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─ 自宅 ─
……あー……ったく。
[色々と超越した事態が終わった後。
見合い話攻勢に一段落つけたら、何だか妙にぐったりとして。
紫煙を燻らせつつ、窓辺でぼんやり、としていた]
……『約束』……『約束』……かぁ。
[もう少しで届きそうなそれへの道は未だ開かず。
少しだけイライラしていたら、ドアをノックする音と、「兄さん入るよ」という声がして]
んー? 構わんけど、どした、慎哉……って、なんだその箱。
[入ってきた弟の抱えた古びた段ボール箱に、瞬き一つ]
「蔵の整理してたら、出てきたんだよ。
兄さんの、昔の教科書とか色々。
勝手に処分できないな、と思ったから、帰って来てる内に見てもらおうかと思って」
ん、そっか、悪ぃな。
「……次。いつ帰って来るか、わかんないもんねぇ」
それ、いうなよ。
仕方ねぇだろ、そーゆー世界なんだから。
[苦笑しながら言うと、弟は大げさなため息をついて、部屋から出て行く。
その姿がドアの向こうに消えると、置いていかれた箱を開く]
うっわ、懐かし……つか、俺こんなん取っといたのねー……。
[古びた教科書やら、ノート。
そんなものを一つずつ手に取り、ぱらぱらと捲る。
実用性など既に全くないそれらは、けれど。
大事な欠片のように、今は思えていた]
……て、これ、日記?
うわ、こんなのつけてたのね俺……。
[段ボール箱の、一番下に入っていた日記帳。
茶化すような声を上げながら──開くのは、一瞬、躊躇った。
それでも、もしかしたら、と。
記された日付に、仄かな期待と不安を寄せつつ──ぱらぱらとページを捲り、そして]
……あれ、なんだこれ。
[途中から、何も記されていない日記帳は。
空白の数ページを経た後、奇妙なページに行き当たった。
日付と、一行だけ。
予定のように記された文の上に、大きく×が書かれたページ]
……『はると、神社で一緒に描く』……って。
[×の下の文字に、瞬き、一つ。
それが意味するものが何か、すぐにはわからなくて。
わかった瞬間──色鉛筆と菊子にもらったレポート用紙の入ったままの鞄を引っ掴んで、駆け出していた]
─ 海岸神社・跡 ─
[昔、絵描きに通った神社は、今はただ、綺麗に整地された空間が広がるのみで。
人影もなく、しん……と静まり返っていた]
……ほーんと、当時の俺ってば。
どんだけ、ガキだったんだか。
[ぽつり、呟く。
絵を描くのが好きだったいとこ。
向こうは海を描くのが得意で、こっちは空を描くのが得意で。
一緒に絵を描いても、互いに互いのその部分に文句を言い合っていた。
そんなやりあいの後──それじゃあ一度、一緒に描いてみよう、と。
そんな提案をいとこがして、それに乗っかって。
いとこの誕生日に、一緒に海と空を描こう、と『約束』した──けれど]
あいつは、心臓の疾患で転院して、それに間に合わなくて。
……それが、悔しかったんだよ、なぁ。
[それから、自分自身。
落ち着きないとか、すぐに思ったことを口にするとかはそのまま、だけど。
前よりも、視界が広がった気がする。
それと。]
聞いてくださいよ、貢さん。
お見合い、断れなかったって言うんですよ。
そりゃ、一度は引き受けましたけど。
[以前とは心境が変わったと言っても、切欠は説明できるわけもなくて。
期間限定の柏餅を買う為足繁く通っている内、すっかり話し相手になってもらった人に愚痴った。]
[言い出したのは向こうなのに、と。
そんな、子供っぽい憤り。
その頃は、いとこが難病で苦しんでるなんて知らなくて。
一方的に、すっぽかされた『約束』を記憶から消した。
そのことを、いとこがどう思っているか、なんて気づく余裕は当然の如くなく、そして]
……それから、2年してから……か。
[手術をするも、術後経過が芳しくなかったいとこは、転院して2年後にこの世を去った。
その時、初めていなくなった理由を聞かされて、それで]
思えば、あんな突発的に医者になる、それも心臓外科医とか言い出して。
よくもまあ、色々通ったよなぁ……。
[家族も驚いたし、当然の如く、高校の担任も進路指導部もひっくり返った。
けれど、理由は言わずに押し通して──今に、至る]
ま……俺が医者になったところで、あいつを助けられるわけじゃなかったけど。
[それでも、通したかったのは、きっと。
何も知らず、何も出来なかった事。
その悔しさを越えて、何かしたい、と思ったから]
……なー、はる。
[その場に座り込み、引っ張り出すのは色鉛筆とレポート用紙]
お前、『約束』守れないと怒る、とか言ってたけど。
……でもって、確かに怒ったけど。
[手に取るのは、深い蒼の一本。
白の上に、線が引かれる]
むしろ、怒ったのは。
……お前が、ちゃんと言わなかったから……なんだからなー?
[届かない呼びかけをしながら、蒼を、波を、白の上に写し取る]
っとに、さ。
……ばかやろが。
[でも、と。
ここで一度、言葉を切って]
……ごめん、な。
[小さく呟く。
蒼が踊る、その上に、青が踊る。
一緒に、ではないし、日付も違う、けれど。
ずっと描かずにいた、『海岸神社からの海』を描く事で。
忘れていた『約束』は果たされる]
/*
サテ、ワタシもご挨拶を。
自称幻夢のざしきわらし、fukaと申します。
最近は薔薇下国にも、時折お邪魔させて頂いておりますが、初めての執事国、とても良い雰囲気の中で楽しませて頂きました。
皆さんの素敵な物語を眺めながら、一目ボレの時間屋さんを使えて、とても楽しかったです。
接続時間が現在ものすごく限られているので、あまり絡めなくて、声を掛けて頂いた方々には失礼いたしました。
7月までは、同様なので、当分村に入ることは無いと思うのですが、もしどこかでご一緒出来ましたらよろしくお願い致しますね。
─ 後日 ─
[ある程度の調合を終え、店番をするその最中。暇を潰すように捲るのは、古めかしいノートのページ。それを見ながら別のノートに新たな文字を書き連ねていた。書き記すのは、いくつもの系図のようなもの]
あそこん家って同じ症状発症するんだな…。
てことはこれとこれが併発する可能性もあって…。
[祖父が書き残した治療歴のノート、それを紐解き読み込めば、様々なことが見えてくるようになった。これまでの治療歴とこれからの治療歴、それらを合わせれば、この先どんな病にかかり易いかも見えてくる。祖父が培って来たものと、自分が大学で学んだことを融合させた結果だった]
───ふー、ちょっと休憩っと。
……あれに巻き込まれなきゃ、こんなのがあるなんて知らなかったよなぁ。
[傍に積んだノートの山。それを見つめながら小さく呟く。蔵から引っ張り出してきた祖父の治療歴ノート。祖父が死んで以来、片付けたそれを開こうとしたことは無かった。単なる祖父の遺品で、読む必要がないと思っていたからだ。けれど10年前に飛ばされたあの時、祖父の書斎でそれを目にし、戻って来てから確認して。読み込むことでそれが如何に重要なのかを初めて知った]
でもなぁ、これが「ワスレモノ」って感じはしないんだよな。
そもそも知らなかったことなんだし。
[あの時見つけられなかった「ワスレモノ」は未だ見つからないまま。祖父が遺したはずの、自分宛の封筒すら見つけることが出来なかった。あの封筒が仕舞われた小箱は一体どこにあるのだろうか]
…まぁ、考えても分からないことは分からない、か。
これがあるって分かっただけでもめっけもんだろ。
[「ワスレモノ」は見つけられずとも、大切なものは見つけた。これから先、自分が店を続けるために必要なものが]
──あ、こら。
そっちに入るなっつってるだろー?
[座ったまま伸びをした時、母屋と繋がる廊下から飼い猫が店の方まで入って来る。猫がそのまま扉を開け放していた作業場へ入って行こうとしたため、慌ててその身体を拾い上げた]
お前の毛が入るとダメだから進入禁止、OK?
[言いながら作業場の扉を閉め、畳に座って猫を膝に乗せる。頭から背中にかけて撫でてやると、大人しく胡坐の上に猫は丸まった]
ナツメは向こうで大人しくしてるのに、ツユクサお前は何でいっつもこっちに来るかね?
営業妨害は勘弁してくれよ。
[カウンターに肘をついて手に顎を乗せながら、胡坐の上に陣取る猫を見下ろす。猫は不満そうな態でぱたりと一度尻尾を揺らした]
[猫がこちらに来る理由がなんなのかは理解している。2匹共通でお気に入りらしい場所があるのだが、いつもそこをナツメが陣取り、ツユクサが負けて追い払われてしまうのだ。猫達のお気に入りの場所は、窓際に置かれたクロスのかけられた小箱の上。いつからそれがあるのかは覚えていない]
喧嘩しちまうなら、あれ取っ払っちまった方が良いかなぁ。
[その言葉に、膝の上の猫が不満げに、にー、と鳴き声を*上げていた*]
/*
まと まっ た。
[くろねこくったり]
後1日あれば、日記の部分を、過去の自分に語らせる、でいけたんだけどね!
とか言ってる内に、30分きっとる。
挨拶挨拶。
/*
と思ったらロールが続々と。みんな頑張るんだノシ
備瀬サンはおかえりなさい!
さて早めに挨拶しておこう。
基本的には幻夢に引きこもりの、時々思い出したように他国に現れたりするakIkaと申します。初めましての方は初めまして。
執事国には大体2年に1回くらい現れます(
他の方のロールがどれもおお、と思えるものばかりで。素敵でした。
僕ももっときちんと練ってくればよかったと今は反省している。
ともあれ、楽しい時間だったことには変わりなく。
また何処かでお会いできましたら、遊んでくださいませ。
まあ。
顔合わせだけすれば断って良いっていわれたし…
そもそも相手の方から断られることもあるん、ですけど。
[見合い自体、したくないと思うようになった。
それは何故かわからないけれど、和馬の顔が浮かんで慌てて顔を横に振って。
結局押し切られた見合いの席で、向かいあわせに座った人の顔を見て。
驚きに目を丸くしたかどうかは、その場に居合わせた人しか*知らないこと。*]
いいね。俺も行ってみたかったし。
いや、でもそれは。
[付き合わせるのは自分だしとかあれこれ言いながら、ゆっくりと薄灰色の灯台を降りた]
ああ、向こうの人達も無事に会えたみたいだな。
後は……。
[狭間からの声に耳を傾け頷いて。
風の吹いてくる方、今は水平線の向こうに視線を走らせると]
これで還れるかな。
[響く鐘の音は12回。
その間に六花と顔を見合わせられたかどうか。グルリと世界が回り始める]
……おい、ウサ公。
お前も忘れ物してくなよ。
[揺れるような感覚に目を瞑る前、チラリと見えた兎に左手を伸ばす。
飛び出したナニカは銀の光の尾を曳いて、本来の持ち主、兎の元へ。
フゥと息を吐き瞼を閉じた]
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