[── 夏特有の強い日差しが頭上から差し込む。
飼い猫を抱えたまま家の玄関を出て、なだらかに下る坂の上から海を見遣った]
……今日も暑くなりそうだねぇ。
[視線の先にあるのは海傍にある古ぼけた灯台。
それを見詰めるウミの目は優しげだ]
さぁ、今日も様子を見に行こうか。
[抱えた飼い猫を数度撫でた後、一度家の中へと戻る。
ややあって、身支度を整えたウミが飼い猫と共にゆっくりと坂を下り始めた*]
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何故かこのシリーズの設定考えるのに難儀するので参加を悩んでいたが結局参加した(
どうも、龍猫です。
夏風邪なぅ(熱なし、喉鼻にきてる)なので、じさまでゆったりするよ…。
やぁ、おはようさん。
[街の人と顔を合わせる度に挨拶をして、時折雑談を挟みながら坂を下っていく。
年のこともありその歩みはとてもゆっくりとしたものだったが、覚束無いものではなかった]
あぁ、灯台を見に。
わしの日課だからねぇ。
[今日も行くのかと問われて、柔和な笑みを浮かべながらウミは頷く。
とは言え、最近では長距離を歩くのが辛いため、灯台が良く見える丘まで下りて、そこから眺めるのが専らとなっていた]
海守。
[街の人と別れて足元に声をかければ、ゆらりと尾を揺らす飼い猫がウミへと視線を向ける。
行くよ、と言うように視線を投げかければ、歩き始めたウミに合わせて飼い猫もまたその隣を歩き始めた。
連れ合いを亡くしてから飼い始めたこの猫は、自由に歩き回ることもあるが、大抵はウミの傍から離れずその後をついて行く*]
よっこい せ、と…。
[年を取るにつれて自由が利かなくなった身体を動かし、丘の上 ── 展望台のベンチに座る。
その膝上に飼い猫が乗り丸くなるのを待ってから、ウミは灯台へと視線を向けた]
……お前さんも年を取ったのぅ。
[かつては真っ白だったその壁も、今では雨風はもとより潮風にも晒され錆なども目立ち始めている。
灯台を去ったのは10年程前のこと。
もう遠い過去のようにも思えた]
[波音を聞くには場所も耳も遠く、聞こえてくるのは周囲の車や人の声が辛うじて。
ただただ海の景色を視界に捉えていたウミの異変に気付いたのは、膝上で丸まる飼い猫の方だった。
一瞬途切れた周囲の音に飼い猫はピクリと耳を動かし、僅かばかり首を持ち上げる]
…………?
[ウミもまた、刹那に見えたものにゆっくりと瞬きを繰り返した。
遠いはずの海岸線が目の前に広がっていたのだ]
…気のせい、かのぅ。
[首を傾げ呟いた言葉に、飼い猫が「なぁう」と小さく声を返す。
気のせいではない、と言いたげだった飼い猫の意思は、ウミには伝わらず終い*]
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喉やられてるってのに昼飯が焼きそばで午後に買い物行かせる親って鬼畜ちゃう?(爆
焼きそば正直あかんかったでぇ……半分も食えんかった。
喉やられてる人は気をつけよう。
[刹那の幻覚はその時限りで、ウミは日よけの下でただただ海を、灯台を眺めていた。
毎度思い起こすのは灯台守として過ごした日々。
出会いと別れを繰り返した懐かしい記憶が甦る]
…あの子達はどうしておるかのぅ。
[夏になれば街に住む子供達が海へと遊びに来た。
灯台守をしながら浜辺の管理も任されていたため、幾度か顔を合わせる機会もあった。
そういえば海の家はまだあるのだろうか。
そんな疑問を抱くほど、ここ数年は海岸へも足を運べていない]
本当に、年を取ったものだ。
[ふぅ、と疲れたような溜息が零れ落ちる。
時に抗えなかった悔恨が燻るかのよう]