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手紙が足りないってのは、気になってたんだけど。
[いろいろなことがありすぎて、混乱気味の記憶を探る]
……確か、リウがいなくなる前の話。
フユキさんがいなくなって、その次……かな?
ただ「手紙のこと」ってしか言われなかったから、誰が、どんな風に言われたかまでは……。
こんなのはどうだろう。
『人攫いは森下紅葉である』という手紙が来て、口封じに攫われた。
[扉の横の壁に背中を預ける]
なんてね。
人を無闇に疑っちゃいけない。
[疑っちゃいけない、と言う言葉に昨日の自分を思い出し、自己嫌悪に陥るも]
どうなんだろ。
ポルテさんが人攫いの分かる人だったら――誰が人攫いであれ、いつかは攫われてたとも思うし。
ただ、手紙のことをモミジさんにしか話さなかったのは、そのときの手紙に書いてあったのがモミジさんだったんだろうとは思う。
きっと手紙はもうないんだろうし、
訊いてもどうにもならない気はする。
[指先で毛先をくるんと巻いて弄ぶ。
視線を一瞬ナオへ向けた]
“人攫い”って何が目的なんだか。
[外からは蝉の声が届き、店の片隅のラジオからは、高校野球の様子が小さく聞こえてくる]
せめて、手紙だけでもあれば話は違うんだろうけど……。
教えてくれるつもりなら、昨日聞いたときに全部話してくれただろうし、直接聞いたところで、答えは出ないんじゃないかな。
[サヨの疑問には、答える術がない。ふうと溜息をついて言葉を繋げる]
目的……ねえ。
本当、どうしてなんだろうね。意味があるとは思えないし。
狐でも魚でもいいから、今までの生活に戻して欲しいよ。
狐でも魚でも……。
[ナオの言葉を聞いた途端、思い出されたのは]
たいやき。
[巨大なたいやきが人を咥えて逃げていくのを想像してしまい、笑いがこみ上げる。
不謹慎だと思って、堪えようと手で口元を覆い俯いた]
―ポルテの家の前―
[がむしゃらに走って、家までたどり着いたはいいけれど。
ポルテはいない。それはわかっている。知らないけど、わかっている。
ドアの前に立ち尽くしていれば、どこからか水の音が聞こえてくる]
まだ…寂しいの?…
みんな…連れていくの…
…そう…
[水の音に操られるように、虚ろな目を*空に向けた*]
そういえば、たい焼き食べてなかったな……。
[絵を見て笑い合ってた数日前の出来事が、酷く遠い。笑いを抑えようとするサヨには気づかず]
そういえば、さ。
[何かを言いかけて、そこで言葉を切った]
はー。
[肩を震わせていたが、長く息を吐き出して顔をあげた]
たいやきは、秋か冬に食べるものだと思う。
[目尻にわずか滲んでいた涙を指先で拭い、ナオの顔を見た]
ん?
でも、たまに季節とか抜きに食べたくなるってことない?
肉まんとかもそうだし。
[自分に注がれる視線に、話を促されていると気づく]
いや、昨日の話なんだけど……。
もしかして「他の人が消えるのをただ見ているより、自分が消えたい」って意味、だった?
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