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[茫然自失の態のプレーチェの頬を摩ろうとして、
青年は自身の手の冷たさにはっと我に返り――
軽く擦ってあたためたてのひらを妹へ添える。]
… 兄ちゃんが ついてる。
[大丈夫だとも言えず絞り、あおい唇を噛んだ。]
ビセさん、ずいぶん動転してたね?
気の毒に。
第一発見者、か… 刑事さんは疑うかな。
[一度プレーチェから身を離しながら、呟いた。]
ああそれにしても、寒いや…
ちょっと血圧下げすぎちゃった。
[懐に収めた血圧降下剤に軽く触れて…苦笑い。]
答えになってない、なんて…そんなことは。
[大きく被りを振るとめまいでもしそうで、
青年は慎重にレンへ首を横へ振って見せ]
でも。 レンくんの問いの響きが、
「既に出会った人間の中に犯人がいる」前提に
聴こえるのは、どうしてだろうって思ったんです。
僕たちは、まだ この邸内を
くまなく見てまわってもいないのに――
気のせい、と言われればそれまでの話で。
…僕も、聞かずにはいられなかったみたいです。
[浮かべた違和感は、まだ強い其れではなく。
レンからの返答を今は容れる様子で収める。]
…
立てるかい、プレーチェ。
[妹へ手を差し伸べ、先刻ピエトロから受け取った
タオルの端で気遣わしげに彼女の目許を拭った*]
―― 廊下→ダイニングへ ――
無茶も見事も、爺やほどじゃないよ。
[ピエトロの昨晩の大胆な手口を思い出しながら、
応じる笑みを隠す態で静かに両目を伏せる。]
…うん。あの声は素敵だね。
舞台映えがするよ。
雨に濡れて眠る姿も、横倒しのトルソーも。
さっきはご助力有難うございました。タオルも。
紅茶、…おいしそう、です。
[並べられたカップに手を伸ばそうとして――
ふと、判断を乞う面持ちでポルテを振り返る]
…え、と…
[気まずそうに眉根を寄せる間にピエトロは
玄関へ行ってしまい…胸を撫で下ろした。]
むらさきアルマジロ、だったね。
毒色に浸かって染まる――――
[ころり、懐の中でカプセルが踊る]
…有難う? 何しろまだ寒いから。
あたたかいうちに飲めるといいな、紅茶。
爺やも朝は濡れてたけど大丈夫?
…あ…だめでしたか、電話…
[戻り来たズイハラの知らせに、眉を下げる。
一応…と遠慮がちに自分でも確かめに行って、
浅く頷きながらテーブルのそばへと寄り]
ミステリーで予備知識があるだけ、
幾らかましなのかもしれませんね。
[いもうとを和ませるためにか、落胆は抑え]
動きを止められたといっても、
天候が回復するまで……ですよね。
犯人…たち?は、その間に何を――
[その先はやや濁して、人々が集うらしき玄関へと
顔を向けた。幾許かの会話の後其方へ向かうだろう*]
――急に、なんだい?
"教えてもらうことなんて、もうない…"
そう思い上がってた時期もあったよ。
でも、こうして爺やと仕事をすれば
たくさん気づかされることがある。
[…だから、と続けようとして――――]
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