[1] [2] [3] [4] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
あ、あの。なにかの縁ですし。
良かったら……。
[ガサゴソと、鞄の中から。
丁寧に折りたたまれた紙を取り出して。
震える手で、「イケメンさん」に差し出した]
(お願い、受け取って――)
[天にも祈るような気持ちで]
(ああ、もう)
[目がぐるぐると回る。顔が熱い。
声が上ずってしまったことに、「イケメンさん」は気付いただろうか。
もっと自然に差し出すつもりだったのに。
どうして自分は]
(「なにかの縁」って、なによ。ばかばか)
[もっと良い言い回しがあっただろうに。
日常のはずの電車内での、ちょっとした非日常。
今日の自分はどうしてしまったというのだろう。
心臓は今にも爆発しそうで]
(「お色気さん」が! 悪い!)
[あんな挑発をされなければ。
いつもどおりに読書して。いつもどおりに通学する。
ただそれだけだったはずなのに。
どうして自分は、メールアドレスが書かれた紙を握って、こんなに震えているのだろう]
/*
ズイハラさん、メモで「外見そんなによくない」って書いてたのに、イケメン扱いしちゃってごめんなさいね。たぶん予定狂っちゃいましたよねー…。
だって格好良かったんだもん、仕方ない←
[見ている。見られている。
教室に、僕だけが一人立っている。
みんな座ったまま僕を見ている。
先生も座って、僕を見ている。
何を言うべきだっけ。
何が正解だっけ。
見ている。見られている。
僕もひたすら、自分を見ている]
[向井はまた、ぼんやりと瞼を持ち上げた。
扉が閉まる音を聞いた気もしたが、
列車は既に走り出している。
慌ててもしょうがない。それでも時間を確認しようと鞄の中にあるはずの携帯に手を伸ばし――]
……ん?
[不細工でも、一応兎はぬいぐるみだ。
なのに、なんだか固いものが手に触った]
[こんなん、持ってたっけ。
覚えてない。
兎は覚えている。
でも、熊は。
覚えてなくても、持ってたかも。
捨てられなくて困って……違う]
[向井は車内を見渡した。
前に座る学生。
ボックス席の大人と……女子高生?
それに
向井は、ここではじめて、車内に小学生がいることに気がついた]
[1] [2] [3] [4] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ