[突然のハリセン打撃につんのめりながらも踏みとどまる。顔を伏せたまま]
ふふふっははははは。
敵か!
とうとう学園防衛隊の出番らしいな。
よし、誰かは知らないが粉砕してやろう。
[校舎の窓から薔薇の花を放ると高笑いと共に屋上へと上って行った]
[矢の刺さった辺りの天井が抜け落ち、...の声と共に半分に割られた竹筒がするすると差し入れられる]
やぁ、みんな。
僕からのささやかな贈り物だ。少しでも涼を取ってくれたまえ。
[窓をぶちやぶって止まった竹筒に水が注がれる。続いて素麺が流れてきた。教室では爺が素麺つゆと箸を配っている]
じゅううううううう。
[窓を突き破った竹筒からこぼれる水がクーラーの室外機の焼けた外装に注がれ、水蒸気となってあたりに充満した。と、同時にクーラーが、ごぅんという嫌な音と共に温風を噴出し始める]
爺、みんなあんなに歓声をあげて喜んでいる。
僕は今、社会奉仕が与えてくれる喜びに打ち震えているよ。
[...は屋上にしつらえたテントの中で噴水と氷像に囲まれてくつろいでいる]
[教室の騒ぎを察した風も無く、どんどんどんどん素麺が流れてくる。あるものは窓から飛び出して室外機の上で焼き素麺となり、またあるものは窓の割れ目を塞いだ。あふれだし、床にべちゃりぐにゃりと落ちる素麺]
ふんふふん ふふふふーん。
[屋上では...がマルカントワーヌ・シャルパンティエの「真夜中のミサ曲」をハミングしている]
[素麺に混じってメニューが流れてきた]
[1]うなぎの蒲焼
[2]カット西瓜
[3]焼きとうもろこし
[4]かき氷と赤いシロップ
[5]鍋焼きうどん
[6]緑茶ゼリー
どんどん、どんどん追加してくれたまえ。
何と言っても食べ盛り、育ち盛りだからね。
僕はまた校内の見回りに出かけてこよう。
[屋上の柵を乗り越えると、たんっと宙に飛び出す。と同時に背負っていたパラシュートが開いた。構内をぐるりと見渡しながら、どこかに潜んでいる敵に思いを巡らせ晴れやかな顔つきでゆっくりと*下降していった*]
[もろこしー、もろこしー、たーっぷりもろーこしー。焼きトウモロコシが雪崩打って流れてきた]
―その頃、校庭上空―
[...は、パラシュートの止め具と格闘していたが、ついに解除に成功し――落ちた]
むぅ………痛い。
[しかし毅然と立ち上がると、パラシュートを縫いとめた元凶に目をやって]
キュウドウ君だろうか。
良い腕をしている。
けれど彼も、僕にお礼が言いたいなら言葉で呼び止めてくれれば良いものを。
…見かけに寄らず恥ずかしがり屋だな。
あーっはっはっはっはっは。
[静寂を粉砕する...の高笑いが廊下に響き渡った]
おや、変な帽子があるいているぞ。
君、そこのタオルの君。
それは楽しいかい?
これは学生服じゃない、会長服だ。
あーっはっはっは。
カキゴオリ君、タオル君に僕の素晴らしさを説明してあげてくれたまえ。
[ずびしぃぃっ]