あ、きつねぐも。
[空を見上げて呟く。
そこでふと、狐雲の不吉な言い伝えを思い出して首を振る]
あーやだやだ、思い出しちゃった。
なんであんな怖いこと言うのかなあ……
[歩く速度は先程よりも早くなっていた]
―― 境内 / 集会所の入口 ――
[雛市 トキは、依頼人が口にする言葉をなぞる。]
―― 連れてかれる、…誰かが。
[ふと拾う商売の種を覚えおく態で、やや神妙に。]
[まっしろなフロックコートに、紺青色のシャツ。
支度を終えたばかりの活動写真弁士は暗幕を捲り、
映画の余韻を脱ぎ捨てるように陽光の下へ出た。
都会では近年とうに廃れた無声映画も、こうして
トーキーの配給届かぬ地ではいくらか需要がある。]
… きつねぐも、か。
[祭りの間、興行小屋として借りる集会場の入口へ
腰下ろす弁士は、足組む膝上へステッキを渡した。]
いなりぐも、って呼ばないのは
どうしてなんでしょうかね。**
よろず屋 エビコは、ここまで読んだつもりになった。[栞]
[かかる声に、くいと顎跳ねて見上げる。]
ふふふ。
きっとしみしみで、うまずっぱいのですね。
[きっといなりずしの煮含めお揚げも、
巻寿司のたまご、椎茸、かんぴょうも。
村に到着したその日からいくどか顔を合わせる
よろず屋のあるじへと、にこりん笑みかける。]
はいっ。 かならず。
[彼女が作るお弁当や惣菜の味は、とてもいい。]
[汗は浮く。からりとした暑さに雫は滑る。
照りつける日差しに嫌気も刺さない村の夏。]
[ネギは白髪かあさつきか。薬味は七味か和辛子か。]
[各地特色ある豚汁、此処は如何にと楽しみに*して*]
おお、狐雲。
[空を仰ぎ、蝋燭へと火を灯す手を止め、ぽつり。
『狐雲が出ると、誰かが何処かへ。』
幼い頃聞かされた話を口の中で転がす。
弟を怖がらせたのも懐かしい思い出だ、なんて思っていると
「そっち終わったらこっち頼んます!」
提灯の下がった縄を持つ男達の方から声が掛かって]
すまないすまない、えーと…
よし。これで最後だ。上げてくれー。
[灯し終わった提灯は、せーの、の掛け声と共に跳ね上がり、境内を彩る。]
今年もいい祭に、なるといいな。
[転校生 ロッカ > 餅肌 ネギヤ > 青年 ゴロウマル > 医者 ドウゼン > 学生 ハツネ > 悪戯っ子 デンゴ > 編集者 グリタ > よろず屋 エビコ > 若旦那 ゼンジ > 弁士 ヒナ]
[テトラポットの上]
[物置小屋]
[嘘がつけなくなった]
{ 南北が逆の地図 }
[昨晩]
《D=01》
【鎖骨】
[×]
[包帯]
[吉]
[共鳴者]
“タ”
“I”
[乾飯を見つけた]
[人の顔がスカシカシパンに見えるようになった]
[順番をわざと飛ばした]
[まゆげコアラを発見した]
[嘘がつけなくなった]
[人の顔がスカシカシパンに見えるようになった]
{ 擬似餌 }
{ ドクロマークのついたボタン }
{ 偽りの手紙 }
{ ハニートラップ }
{ トラバサミ }
{ 落とし穴 }
{ 投げ網 }
{ 金だらい }
{ 時間差 }
おいおい、あんまり近寄るとやけどしちまうぞ。気を付けなさい。
[焼きそばを作る鉄板の前に陣取った男の子が、旨そうな香りに引き寄せられるように、顔を近付けていた。]
やあ、**さん。今夜は足は痛くないようだな。けっこうけっこう。
[神経痛で通ってくる老人、頭痛持ちの若妻、日頃の患者たちも診療所にご無沙汰の者たちも、今晩はたぶんほぼ全員が、この神社のあちこちで祭りを楽しんでいる筈だ。]
[村中が集まった中に、この老いだ医者もまた。
万一に備えて、簡単な応急処置ぐらいはできる程度の諸々を黒い鞄に詰めているのは、ここ十数年変わらない。]
『……きつね……ぐも……』
『……いなり……』
おお、エビコさん。豚汁は今年はどのあたりで作ってるかね。
[耳に入ってきたのは、炊き出しの女衆と、昔懐かしい無声映画の弁士との会話の端々。]
/*
悩ましいにゃー。誰を診察したらええねん。しかもピクシーいてますねんであーた。
溶けたらなんて言ったらええの?
というか、今日だけは溶かしたくないなあ。
*/
[涼し気な鈴の音と下駄の音]
涼し気な音がする
[耳をピクピクとさせた犬に気づくと頭をぽふぽふと叩く]
気になるのか、ポチ
だがじゃれたらダメだぞ
[音の方向を見るとその音の主の姿が見えただろうか]