベルボーイにチップを渡して追い出すと、苦笑いをした]
あいつにホテルの手配を任せたのが間違いだったのう。
誰かが囮にでもなるかして、警察の目をアレからそらさない限り、せっかくの大仕事は難しそうだと思うんだよ。
[意味ありげに黒猫のタンゴを流しておいてぬけぬけと言う]
だから、わしが囮になろうと思うんじゃが──。
[その声は誰かにきこえたかきこえなかったか。
ともかく、駅のホームのベンチから立つと、
その姿は、人ごみに掻き消えた。]
― ドゥ・シティ[魚市場]―
しかし、仲間を捕まえさせて、姿をくらますか。
これも10年前と同じじゃのう。
あの時は、あいつもただの悪党だったが・・・。
[広げる夕刊、その片隅に、大福たるあだ名を持つ男の逮捕劇のワンショットがあった]
まぁ、うまい魚でも食うか。
[大福は簡単に捕まる男ではない。
だが、その逮捕は見事なもののように描かれていた。
しかし、警察も、そこに密告たるような情報を載せてはいない。]
自らが無能であることは好評しないのかね。
[チラリみやる魚市場の大きな時計。
夕暮れは、また朝とは違うにぎわいを見せはじめている。
観光客に混じり、うまいリゾットを食わせるという店に入った。]
あら、遅かったかしら?
[既に届けられたらしい大福を見て瞬きをすれば、ウミの期待を裏切ったことは伝わるだろう]
女は化けるものよ。
どんな姿にも、どんなものにも。
[途切れて終わった言葉に口角をつり上げて笑う。
招かれるままに部屋に入り込んだ]
囮。
……おじいさまが?
[協力するべき。
そんな台詞に形だけ頷いていたが、続いた言葉には、さすがに相手の顔をまじまじと見てしまった]
一体どういう風の吹き回し?
まだ、囮にするべき相手はいるのではなくて?
[一歩、相手へと歩み寄る]
[そこで鼻をいじりながら、バジルの大盛りを頼み、やってきたボーイにチップを弾む。
耳打ちしたあと、また新聞を眺め、
やってきたアツアツのリゾットの上、バジルの葉をどさりかけて、陶器の匙でそれらを混ぜ込む。
一緒にやってきたのは、スパークリングワインと黒ビールを割ったブラックベルベット。
それらに舌鼓を打ちながら、
熱い湯気が消える頃、胸のネクタイを指でつまみあげた。]
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