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俺は…… 実験体
0331号 マティ、ウス。
[ふつり、と沸き起こるものがあった。何であるのか、分からないものが。―――感情が。]
何故、こんな所に居る。
お前等はっ―――…
[音にして、それが激昂めいている事に初めて気付き、語気が自然にやわらいだ。]
楽園に居るのだと、聞かされた。
[そこに負の感情は含まれていないようだ。]
[身を隠しつつ儀式を眺めていたが、ふとビルの狭間から流れる煤煙を見付け、顔を顰める]
この煙――さっきの軽業男のものかしら。
やだやだ、環境破壊だわ。
[その煙が溶けるまでもなく空は赤黒い。
一定の高さで拡散する煤煙を逆に辿れば、梁上に予想通りの姿があった]
「儀式」を見てる――訳じゃないわね。
[今はショウの成り行きを見るが先決で、こちらから手を出す気はない。
それでも左手は弓に回し、いつでも抜けるようにしていた]
そうね。
坊やが私の客になってくれるなら、教えてあげても良いわよ。
[相手も自分もその気がない事は判っていて、はぐらかすように笑う。
ちりちりと肌に突き刺さるような気配を感じ、ちらりと見降ろした先。此方を伺うような視線に、はぁいと手を振って見せながら]
私はもう少し此処にいるわ。
仕事があるの。ここで。
[荷物をまとめる情報屋へと、お別れの挨拶代わりに手をひらり]
実験体…、実験体。ああ、「きょうだいしまい」か。はじめまして、おにいさん、かな?
[皮肉めいた笑みを浮かべる。]
ああ、お兄さんのいう楽園にいたよ、あの日まで。そう…、にいさまが僕の事を…
[にいさまが僕をなじる、僕の長い手、体毛一つない身体、赤い目を見て。あの日、僕の事を…しっぱいさ…]
うるさいうるさいうるさい!
お兄さん、ぼくと一緒に楽園を探さない?僕、迷子になっちゃったんだ。
[不敵な笑みを浮かべる。]
お腹も空いたし…
―祭壇付近―
[ドロテアの姿を捉えつつも、彼女の周りは今までに比べれば厳重に囲まれているようで
彼らを屠るのは容易いものの、それこそ悪目立ちし過ぎてターゲット始末後の帰り道が危うい]
……注意、引くしかないネェ…。
[ボソリと呟き、向かうのは宗教の開祖を模した下卑た像の足元。
そこに着くと、爆薬を適当に仕込んで再びドロテア付近へ。
像の崩壊が、殺しの合図]
……坊や、ネェ?
[冗談には肩を竦めるだけ。
手を振る先に見える姿を、横目に確認しながら、この女も気配を探る事は出来ていると、先からのやり取りも含め内心警戒すべき人間に格上げて。]
こんなボロビルの上で仕事タァ、お気の毒ニ。
[別れの挨拶は同じように翻す、こちらは合皮の指ぬきグローブをはめた手。
視線を上げれば、白い羽ばたきが見えて。
それはまるで、もしかしたら正しくも、祭壇での儀式を待つ天の使いのようでもあった。
赤黒い曇天に映える、白。
ここからならば、声を張り上げれば届く程度の距離か、けれどそんな事をする理由も無く。
一つの荷物を抱え、半分瓦礫に埋まる階段を降りていく。]
[祭壇では祈祷師が長ったらしい祈りを奉げているところか。
それに続く信者の声は腐った街中に響く程大きく
信仰心の欠片も無い女が知らぬ間に、
このくだらない宗教は広がっていたようだ]
少しくらい遊んでみるのもイイネ。
[ニヤリと嗤う。
祈祷師の祈りが終わると同時に、爆破しようと。
そして混乱に乗じて、生贄を狩る算段か]
――――……、うん。
[風が、男の前髪の下に隠された徴の一部を露にして、去っていった後、―――男は申し出に頷いた。]
/*
よくぞ、このフラグを折れましたな。(にっこり)
[切り刻んでみたいという、想いが湧き上がる。
怒りでも憎悪でもなく、相手に対する好奇心と接触欲。同胞に似た者への、空腹感。
男の意識には登らないが、如何実験の内容が反映されたかの確認に似る物。]
こんな所が良いんですって。
物好きな人もいるものよね。
[大袈裟に肩を竦めて、背を向けた相手の姿が――否、気配が階段を下りるまで、蛇のように冷たい目で見送った。
空を舞う白。
ひらりと舞い降りる羽根を掴むと、片手でそれをぐしゃりと潰して]
……嫌だわ。
馬鹿な人間だけじゃなく、蠅まであの子の命をタカリに来てる。
[呟く声に滲むは、不穏の色。
ぐしゃりとへしゃげた羽根を汚らわしそうに捨てて。
今まさに儀式が始まらんとする祭壇の方へと、蛇はその眸を定めた]
[一陣の風が吹く。お兄さんの額に徴が見える。自分の髪の毛もふわりと浮くが、徴があるか、本人は知らない。]
決まりだね、あちらからいい匂いがするんだ。まずは、お腹をいっぱいにしたいんだけど…。
[祭壇のある方向を指差す。お兄さんの目が見えない事は知らない。なかなか動かなければ、手をとって促すだろう。]
[祈祷士が訳の分からぬ奇声を発した瞬間]
――・・・パーティーの始まり、ネ。
[ボソリと呟き、釦を力強く押す。
凄まじい破裂音と同時に、脚が爆破されたため崩れ落ちる像]
[宴の幕開けを知らせる音に混乱する群衆をよそに
女は小太刀を鞘から抜き、一直線に向かっていく]
何を待ってるんだと思う?
このひとときはさ。
[救いに期待するのは、祭壇に群がる者ばかり。
高みを選って物見する視線の持ち主たちは…]
… 儀式と言えば まあ
儀式とも言うんだろうね
[廃れ乾いた街で期待されるものに想い馳せ、
膝へ片頬杖つく軽業師は*独り言めかした*]
良いよ。
喰べる?狩る?
[布で両眼が隠されているのだから、最初からベルンハードの顔は見えない。匂いと熱と音と気配と、感覚の総てで知覚するだけ。
ふらっと立ち上がるが、直ぐに両眼の事は察せられるだろう。促されながら、ベルンハードに続く。]
[爆破の音に、素早く視線をそちらに戻す。
開祖を模したらしい趣味の悪い像が崩れ落ち]
わー、派手にやるわねぇ!
[地上が混乱しているのをいいことに手を打ち鳴らす。
その混乱の中、一直線に生贄に向かう姿を見れば、殊更興奮した表情で]
さあさ、早くやっちゃって!
[今にも飛び出しそうに片足を屋上の縁へ掛ける]
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