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[コートと帽子を身につけると、エビコの後を大人しくついて行く。居間にいつもの面々がいるのを確認すると、詰めていた息を吐き出して会釈をする。フユキはちょうど出て行くところのようだった]
おはようございます。
冬樹さん、どこへ?そのままでは寒……
[答えは得られぬまま、ぱたりと扉は閉ざされた]
[男は決心したかのように、ふー、と長く息を吐く]
まあ。ここに放置しておいて何くわぬ顔で「今日の晩御飯なんだい」と言うわけにもいくまい……。
おいで。帰ろう。
[そっと手を伸ばし、アンの遺体についた雪を指で払う。どこか困ったような顔で抱きあげ、立ちあがると、管理棟へと歩き出した。誰かが外に出てきているのが男にも見えた。冬樹だろうか]
[夢を見ていた。懐かしい夢――3つ年上の彼女の後ろを幼い...はいつもついてまわっていた。温かい、静かな笑顔――ああ、随分久しぶりに思い出した気がする]
[やがて夢は遠のき、徐々に覚醒する意識に皆の慌しい様子が伝わってくる]
…ここで寝てしまっていたのか。
[起き上がろうとして身に覚えのない毛布に気がつき、ああ、とも、うぅ、ともつかない呻き声をあげる]
こいつのせいかな。調子は狂うけれど…
[小さく微笑んだ]
悪くないな。
[桜の舞い散る中、男の姿が見える]
あれは確か、薬屋さん……
何か抱えているみたいだね
こんにちはー
[近づいて声をかけつつ、彼の腕の中に抱かれたものに目を向ける]
[窓の明るさに、安堵しながら外を覗き込む]
心配していたほど長く吹雪かなかったようですね。
明日には……っ。
[息を飲み、じっと丘の上に認めたものを睨みつける]
来たか……。
[しばらく扉を見つめていたが、乃木の声に我に返る。]
おはようございます。
無事だったみたいですね、よかった。
[随分と暢気な言葉だと思いながらも、他に言葉が浮かばず。]
ああ。こんにちは、だ。
[強張った少女の遺体を抱き上げながら建物の前の冬樹に歩み寄り、挨拶を返す。
冬樹の視線に返し、悼むように瞳を曇らせ]
ああ。そうだな。見たままだ。
――皆は揃っているだろうか。
[ロッカの手を引いて、フユキの出て行った後を追うように管理棟の外へ出る。やはり、桜が舞っていた。入り口の前に立ちすくむ]
すごい。信じられないわねぇ。
[怖いような美しい光景だった。少し先にフユキの姿が見える。そして、そのもう少し先からライデンがこっちへ歩いてくるのが見えた]
[次第に身を乗り出しながら心の中で叫んだ]
ずいぶん立派に咲いたじゃないか。今度は何喰ったんだ?
さぞかし美味かったんだろうな? え?
[窓枠を掴んだ手は震え、口元には押し殺した笑みが浮かんだ]
[ライデンは何かを抱えている。それが何かに気付いた一瞬、凍りつき。そして、急いで傍らの少女を、その視界を遮るように抱きしめた]
な、中に、入ろう。ごめんね。
[見えてしまっただろうか]
[背後から掛けられた鈴木の声に、窓枠から震える手を引き剥がして笑顔を貼り付けると振り返り]
おはようございます。
お恥ずかしいところをお見せしました。
さすがに昨日は疲れてしまったのか、こんなところで寝こけてしまうとは我ながら不甲斐ない限りです。
………、おや、お出かけですか?
[防寒着を着込んだ鈴木の様子を見て尋ねた]
眠っている?
[ライデンに抱かれた少女にそっと手を伸ばす。その冷たさに驚き]
そうですか
[彼女を悼むような表情。背後からの足音と声を聞き、振り返った]
あ、エビコさん。
[挨拶をしたところで、エビコが戻ってくる。乃木の言葉は最後まで聞き取らぬまま、手を引かれて外に出る。]
はい。
[信じられないという言葉に頷く。雪が反射する光の中でふたりの男が影を作っていた]
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