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[店に入ってきたヤスナリの姿を認め、手を振った。その問いかけには、力なく答える]
んー……また増えてたね。
[イラストに添えられた文章、謎の丸印、そして水滴が落ちたように滲んだフユキの名前。それらを説明したところで、一言だけ伝える]
……フユキさんも、いなくなったって。
[店にやってきたサヨにもひらりと手を振ったところで、彼女が手に持っているものに気づく]
……花火?
それどうしたの?
[遊ぶという発想には思い至らずに尋ねる]
―喫茶店―
ねぇ、花火しない?
[神妙な顔つきの店主や客を見渡して、紙袋を掲げながら訊ねた]
買ったの。
たまには遊ぼうかなと思って。
[ナオの問いに、ん?という顔で瞬いた]
[ドアが開く音に意識を戻してナオ達にひらりと手をふって。]
花火っすか?いいっすねー。
[花火は夜にやる物、つまり気兼ねなく外で遊べるってのがいい。]
たまには息抜きした方がいいってのは間違いないけどね。
特にサヨは根性入れすぎだし……。
[普段のナオなら、遊びの誘いは二つ返事で受けるのだが、今日は事件のことが後を引いていた]
[アイスコーヒーを啜っていると見慣れた顔。だけどその顔の裏には何が隠されている?]
よっ、モミジ。今日はご機嫌いかが?
[出来るだけ自然を装い、細められた目を見つめ返した。]
いいでしょう。夏らしくて。
[レジにある店名入りのマッチを手に取って、あ、と声を出す]
蝋燭持って来ないと。
[声を荒げるヤスナリに気付くと、ちらりとそちらを見やった]
[バナナジュースを飲んでは、ボーっとしていると、みんなが集まってくる。いつもと同じ顔ぶれ……なのに、確実に何かが違ってしまっているようで]
あれ?
[再び鏡の中を見遣ると、フユキの姿は消えており、何の変哲もない店内を映すばかり]
また着たんだ。恐怖新聞ならぬ手紙。
でも今日の手紙は一味違ってね。だからまずは本人にって聞いてみたかったんだ。
[封筒を一瞥して、モミジに向かい合い]
この中に書かれている事って、本当なの?
[ヤスナリの口調に驚き、戸惑いを覚えたが、覚えてる限りのことは伝えようと]
う、うん。
ここに来てた男の人でさ、ポルテさんとかモミジさんと話してた、かな。
でも、どうしていなくなったのかはアタシも
[そこまで言うと分からない、と首を横に振る]
昨日事件のことで話して、人攫いの証拠を掴むんだ、って言ってたんだけど……。
[目を丸くするモミジをじっと見つめ]
お願い、本当のことを教えて。
あなたは人攫いなの?
[もう一度小声で繰り返す。
手紙に嘘偽りはないのは自分がよく知っていた。
だからモミジの答え次第では――]
[話の端々から、フユキもアンと同じように居なくなってしまったのだと、おぼろに理解する。不思議と違和感は無かった]
そっか。だから、見えたり見えなくなったりするんだな。
ゆーれいみたいなものなのかな。
[大人たちの輪を遠巻きに見ながら、小さく呟く]
ゆーれい。……ゆーれい?
てことは、えと……。
し……。
[何気なく自分の口にした言葉の意味に、ふと気付く]
うわあ。
[ぶんぶん頭をふると、バナナジュースを勢い良くかき回す]
違うちがう。違うよきっと。
あ、大丈夫。
ちょっと驚いただけだから。
[謝るヤスナリに、気にしてないと返す]
その文章も、ちょっと意味が分からなくて。
昨日まではこんなのなかったのに。
もしかして、これが空に棲んでいるもの、かな。
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