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貴方はメモに記した彼の他にも誰かを…
暴かれたんでしょうか。
寒空の下に置き去りにしてきたんです。
………彼女は狼使いではありませんでした。
[黙祷にも似る瞑目だけを置き場を辞す理由を、語るともなく訥々と零すのは死の淵へ眠る故か。キィキィキィキィ…―――部屋を出る時には肩越しにヘイノを振り返り、見えやすいように開くよりは何をか遮断するように扉を閉めた]
…―――
― 村の中 ―
[ざりと雪を掻き 進む先
杖にこつり 当たる――硬い感触。
村の端 森の近く
ふんと鼻をひくつかせるけれど 温度の臭いは しない]
[雪の上に屈み、手を伸ばす。
布の感触。
ぺたり、ぺたり、触れる布は凍る程で
そのまま手を先まで進めて行くと
硬いもの]
…――帽子…?
…――……
――ラウリ、か……?
[倒れて居るひと。
足でも滑らせたか、それとも。
冷たい其れは、暗い場所では男でなくとも見落とすのかもしれない]
…――
[ドロテアの幼馴染たる村娘から、レイヨが人手を
借りに赴いたらしいとは耳にするものの――――
車椅子の青年は誰も手助けを連れては来なかった。
何を訊く前に、蛇遣いは村の者に頼み、小さな
手曳きの橇を借受け、包んだウルスラを載せた。]
…誰を訪ねたのか知らぬが…レイヨ。
死んでいた、とでも言うつもりかね。
[横殴りになりはじめる風雪を浴びながら薮睨み。]
否、…話があるなら後にするか、同道しろ。
[蛇遣いは、首元へ戻した白蛇をまた温める態で
毛皮の下へ包み―――ぐ、と深くフードを被る。
手曳き橇のロープを掴み、負い曳くに滑りは軽い。
みるみる嵩を増す積雪の表面がやわらかくならぬ
内にと蛇遣いは眉根を寄せて奥歯を噛み骸を運ぶ。]
…っ …
[やがてウルスラの住まい、寝台の上へ苦労して
獣医を横たえる頃にはすっかり息が上がっていた。]
[一度身震いをして、ぐし、と鼻のあたまを擦る。
憮然とした面持ちの蛇遣いは何かを探す態で室内を
見回し――獣医の記帳机にあった紙を手に取った。]
…耳印、オラヴィ。低体温…
…耳印、ヘイノ。低体温、酷い涙目…
…耳印、ヘイノ。低体温…
…耳印、ヴァルテリ。低体温、過眠症…
…耳印、ユノラフ。低体温…
[読み上げるそれには、ウルスラが診ていた馴鹿の
症状と持主―耳の切目にて知れる―が*並ぶ*。]
ウルスラ先生、…やっぱり…
[人手を求める間ヘイノの家の後に盲目のマティアスや屈強とは言い難いラウリも訪ねたが、どちらも留守であった。彼らが森の傍で会話せずも互いに近くある事も知らず、ひとり戻ればトゥーリッキの視線と言葉―――藪睨みに怯むより前髪に隠れる眉を顰めた]
………はい…
[本来なら人手すら連れて来れぬ侘びを紡ぐのだろうが、ヘイノの姿が脳裏を過ぎりただ同道に肯定を示した。少しでも手伝えればと橇引くロープを求めた差し出しに預かるものはあったか―――息あがるトゥーリッキではなく、横たえられたウルスラを見て息を吐く]
…………
[トゥーリッキが読みあげるトナカイの症状は、ウルスラの書き残したものだろう。項垂れ膝の上で握りこむ拳が震え、歯を食いしばった]
[使者の男は、ウルスラの死とその無実を伝えていった。ナイフをしまい、眼鏡と手袋は外しても――見た目は常より赤いまま。己が殺したと。明言しなかったとしても、相手には察せられただろう]
……必ずしも。
苦境を、惨事を、終わらせんと。
[長老に報せる時は、そう付け足して。雪を踏み締め、歩いていく。その足跡は既に赤くなくなっていた。はたと、立ち止まる。感覚を失いかけている両手を見つめ]
……
[ゆらりと、己の小屋へ向かった]
…「やっぱり」何でしょう。
[途切れるトゥーリッキの言葉に、のろのろと顔をあげる。キィ…―――車椅子は軋み、トゥーリッキに向き直った]
………ヘイノが……亡くなってました。
他にも亡くなった方がいるんでしょうか…
[先の言葉への返事も含めヘイノと近しく見えた相手に報せる態で、死者のある場で別の死を紡ぐ。直接的に誰かに殺された様子でない事は、言葉からも知れようか。
眠りの先で感じた気配を想い、語尾はあがらずも零す声は重い。ウルスラを肩越しに振り返り、そこにある死を前に眼鏡の奥の眼差しを*細めた*]
[己の小屋に帰り来ると、赤が散った髪と顔を濯いだ。赤く染まる雪解けの水。噴き出た血が雪に広がっていったように。眼鏡のレンズを磨き、かけ直して]
……、
[火を入れた暖炉の傍に椅子を置いて腰掛けた。
小さな小屋の中には、必要最低限といえる家財の他には、幾らかの書物しかない。
指先で首飾りを摘み、眺めるでもなく見る。やはりところどころに血が付いたそれの中心、錆び付いたタグの裏には、ごく小さく細い文字で男の名前が書かれている。――アルマウェル・“J”、と]
……終わらせなければ。
そうでなければ……
私も、死するか? ……
[炎へ視線を移し、呟いて。
瞼を下ろし――短い眠りへと*落ちる*]
[ウルスラの骸引く橇に、手伝いをと差し出される
レイヨの手へは――す、とビャルネの杖を渡した。
引手の弱さにふらつきがちな橇の軌道は、車椅子の
青年が後ろからその杖で進みゆく傾きを調整すれば
蛇遣いがひとりで引くよりも安定していただろう。]
…
[ウルスラの小屋にて…物言わぬ彼女のしかばねを
横たえた部屋にて。蛇遣いは、レイヨが歯噛みする
微かな音を聴く。憮然とした面持ちは変わらない。]
… ひとが、トナカイに。
病を伝染(うつ)しているのだ。
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