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[何度目か、開いた扉に一瞥を向ける。その姿には――見覚えがあった。否。此処にいる常連客の全てには、「見覚え」が付き纏うのだが。それは常連仲間という以外にも、知った人物だった。
犯罪集団のボスである男は、その構成員の全てを詳細に知るわけではない。が、少なくない範囲、知っていた。三下ではない地位に位置する者なら、尚更だ。
その姿に、特別声をかけるような事はなく。
今し方鳴き声がした方を見やり]
魚なら焼いたのより煮たのがいいな。
[ぽろりと落ちた呟きも、この男にかかれば恰好の思考のタネ。
白ワイン煮がいいか、いやトマト煮込みもいい。
トマトジュースは嫌いだが、トマト煮込みは好物だ。]
うん、美味しそう。
[自分の中で話を完結させて、何度も納得して頷いた。
独り言に勝手に食いついたのだから、あまり積極的に返答は求めていない。
薄い水割りをくーっと上機嫌に飲み干して、いよいよ自分も酔ってしまう気でいる**]
いずれにしろ酔うなら
[騒々しさに視線を店内へと戻す。
あの扉はあんなに軋んだっけ。
開く人によるのかもしれない。
それはそれで、きっと相応しい]
もっとゆっくり味わったほうが、深く酔えるものよ
[言葉とは裏腹に、傾けたグラスを一気に乾してみせる]
[立ち上がれば、高いヒールにより背筋はぴんと伸びる。艶かしく光る甲を晒して、女はバーを横切った。
手に持ったポーチには口紅が数色、入っていた]
……貴女
[隅の席、奥へと続く扉の前に座る女は、声をかけても顔をあげない。
前に置かれたグラスは汗すらかかず、口をつけた後もなかった]
[そのまま女は化粧室へ消える。
帽子をとって、髪をなおして、夜にあわせて目元の色を整えて
そして最後に、真っ赤な紅を唇に*置いた*]
[窓際の女が席を立ったから、少し視界が変わった。
羽音を確かめにいこうか、窓のほうへ視線をやれば、バーカウンターの影に隠れて女をひとり見過ごしていたことに気づく。]
やァ。
キミは鴉と、トマト煮込みとォ、どちらが好き?
[くすくすくす、と機嫌の良い笑いが止まらない。
比較対象がおかしくなっている事も、奥まった席の彼女の反応がひとつもないことも、さしたる問題ではない。
酒に酔うというのは、それほどに楽しいことだから**]
うる、へー
[ウルフはひらひらと片手を振った。そこに、そっとミネラル・ウォータのボトルが置かれ]
お マスター気が利くね
さすがじゃん?
……
私は食べる話をしたわけではないが……
……まあ、煮魚も、悪くはない。
[呟きつつ、頭に泳がせるのは氷の下に遊ぶ鈍色。
空になったグラスの代わりに、苺とミルクの酒を頼んだ。マスターが手渡してきた薄桃色の液体を、一度、二度、掻き混ぜて]
……、
[マドラーで突付いた果実が、静かに水面へ落ちた]
いー女じゃん、あれ
[うとうとまどろみつつも、薄目で他の客の様子を窺う。
店の客には、女が二人。
どちらもそこそこ、好みのタイプだ。
しかし一人はどう見ても堅気じゃないし、寂しい財布の中身を思うと迂闊に手も出せない。
他には男が二人と、かの変わり者。
いつもの顔だ。…… だ よな?]
食べないのォ。美味しいのに。
[ゆらん、と意識が揺れるから、語尾もふらつく。
煮魚も悪くはない、と続いたのにはまた何度も頷くのだけど。]
あれだ、おにーさんは割といい人だねェ。
ふふ。
[誕生日も聞けたし、杯も交わしてくれたし、それから煮魚も好き。
こんないい人も久しぶりだ。何度もこのバーに来ているのに、何故今までこの人と深く話したことがなかったんだろう。]
おれはー。
魚より、肉 だな
[そういえば、生まれ育った場所は海の傍、だった 気がする。
子供の頃は、あの海の生臭さが大嫌いだった、ような。昔のことなんて、忘れてしまったけれど。]
なんか肉ねえの?
ジャーキーみたいのでいいわ。
割といい人?
――は。
そんな風に言われる事は、珍しいな。
[ふと齎された評に、肩を竦めて笑った。唇の片方だけが上がる笑み。
珍しい。己は元々人相が悪い上に、世間的には「悪い人間」とされる人間なのだから]
変わった奴だ。
[それは他の奇行についても合わせて。何処となく、新鮮さを覚えながら、零した]
[化粧室の扉を開けた途端、一陣の風が店内を通り抜けた。
重いはずの扉が外へと開け放たれ、キィイ…と軋みながら大きく揺れた。
女は帽子を押さえ、ゆっくりと店内を見渡し――]
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