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白に溶け行く 白
[緩慢に吐き出した薄煙が
白い吐息と混ざって天を目指す。
戻ることのない記憶の残滓が
最近頻繁に起こるかすみ目と頭痛によって途切れた。]
……ああ、頭いてェな…
[帽子の上から、蟀谷をがり、と搔いた。
随分と短くなったセブンスターを摘み、
最後に一口吸ってから、灰皿へと落とした]
[夢のなかで、わたしはかみさまに会ったのです
煙草を咥えたかみさまは、やさしい目でわたしを見ていました
さみしい、つれてって、
わたしはかみさまにそうお願いします
けれど、かみさまは笑って首をよこにふるのです
それから、ほねばった手で、わたしのあたまをぐしゃぐしゃなでるのです
その手はあまりにきもちよくて、そのまま溶けてしまいたいと思うほどでした]
[うれしくなって、わたしはかみさまに抱きつこうとしました
両手を伸ばしたのです
かみさまも、わたしに向かって腕を伸ばしてくれました
けれど、その腕がわたしのからだを包んでくれることはありませんでした
なぜなら、わたしはそこで目がさめてしまったようだからです]
[わたしにはしろい天井が見えました
その端にあるしみがすずめみたいだと思いました
わたしはベッドから抜け出すと、上へむかいました
煙草が吸いたくなったからです
かみさまのすきだった、ハイライト。*]
[誰かが通りかかるのが早いか、
男性が私に気付くのが早いか。
私は、暫くそこで
きょろきょろとしていた。**]
[車輪が軋む微かな音。
近くで止まり、再び動き出さないそれに顔をあげた。
最近、急に視力が落ちてきたから、一瞬睨むような視線を投げて]
ああ、いや
……いや、大丈夫
[押し留めるような軽いジェスチャー。
ふら、と傾いだ身体は、やがて近くの簡易な腰掛けに*沈んだ*]
[キィ、と小さな音が響いて
そちらへと視線を向ける。
かわいらしい女の子の姿に気づき
冷えた頬がやんわりと緩んだ。]
嬢ちゃん、入院患者かい?
ここは寒いぞー。
[彼女が喫煙に訪れたのだと気づけずに
そもそも、成人しているようにも見えておらず。
娘達と離れて幾年月。
少しばかり、懐かしそうな視線を*向けてしまう*]
[この歳でボケたか。
そう考えると笑えてしまう。
きっと疲れがたまっているのだろう。
結局、そんな答えに辿り着く。]
珈琲でも飲もうか
[独り言のように呟き、カップを手に取ろうとしてはたと思い立つ。
いや、今回は缶珈琲にしよう。
毎日毎日珈琲で、胃はあれるわ飽きるわ。
たまには、変化が欲しい。
といっても、結局珈琲なのだけれど。]
[自動販売機まで、廊下を歩く。
たまにすれ違う患者さんに、軽く会釈をする。
こんばんわ、先生。
お疲れ様、先生。
白衣をきれば、医者なのかもしれない。
けれど、先生と言うのはどうなのだろう。
先に生きると書いて、先生。
こんな若輩者が、先生と呼ばれる事。
そんな事に、小さな疑問をいつも抱く。
けれど疑問には思っても、先生と呼ばれる理由を調べようとまでは思わない。
何故なら、面倒臭いから。
若者は、そういう人間である。]
[自販機の前に辿り着くと、財布を取り出してコインを投入する。
選ぶのは、いつも微糖。
甘党の珈琲党なのだが、カフェオレを人前で買うのは何故か恥ずかしく感じる。
といって、格好を付けてブラックを飲むほど自分の舌を誤魔化せない。
結局、プライドと味覚、双方の折り合いを付けた所が微糖なのである。
ガラン、と下の方から音がする。
少しかがんで、珈琲を取りだす。]
あちっ
[指先が冷えていたのか、少し熱かった。]
[珈琲を空けて、口をつける。
啜ると、やはり熱い。
少し冷まそうと、自販機の傍にある長椅子に腰かけた。]
ふぅーっ…―――
[息を吹きかけてみるが、缶珈琲はそれでは冷めない。
諦めて暫く待つしかないか。
けれど、こういう待ち時間って何を考えればいいのだろう。
何かしてないと、とても無駄な時間な気がする。
うーむ、何を考えよう。
そんな事を考えていれば、珈琲が冷めるに違いない。]
[深夜。
見回りの為の靴音が廊下へ木霊する。
無機質なその音色は地下、
遺体安置室の奥で停滞した。
すすり泣く女性の声音。
此処での死は日常だった。
病院から海が見える景色になった不可思議さに
誰も、気づく事はなかった。]
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