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当人にしてみれば、か。
だとしたら、ずっと村に潜んで
この時を待っていたんだろうね。
全く、大したもんだよ。
[レイヨとは対照的に、言葉に僅かに
皮肉めいた感情が滲むのは感じられるかどうか]
まじないの結果か……
もともと出来る人間が名乗り出るのかどうかさえ
怪しいモンだからねえ。
知ることができるなら知りたいとは思うけどさ。
この結果が偽りであるなら……
恐らく、また別の者が名乗り出るだろう。
虚偽なる報せを暴かんと。
[マティアスの言葉を聞くと、
客観的な推測のように言って]
……
[静かに、揺れる炎を見つめ*]
………お辛くはなかったんですかね。
[皮肉めくウラヌスの声音に、深く思索するらしき間は己の裡へ浮かぶ感情を探るよう。狼使いと言えど同じ群れに暮らし続けた者たちを想い、ぽつりと零す声は語尾のあがらぬ小さな呟きに留めた]
名乗れば危険かも知れません。
潔白の方とて表に出れば狙われるかもです。
見つけて下さるまで待てればいいんでしょうけど…
そんなに時間はないですね、きっと。
[やがて長老のテントが見え始めれば、集まる者たちの姿もあるだろうか。遠目にも目礼を置いて、訥々と語る声は飲み込んだ溜息の分だけ静か]
[抱き寄せられ耳元で紡がれる言葉にわずか身動ぎ。僅かに胸が高鳴っているのは簡単に伝わる程で。
でもそれは、これから見るだろう赤い色への期待だけ。自分であっても他人であっても]
守ってくれなくてもいいわ。
私に幸せをくれるなら。
[自分の幸せ。姉と慕う人は知っていよう。そして…時至り。優しげな表情を浮かべたまま、目の前で交わされる言葉に耳を傾け…口元には微かな微笑みをうかべつつ。決定を聞けばそれはやはり僅かに嬉しげにもゆがむ。自分が手を下したいと、願えるのなら願いたいもの、と*]
曲者すぎて、怖いよ――俺は。
[聞きに行く、という声に終始思案顔。
ドロテアの呉れた時間はそろそろ尽きるだろう。]
俺は、宣言通り長老の所へ行くつもりだ。
――聞いたからにはビャルネも行くんだろ?
[こちらを見やるビャルネに返す答えは抑揚なく。
よく鳴る杖は変わらず存在を誇示するようで、流れるのは微妙な――沈黙。]
例え辛くても、好きでやってる――
いや、自分で選んでやってることだろうからね。
[レイヨの問うような呟きには
それだけ。それ以上は語らない]
疑わしいところは残して、無実の者から仕留めていく、ってね。
なるほど、確かに普通はそうするだろう。
さっさと見つけてくれればいいんだけど
「ハズレ」の方が確率高いからねえ、
そう簡単にも当てられないだろうさ。
一刻も早く見つけないと、待っているのは
[そこで言葉を切る。
余りにも不吉な言葉はそうやって隠した]
約束。
…と口にした舌の根も乾かぬうちに、
自らの死後の話は軽々に出来んぞ?
…だが、どうせなら、
壮絶な奪い合いの末に勝ちとって貰いたいものだ。
[言いながらもイェンニへ瞼で頷いてみせる。
傍らで彼女がじわり広げる期待という名の夢を、
蛇遣いは聴く。如何にゆがむとも操れぬひとの意志。
やがて辿りついたテントの前で、共に容疑を受けた
他の面々と重く頷くに似た挨拶を交わし――衆目の
無言の求めに応じ下される、長老の沙汰を待った。]
[躊躇い――躊躇うわけにはいかない。
間違い――考えれば何も出来ない。]
――俺がまじない師だって言ったら、どうする?
無実なのはアルマウェルだ――。
長老の足とも言える人間の潔白は朗報だろう?
[真と嘘の情報開示。聡い男は恐らく殺意に気付くだろう。
二人きりで、自らをまじない師とし、恐れもなく人一人を潔白と言った自身へ向けるビャルネの表情を正面から観察して。]
[相手が何を言ったか、どんな顔をしたか。
ぎりぎりの所で目を逸らし、舌打ちは何に宛ててか。]
ビャルネが――"そう"だなんて、確証はないさ。
でも、
["確証なんて持てるわけないだろ?"
音にせぬ言葉は冷たい雪の上に書士を倒し、その拍子に杖は音を立てて近くの雪の上に落ちる。]
――、沁みるな、雪の上に寝るのは。
[口元ばかりは笑う。
そのまま体勢の利のままビャルネの腕を捻る――強く。
強く――鈍い音響かせ関節が一つ増えるまで。]
こんな手段を選ぶ理由は…―――
[探せど出ぬ答えを一旦は脇へ置くように、一度だけ小さく首を振る。語られぬのを無理に話題を続けず、ウルスラの言葉に耳を傾け―――途切れ隠される不吉な言葉に前髪に隠れる眉を顰めた]
待ちぼうけでもさせてしまいたいです。
[下がる眉は隠れども、冗談めかぬ口振りで嘯く声音は切実に響く。キィキィキィキィ…―――車椅子の音は、ウルスラと共に長老のテントへと近づいていく*]
俺こそ、怪しまれるかもな――
俺には アルマウェルの潔白さえ、わからんし。
[ビャルネは何か言っただろうか。
死にたくはない、と言っていた男は今何を想うのか。]
本当なら、待つべきだったかもな――長老の指示。
そのつもりで向かってたとこだし。
[袖の中から出したナイフはコンパクトなもの。
ざくり、刺したのはその太もも。]
――でも、俺は臆病者だから、さ。
だからこうして、先手うっちまった――ハ、
……流石にそこまでは分からないけどね。
[相手方の考えなど知る由もない。]
待ちぼうけ、か。
いつまでも待っていてくれるほど
優しい相手じゃないからねえ。
[気がつけば、目の前にテントがあった。
入口の幕を開け、レイヨとともに中へと入った。
既に異変が起きていたのも*知らずに――*]
[相手を痛めつけながら反応を見るのは拷問に似ている。]
不意打ちでなきゃ、準備、出来ちまうだろ――
[相手の喉元をぎりぎりのところで押さえつけたまま、刺したままのナイフを捻る。]
狼は、ちっとばかし遠いが――まだ、
今から呼べば間に合うかも、な。
[相手が抵抗して左腕をつかんだなら、浅く息吐きだして耐えるけれど――いずれ伝う赤は指先からビャルネの首を伝いを雪を濡らすのだろう。
狼は、動かない――。]
― 長老のテント より ―
[視界無き男は、視界無きがゆえに耳敏い。
外の雪吸う音の中、聞き分ける衣擦れの音に混じる、別なる音に
僅か身を硬くして カタリ 脇に置いた杖を握る手に力を入れた。
長老の方へと、一度顔を向ける。
炎受ける使者たる男へも、顔を向けてから]
…――、少し出て来る…
また、、戻る。
[帰る事を言葉に乗せて、テントを出た。
ざりざり、さくり。
杖で雪を削る音の後に足音が重なる]
[折ったのはビャルネの左腕。
刃を突き立てるのは太もも。
歯止めをかける余地を残していることは悟られているか。]
――そんな顔、すんなよ
俺が、 …いじめてるみたいじゃないか――……
[困ったような声音。
太ももから抜き取るナイフに相手は何を想うか。
満足に消毒もしない腕からは血が流れ落ちているけれど、今痛いのは自分じゃないことを知っている――ナイフはそのまま、ほんの一瞬の躊躇いの後、脇腹に。]
[冷たい空気の中、臭いは伝いにくい。
雪が音を吸い、白の中音も伝いにくい。
それでも男はゆっくりと、しかして真っ直ぐに「生」の臭いへと歩み行く。
赤いにおい には、温度がある。
獣を捌くとはまた違う 温度]
…――
[男の足音は、男の位置を簡単に報せるを判っている上で、男は近づく。
相手の「臭い」「音」で 誰か知る為に]
[ビャルネの声、苦悶の顔――逸らしそうになる目を縫い止めて、経験のない行為は加減も歯止めのかけかたもわからず、徐々に麻痺して]
――、
悪ぃな、下手くそで。
[にゅぐり、右手に伝わる感触は生々しく、生を訴えるぬくもりと震えが直に伝わって。
そろそろ抜かなければ、相手は本当に息絶えてえしまうと――失血量を見てもわからない……どころか]
人って、案外、生きてるもんだな……
[覚えた感想は、ソレ。]
[耳覚えのある音を微かに捉え、また浅い息。
左手が押さえつける喉に知らず力がこもり、ビャルネに声を与えたかどうか。]
……、マティアス、か。 寒いな、此処は。
[呼ばわる声は少し震えてもいたかもしれない。
いっそう深く、内蔵をえぐりとらんばかりの勢いのまま力を強めて。
後ろに居る男――同時に二つを考える余裕のない頭はいつしかただ相手の生を奪うことに徹することに*なる*]
[カタリ。
マティアスの杖が立てる音に其方を見やった。その雰囲気から、察するところはあっただろうが――男は動かずに。ただ、小さく頷いて、外へ出ていく姿を見送り]
……
[足音が聞こえなくなってから、炎に向き直る。それが燃える音と呼吸音が微かにするばかりの静寂。いずれ、新たな死がもたらされた事が知れれば、男は恐らくまた、任に赴くの*だろう*]
― テント ―
[ウルスラと共にテントに着いた時、肩越しに外へ振り返ったのは、冷えた鼻先に違和感を感じたから。知れど馴染みの薄い血の臭いと気配を確りと嗅ぎ分ける事は出来ず、そのまま静寂を破りテントの中へ]
…………
[キィキィキィキィ…―――長老と、アルマウェルとを順に見てから、ぎこちない軋みそうな目礼を添える。周囲を見回し部屋の隅まで車椅子の音は響けど口は開かず、増えた息遣いと燃える*焔の音*]
…――あぁ、寒いな…
――、
[聞こえたのはビャルネの呻き、重ねてカウコの、声。
さく、と雪を踏み―近付く一歩]
…―「狼使い」…として…か?
それとも揉めただけか…?
[問うたのは形式の上の事かもしれない。
ただ、赤の匂いが。
生(なま)の、濃く甘く苦い匂いが酷く鼻腔を擽る、から]
[沙汰を迫りに訪ねた、長老のもと。
テントの隅に在る、車椅子の青年をひたと見遣る。
蛇遣いは、何か口を開こうとしたが――不意に、
マティアスがひとときテントを離れる旨申し出る。]
…、ああ。早く戻れよ?人手はおそらく入用だ。
[機を逸する態で彼のために入口の幕を持ち上げ、
また戻そうとした折…蛇使いの首元で、相棒たる
しろい大蛇が毛皮の下でごそりと大きく身動いた。]
――…む。おい、どうした…
[低く異変を問う声音は、或いは一目瞭然な大蛇の
うねりはテントへ集うもの等へも伝わっただろう。
当の蛇遣いは、毛皮越しに大蛇へと片手を添えて…
マティアスが出て行ったばかりの外方を、見遣る。]
…あれは耳聡い…
何かに気づいたか。
[ぐると振り返って、テントの中へ居る面々を
確認する。微かに眉を顰めながら追って天幕を出、]
見てくる。…来れる者は、頼む。
[言い置くに、妹分へは眼が"来い"といざなう。]
… ッ…
よりによって…!
[…よりによって。
聴く者へ如何に響くとも、口にせずにいられない。
緩慢な歩を進めるマティアスの脇を大股で抜ける。]
カウコ!
よせ、一旦でいい、よせ!!
[ナイフをビャルネの身へ埋め続けるカウコの懐へ
肩を割り込ませ…非力ながらにぐいと全身で彼らを
引き剥がすようにと激しく押しやる力をかけた。]
ビャルネ… 白髪頭!
[鋭く。失血の寒さに震える彼を呼ぶ。]
そちらへ転がるのか。
「あたし」は 望まないぞ。
[服越しの刺創、あらぬ方向へ曲がる三つ折れの腕。
雪上へ染みた赤黒さは、遠からぬ死を予感させる。
蛇遣いは、這うように手を伸ばしてビャルネの杖を
引寄せる。見えるようにぎしりと握る。飾りの音。]
あたしは――こわくない、ことにする。 だから。
[じゃらり、凶兆でない常の極光を思わせる珠の
螺旋がビャルネの――場に在る者の視界で揺れる。]
…示せるなら、示せ。
生きたあんたが、必要だ。
とどめなど、やらぬ。
[狼は依然――動かない。
動くとしたら、動かす者は*他に居る*]
…………
[曇る眼鏡をはずしつるに歯を立て思索の海へ沈んでいたのか、トゥーリッキの視線を感じ眼鏡をかけ直して顔を向けたのは間を置いてから。促さずも口を開きそうな気配はマティアスの行動で途切れ、視線を向ける先で外へ向かう彼は膝掛を羽織っていたか]
…………
[マティアスの背にお気をつけてと声をかけるより先、トゥーリッキの声が異変を語る。コートのうねりにお連れさんの様子に気づき、眼鏡の奥の瞳を瞬かせた。
マティアスを耳聡いと評し外へ向かうらしきに、言葉を受けどうするのか確かめる態で室内にある者を見回し、長老へ眼差しだけでひと時の退席を語る。キィキィキィキィ…再びテントの外へ向かい、曇る視界にも異変を気にしていれば聞こえるて、トゥーリッキの声と物音と―――臭いに前髪の奥で眉を顰め*近づいていく*]
[背後からかかる声。
組み伏せた相手を想えば些細な失血はそれでもどこか寒い。]
――あ?
もめた、くらいでこんなこと……してたら
俺は何人、殺ってんだよ。
[狼使いとして?
どこにも確証など――ありはしない。
片方を否定するにとどめたまま、耳慣れた声を聴く。]
["よりによって――" 今は、何も沁みない。
ただ、"よせ"という命令にびくりと反応を見せただけ。
自分ではやめられない。
既にかけるべき歯止めなど狂ったから――。]
――、は、 ……っ、
[引き剥がされ、そのまま後ろへ押され尻もちをつく形。
地面に両手をつき、背面で支えながら吐いた息。
暫し呆然と、だらしない格好のまま自らが施した惨状を眺め]
も、無理だろ……手遅れだ。
[小さく呟く声はまだ震えていただろうか。
ああ、寒いな――考えたのは*そんなこと*]
[キィキィキ…―――よく見えずともただならぬ気配は感じられて、曇る眼鏡をはずさず袖口で拭う―――雪に広がる赤黒い色は、紅いオーロラや村に灯る明かりのせいではない。
戦慄いた口は倒れているビャルネの名を紡げず、見開いた瞳が揺れる。カウコの口振りからビャルネに危害を加えたのは当人と知れ、ビャルネからカウコへ軋みそうな所作で顔を向けた]
………彼が狼使いだと…―――
[トゥーリッキに止められしりもちをつくカウコの声は震えていたから、問いかけた言葉は半ばで留まる。トゥーリッキがビャルネに声をかける中、集まる人を見回し―――手遅れだ―――カウコの声が聞こえ生きる事を望んでいたビャルネへ向き直る]
…………
[それから誰が来たのか、手出ししたのかどうか。
背に手をついたまま、暫し呼吸を繰り返し、]
――どけ、
[右手にはナイフを持ったまま――書士に落とした最期の刃は喉。
びくりと跳ねたが最期、彼はもう動かない。]
……長老の所、行って来るわ。
[ナイフを抜いて、雪の上に落とし、こときれたビャルネを担ごうとしたところで一つ息を吐く。]
無理――今そんな力なかった。
[呟いて、ふらりと立ち上がると引き止めもされなければ長老のテントへと*向かう*]
[引き留めず追い遣らず痛ましい姿のビャルネを見て、瞬きには長い瞑目すらうまくいかず、堪えるようにきつく瞼を伏せた。キィ…―――整えるように震える白い息をひとつ吐き、彼に向き直り近づこうとして―――カウコの行動に目を見張る]
…………
………すみません…
[跳ねるビャルネが事切れ、担げずひとりテントへ戻るカウコを呼び止めず。キィキィキィ…―――ビャルネの傍へ寄り、誰に対してか項垂れ掠れる謝罪を零した。
ビャルネの瞳は開いていただろうか、開いてたなら閉じさせようと、彼自身の意思か誰かの手により閉じていたとて、車椅子から身を乗り出し、触れる。生の温もりが抜け落ちていくビャルネの額―――触れる手が震えた]
………、…―――
[死者に触れた手は静かに離れ、震えごと手の中に握り込む。溶けぬはずの雪と氷は赤黒い液体の熱に少しだけ溶けていたか、それすらも共にまた冬の女王に抱かれ凍るのだろう]
………僕もテントに戻ります…
[カウコの向かった先をちらと見てから、周囲の者たちはどうするのだろうかと視線だけが問う。ビャルネを運ぶ人手を求められれば、車椅子の膝の上ならと*申し出るだろう*]
[藻掻くほどのちからも失ったビャルネの右腕が
誰の何へと反応したものか――ぴくりと動いた。
彼のひくつく指先が、虚空をさまよい赤を落とす。
或いは、ただかき集めようとしたのかもしれない。
流れ出すいのち、やらぬと宣されたとどめ、望み。
然しその指は、宙へ何か文字を記そうとする態とも、
その場にいる何者かを指さそうとする態ともとれて]
――…
[蛇遣いは、賭けの結果を見出そうとする面持ち。]
手遅れ。 そうかもしれん。
だが、――村もそうかね? 違うだろ。
[呆と言うカウコへは肩越しの応答。ビャルネの
折れ砕けた腕を握り、意識を保たせようとする。]
…レイヨ、ビャルネに―― 否、
[車椅子を軋ませる青年の名を呼びかけ…やめる。
彼の家、卓へ薬草扱うらしき設えは見ていたけれど]
ウルスラ先生、居るかね?
気つけ薬か何かを――――
あ、ッ…
姉様?どうかなさった?
[ぐねりと動く蛇と、視線巡らす人へ不思議そうに問いかける。心なしか、期待に満ちた声色。。
視線で誘われればその答えもまた瞳の奥で。
足跡は、蛇の女と連れ添うようにもう一つ]
…あら、まぁ……
[鮮血は、望んだままの赤、紅、朱──…。
白い髪にはとてもお似合いだと、口元は緩く紡ぎ。止めに入るトゥーリッキには聊か恨みがましい視線も向ける]
私が赤好きと言ったから?見せてくだすったの?
[来いと誘うた蛇の瞳に問いかける。とてもとても嬉しそう。共にビャルネの傍にそろりと足を偲ばせると、つい、と指を這わせて赤を舐めやる]
彼にも言ったのよ。赤が好きって。覚えててくれたのは、嬉しいわ。
[ビャルネの喉に白刃が振り下りる瞬間も、伏せ目がちの瞳は緩く柔らかく見つめます]
[背に受けた、イェンニの恨みがましい視線には
気付かずも―――確信と必要を持って長引かせた
断末魔とその赤は不満をそのままにさせたろうか。
もはや骸となったビャルネに詫びて触れるレイヨの
横顔をしばらく眺めていて…やがて吐息を漏らし]
戻ることが必要なら…そうするといい。
[運ぶ手助けに関しては、黙して被りを振る。
必要なのはこの場で雪を掘って埋める人手であり、
レイヨがその作業に適しているとは思えずに――]
[テント内にも漂う険呑な雰囲気。
嫌な予感がした。
テントを出て、見つけたもの。
それは――]
っ、まさか
[雪の白と血の赤のコントラスト。
熱を持っていた肉体が、冷えた肉塊に変わる。
獣が「そうなる」のは何度も見ているが――]
ビャルネが狼遣いとでも?
……。
このまま、ここにおいていくわけにはいかないの?狼が食べてくれるわよ?
ドロテア様の変わりになりましょうに。
[去るカウコには、小さく嬉しそうに「赤をありがとう」と。レイヨにもやはり視線だけで見送りを]
ビャルネ様から姉様の潔白を聞いたのよ。
それをあの人が殺したのね。…不思議。カウコは、それを知ってたのかしら。ビャルネが、彼に言ったのかしら。
それとも、たまたまかしら。
…どうだろうかな。
機会をお前から奪わずにいたかったのは、確かだ。
[ビャルネの肺から抜けきらぬあたたかい空気が、
かぱ、ぐぱ、とまだ喉の刺創を泡立たせている。
しばらく見詰めていたが…イェンニを振り返り、]
彼――… カウコかね。それともビャルネ?
[尋ねながら、両方だろうかとも含む。
妹分の後ろへ獣医たるウルスラを見つけて眉を下げ]
…先生。
ビャルネは妙なことを言ってはいたが――
カウコによ。ビャルネにも言ったかしら?
でも、どうでもいいことだわ。
[ちろり、ちろり。まだ温い血は口に優しい。ウルスラの姿にもにっこりと]
ごきげんよう。カウコがやったのよ。
どうしてかしらね。どうやって、狼使いと思ったのかしらね。
[トゥーリッキに声をかけられる。
相棒は襟巻の如く蛇遣いの首に
巻きついているだろうか]
妙なこと……ビャルネから聞いたので
私が知ってるのはひとつだけ、だけどね。
[狼遣いに協力する者の存在。
それだけだ。
イェンニの挨拶には緊迫した空気の中で
毒気を抜かれたながらも]
この状態で、わざわざ愉しみで殺す奴がいるとは
思えないけどねえ。
自分の命さえ危うい、こんな時にさ。
――うむ。
イェンニにそう告げたと…あたしもあの後聞いた。
[潔白。まじないかどうかも知れぬそれ。
イェンニの言をついで、ウルスラへも伝える。
"あの後"、は彼女と自身、
そしてビャルネの三人で話した後を示していて]
どう思う、先生。
あまり口にせぬ方がよいかね…
或いはまじない師が死んだかもしれん、とは。
…村の中まで狼がうろつきだすと、
家から出られず孤立する者が出てしまうぞ。
ドロテアの代わり――と言ってやるな。
長老さまも仰っていたろう、代わりはいないと。
[老爺の唯一の慰めだろう言を思い起こしながら、
イェンニを窘める。血を舐める所作は窘めぬけれど]
…カウコに、か。
ビャルネが殺されたのは…あたしの所為だろうな。
[胸裡へ確かめるよう、零す。ビャルネの杖を持ち]
あたしはカウコへ、あたしを潔白だと
言ってくれてる者が居るとは言ったが…
ビャルネがそうだとは、教えなかったんだ。
[偽りなき感慨のままに、白蛇に触れつぶやく。
冷える屋外――それはまた動かなくなっている。]
まじない師の可能性を見ていたら、
カウコは白髪頭を殺さなかったかもしれん。
ってことは…イェンニは「白」ってことかい。
[確認するように、もう一度尋ねる]
「黒」であれば、言う必要もあるだろうけど。
「白」だっていうなら無闇に言いふらさない方が
いいかもしれないね。
…まじない師については、
ある意味もうバレてるわけだしねえ。
ビャルネも容疑者である以上、
まじない師の可能性もあるわけでね。
ちょっと頭があるなら、誰でも気づくさ。
[可能性があるからこそ、ビャルネも生かされていたのだから]
ビャルネ様、何を仰っていたの?
[妙なこと、というウルスラへ]
……。何もかも、カウコに聞けば良いことだわ。こうも堂々と殺したのなら、申し開きする用意がある筈よ?それが怪しければ、彼を殺ればいいことよ。
あぁ、その時は是非私に。
その"ひとつだけ"は…ああ。
一緒に聞いた。
[狼使いに味方する者、その一人の存在。
蛇遣いが、ウルスラと共有すると知る情報。]
あれについては、口外してないがね。
恐怖にかられた皆が、自分こそその「一人」だと
思い込んでしまうときが…恐ろしいからな。
[詳細は口に出さぬまま、ウルスラの瞳へ視線あて
彼女の見解が知りたいと求める態で目配せをした。]
[ウルスラの言を耳にとめ、ほんの僅か、顔を顰めて]
では。カウコがビャルネ様を殺したのは「呪い師の可能性を見ていない」ということ?
それは本人が呪い師でないとわからないわね。それとも、決定的な証拠を掴んだか。
…どうでもいいわ。考えるより、聞いたほうがはやそうですもの。
で、ビャルネ様どうしますの?
[先生?姉様?と。自分はまだ埋めるのはつまらないと思いつつ。唇は寒空の下に不似合いなほど赤く染まり]
否、…
ビャルネが言っていた「白」は
あたしだな。――"トゥーリッキ"。
[ウルスラの確認へは、つと自らを示し訂正を。
この地に住まいする折に、長老が伝承から取って
名付けした――――蛇使いのこの地での呼び名。]
それをイェンニが聞いたのさ。
他に聞いたやつがいるかどうかは…わからん。
…そう、言いふらせないからな。
だが先刻… ビャルネに他を尋ねようとして
促したから、他へ勘づかれてる可能性もある。
…なんでだい?
憎んでいるのか?カウコのことを。
[尋ねる呟きは、イェンニの最後の言葉に反応したもの。
そこだけが変な色彩を持って耳に届いて
他の言葉には反応できなかった]
別に?疑わしい人は殺していいのでしょう?カウコに怪しい所があるなら…
[勿論のことでしょう?さも当たり前のように平然と瞳で語る。そして]
…私の聞いたことには答えてくれないのね。二人で内緒のお話。いいもの。眠くなってしまうから、何も聞こえないわ。どうぞ、ごゆっくり?ビャルネ様もお任せするわ。
狼の餌にしても、いいと思うけどね。
[長い髪は翻る。ビャルネの言う「妙なこと」は二人だけの間でわかるらしきもの。なら、邪魔にならぬうちに退散しようと*]
生きる人を供犠にするのは悲しむのに、
死んだ人を食わせるのも嫌だなんて。
わがままね、人というのは。
[蛇遣いに促され、端的に意見を述べる]
私は、逆に言ってしまった方がいいと思うんだけどね。
どうにかする必要は――ないのかもしれないけど
[もし、どうにかする必要があるなら
長老がその旨を述べているに違いないから]
それでも注意すべき人間なのに変わりはないからね。
カウコは長老さまの元へ向かったのだろう。
質す場は、あるだろうよ。
[見遣ると紅い、イェンニのくちびる――
蛇遣いは、ぐず、と鼻先に音を立てる。]
…寒いな。脱ぐと寒いだろうな。
[然し声に迷いもなくて、纏う毛皮に手をかける。]
白髪頭の、むくろは――
こればっかりは、男手に期待というやつだ。
そう考えた方が自然だろうね。
ただ、まじない師ってのは
そんなたくさんいるものなのかねえ?
まじない師の可能性、ねえ……
カウコがどこまで掴んでいたのか知らない以上
何とも言えないけどね。
[しかし、気がつけば漂泊の女は。
踵を返して去っていったか。
疑わしきは――と語る彼女の瞳。
何か胸騒ぎを覚えずにはいられなかった]
[妹分の言を掬って問いかけるウルスラを見遣り、
その遣り取りが終わるのを待つ。脱いだ毛皮を
ビャルネの身体へと詮無くも風に晒されぬようかけ]
ん… 先生がそう思うなら、
他へ話すに止め立ても出来んか。
――わかった。
[何がわかったとも添えず、ふると身震いをした。]
要するに
まじない師のビャルネがトゥーリッキを「白」と言った、
ってことか。
それをイェンニの他に誰か聞いたかも知れないと。
…なるほどねえ。
[それなりに事情を理解した体で]
狼遣いに狙われたか、それとも…ってところか。
誰か他に聞いていたとしたら、確かに怪しくはあるだろうね。
今はビャルネをどうするか、だね。
トゥーリッキも暖かい格好してきなよ。
今、男を呼んでくるから。
[そういうと、その場を*離れる*
通りがかった誰かには杖つく書士の死と
その亡骸のありかを伝えて
それをどうするべきかと尋ねる]
[不穏にも拗ねめいた言を残して去っていく妹分。
手を焼く態で見送ったあと、蛇遣いも歩を巡らせる]
狼遣いに、味方する者がいたとして――
先生、それはイェンニではないと思うと
詮無いがあたしから言わせておいてくれ。
あんなだが、理は通るから
ビャルネもあたしのことをあれに話したのだろうし。
[白蛇の頭を片手で抱え込みながら、
ウルスラの瞳へどこか頼み込む面持ちで口にした。]
…ああ。
先生に話せて――少しばかり安心したよ。
はっきりしているのにはっきりしないことを
胸裡へ持って置くのはどうにも落ち着かんのだ。
[男たちを呼びに行くウルスラへ礼を添えて、
自らも防寒着の換えを取りに住まいへ戻りゆく。
まだその場へマティアスが残って居たなら――]
… 何故、ひとりで見に行こうとした?
[声をかける。後で訊かせろと含める態で*去り*]
[長老のテントに最初に戻ってきたのは、カウコだっただろうか。誰であれ、何があったのかと、問うような視線を向けただろう。説明がなければ、改めて言葉で問い]
……そうか。
[ビャルネの死について聞いたなら、浅く頷いて]
……
[現場の確認だけを済ませると、質問を重ねるよりも先に、長老に一礼をしてから、テントを出た]
……嗚呼。
[微々たるものから、徐々に濃く感じられるものになってくる、血の臭い。現場に辿り着くと、溜息を吐いた。白い雪を染める赤。それを零している、ビャルネの体。その場に誰かがいたなら、視線だけを一度向けて。既に生気が失われた体に、ゆっくりと近付き]
……、
[傍に落ちているナイフを一瞥してから、死した姿を無言で見下ろした。目に、焼き付けるように]
[男の胸のうちには、生前のビャルネの姿、彼を殺したというカウコの姿、――まじないが出来ると言っていたレイヨの姿。そのようなものが、浮かんだだろうか]
……血を以て。
悲しきかな。しかし。……果たせるかな。
[呟き、瞑目する。やがて戻ってくる姿があれば]
……埋めるか運ぶか、するのならば。
手伝おう。
[そう申し出るだろう。伝達はその後でも良い、とは、言外に。他に進んでやろうとする者がいれば、あえて押し切りもしないだろうが。
男の紅い衣は――
血に濡れたとしても、目立たない**]
[長老のテントへと向かう時、すれ違いざまに聴いたイェンニの声に息を吐くと、視線すら向けずに通過して。
その後現場で話されていることは知らず、テントに着いた時に見えたアルマウェルが問うような視線を向けると、長老へと併せて]
いましがた、ビャルネを殺してきた。
指示、待てなくて――すいません。
[右手と左手には見分けはつかぬだろうも自身とビャルネの血で染まり、喉を刺した時の返り血はまた、自身に赤を散らして。
何か問われることがあったなら、"音"と――書簡と彼の態度からまじない師ではないと思ったことだけ*告げる*]
………気がかりですから。
[一度は名を呼ばわられた相手の言葉に多少の間を置いて返し、誰と添えずもトゥーリッキへ答える。キィキィキィキィ…―――ウルスラやイェンニや見えぬマティアスにも目礼を置き、カウコの後を追うように惨劇の場を離れた]
…………、…―――
どうして彼だったんですか?
[音とカウコから返る答えをなぞり、曇る眼鏡をはずしつるに歯を立てる。彼の腕から血が伝っていたとしても、腕を庇わなければビャルネのものに見えるだろう。
アルマウェルがテントを出る背を見て長老に向き直り、すぐに戻ると添え眼鏡をかけ直し、長老のテントを出る。テントを出て向かった火のない自身の小屋は既に外と同じに冷たく、指の跡がついた容器に手を伸ばした]
…………、…―――
起きれるかな…
[呟き容器の蓋をあけると中には小さな丸薬らしきものがいくつか、悴む手が一粒を摘み上げる。目線に持ち上げ、死の淵へおりるほどに深い眠りをもたらす丸薬を見て、眼差しを細めた]
…ビャルネ。
[亡き人の名を紡いだ舌に丸薬を乗せ、呑む。彼の額に触れた手を自らの額に触れ―――カクリと力を失い項垂れた]
―――…、………
…………ッ
[止まりかけた呼吸が再開するのに咳き込み、見開いた瞳。肩で息をして何度か瞬くと、生理的なものか涙がぱたぱた頬を伝った]
彼は…―――違う…
[項垂れて呼吸も整わぬままに掠れた声が呟き、袖口で頬を拭う。丸薬の入る容器を棚に戻そうと掴んで、握り締めた]
………伝えないと。
…運ぶべきか?
それとも…――?
[随分長い時間、ビャルネの元に居て。
体覆う鳥肌をざらりと撫でた後、男はそのまま長老のテントへと向かい、足を踏みだした。
生贄の代りとも
運ぶが難儀ともくちにせず]
[キィキィキィキィ…―――血に濡れずとも紅いアルマウェルの姿は、ビャルネの遺体の傍にあるだろうか。あるいは伝達に向かう道中でいきあうか、傍へ向かい彼に目礼を置く]
………彼は狼使いではありません。
みんなに報せて下さい。
貴方の身が危険にならないように…
必要なら僕の名を出しても構いません。
カウコには―――僕が伝えます。
誰とも知れぬ相手の言葉では…
[言葉を切り続けず、目礼を置き場を辞す。キィキィキィキィ―――長老のテントへ向かう途中、マティアスの姿も見えるだろうか]
…………
…見えないと聞こえたりするんですか。
僕は気づけませんでした。
[先にひとりテントを出た折のマティアスの事を指摘するらしき口振りで、彼がテントに戻るなら入り口で待つ間もあるか。彼の向こうに遠く遺体が見えたなら、眼鏡の奥の眼差しを細め―――伏せた]
[テントに戻る際、レイヨの言葉に、頷いた。
足元 さくりと踏む雪は骨を伝わせて音を聞く]
…見えぬ分、他が磨がれるのだろうかな――?
[彼の膝掛けは手にしたまま。
気づけない、には感想を渡す事も無く]
そうなのかも知れません。
僕は先に戻りましたが他の人たちは…
[言外には遺体の行く先も問うらしき様子で、膝掛けを手にすれど長く外にあったらしきマティアスをテントへと促す。テントに見える顔はあるかと中を覗き、誰かの姿が見えれば目礼。
返り血を浴びたカウコの姿を見ると、震える手を握りこんだ。キィキィキィキィ…―――すみませんと周囲に断りカウコの傍へ寄り、俯きそうになるのを堪え彼を見上げる]
………ビャルネは狼使いではありませんでした。
[他の誰でもなく自らの言葉であると同時に己をまじない師と察するに足るであろう言葉を、彼にだけ届くくらい小さな声で囁く。キィキィ…―――カウコの言葉があれば幾らか会話して、目礼を添えると*テントの隅へ*]
[他に誰か居たか、自身がこの件に関して詫びたのは、長老の指示を待たなかったことと、勝手に長老宛の手紙を読んだことだけ。全てが長老宛。]
後悔は、してない――どうせいつか起こることだから。
[ぽたり、左手から垂れるひとしずく。
レイヨが近づいて来るのもただ気配だけで感じて、告げられた言葉に少しの思案――]
そう――…… 間違えたみたいだな。
[抑揚のない声で落とした言葉はソレ。
傍まで来たレイヨにしか聞こえないくらい小さな声。]
でも、ずっと気になってたから――
終わらない限り、いずれ殺してた、な。
[そこで漸く視線をおろし、レイヨを見つめて]
悪いな、厭な報告させちまって……
お前の立場も、今回の結果も……
[結果を告げるために、まじない師であることを明かさせたことへの詫び。それが嘘の可能性を今は想わない。]
後で、行ってもいいか?
レイヨが、怖くなければ――……。
[赦しを得られなければきっと向かうつもりもなく。
いずれにしても、血を纏ったままではどこへも行かない。]
―― 自身の住まい ――
…師というものを、初めて持った気がする。
[あたたかな部屋。替えの防寒着の袖へ腕を
通しながら、蛇遣いは感慨のままにつぶやく。]
生ける師と、死せる師と。
あたしは恵まれているらしい。
[あたたかくとも、吐息は室内でもやはり白い。
結い髪の下へ手の甲を差し込んで、毛皮の襟元へ
挟まれた髪束をばらりと広げ――背へと垂らす。]
いまは… 死せる師と共にゆこうか。
[蛇遣いが惨劇の場へ留まっていたアルマウェルへ
声をかけたのは――レイヨが>>73場へ戻る前のこと]
…そのいろ。
お前が選んで身につけているのかね、赤マント。
それとも――やはり役目柄というやつなのかな。
[ビャルネを埋めるにしても運ぶにしても、相手は
作業中だろう。蛇遣いは、首元の大蛇を抱きながら
アルマウェルの手元へ視線をあてて低く声を零す。]
ん… なんだな。
見つけてほしそうにみえるんだ。それだけさ。
[右手には、奇妙な球体を螺旋状に下げた飾り杖。
ビャルネの持ちものだったそれを――佇む蛇遣いは
地へつかず、前後の間合いを取る態で携えている。]
このあと、お前は役目があるんだろうがさ。
あたしにはまじない師が誰だかということは
知らせてくれるなよ、頼むから。
――探すべきを間違えたくはない。
あとは、そうだな…
あたしがカウコのようなことを
やらかしそうになったら、止めてくれ。
[知己の名を出す折は、苦い面持ち。横目に見遣り]
止めてくれなくて、後でやらかしたと判ったら…
次はお前へ矛先を向けるかもな。
[―――いつか起こる―――そんな言葉を皮切りに語るカウコを前に、酷く苦い丸薬を舌に乗せた時すらしなかった苦い面持ち。向けられる視線に面持ちをあらため、小さく首を振る]
…臆病な僕に出来る事は少ないです。
[カウコのように誰かを手にかける勇気の無かった事を言外に零し、彼へ伝える義務への想いの片鱗を語る。真偽を口にせぬ彼を見て、眼鏡の奥の眼差しを細めた]
…信じらられる相手がわからずみんなこわいです。
でも叶うなら後で聞かせて下さい。
もし本当に後悔「出来ない」のでなければ…
―――人を殺して後悔のない理由を。
[そのあとは、暫くアルマウェルの作業を見守る。
先刻己がかけた毛皮へ、ビャルネの血染みが浮く…]
…そうして、容易に己を出せぬ使者は。
この村が喰い尽くされてしまったなら
…どこへその知らせを運ぶつもりなのだかな…
[独り言めく呟き。死せる者はもう血を流さない。
生ける者はしろい呼気を風に流して、やがて離れ*]
………折には温かいお茶を煎れます。
[お待ちしてますと言う代わりに肯定を示す言葉を囁き、口にするのは来訪者へいつも出す夏の間に摘んだ森の奥の蒼い木の若芽の茶の事。カウコの腕から伝い落ちた血へ視線を落として、血は乾かぬのだろうかと彼の腕と彼を見る間]
すみません…―――
[断りなのか謝罪なのか囁き、厭われなければ血を落とした彼の手に触れ、血に濡れるのも厭わず握っただろう。触れるとも触れずとも落ちる血に濡れた手を引き、握りこんで軋みそうな所作で小さく頭を下げた]
――さっさと行動してしまう方がおかしいだけだ。
だから臆病とか、寄せ……。
[慰めではない。けれど今はそれしか言わない。
問いは今はゆるく頷いて、来訪の赦しを得たなら一度テントから出ようかと想ったところ掴まれた腕に]
―――っ、……、
……先に、血ぃ、何とかしてくるわ――……
[小さく息を飲む。
声は抑えても掴んだ当人にはビャルネの血でないことはわかっただろうけれど。]
何も、言うな、後で行くから――
[小さな声で添え置き、テントから出て行く]
[――蛇遣いは、長老のテントを訪ねなかった。
惨劇の場へ居合わせたか居合わせなかったか、
記憶に定かでなかったヘイノとラウリを訪ね…
それぞれへ、僅かばかりの差し入れを届けた。
ストーブの上へかけっぱなしだった芋と鱒の塩煮は
食べ頃より少し煮詰まっていて…まあ食えるだろと
常から食に関して大雑把な蛇遣いは言い訳めかす。]
…後で、アルマウェルが来ると思う。
[別れ際に添える意味合いは、それぞれが知る――]
……目立った方がやり易い事が多い、というのはある。
しかし、そうだな、……
[トゥーリッキに返す言葉は、是とも否とも言い切らない、確かな理由は語らないもので。近くから調達してきたスコップで雪を掘りながら。その手に持たれた飾り杖を一瞥し]
知らせるなと言うなら、知らせるまい。
[一つ目の頼みには、すぐに応え]
……嗚呼。
そうしようとしたならば、止めよう。
居合わせられれば、の話だが。
[二つ目にはほんの僅かな間を置いて応える。矛先を向けるかもしれない、などと言われても、顔色は変えず]
……
[スコップの縁に足をかけ、半ば凍ったような雪を掘り進めていく。トゥーリッキの呟きは聞こえたか否か。どちらにしても、淡々と作業に勤しんで。
トゥーリッキが去った後、現れたレイヨには]
……わかった。
その事も共に、伝えに行こう。
[一旦手を止めてその姿を見る。告げられた内容には目を細めてから、頷き、伝達の旨を了承した。
それからまた、作業に戻り――そのうちにビャルネから少々離れた場所に出来上がる、人間が一人入る程度の穴。ビャルネの体を抱え上げると、穴の中にそっと横たえた。その時の男の瞳は、どこか寂しげでも、同時に優しげでもあったか。寒さで既に固まりかけたビャルネの手と手を、胸の上で組み合わせるようにして]
― 自宅 ―
[ビャルネの血がついた上着は床に脱ぎ捨てたまま、包帯を解き、開いた左腕の傷にはアルコールをかけるだけの処置。
自分がつけたものより少し大きくなっているのには苦笑。]
詫びは入れない――今はまだ。
[止まりきらない血はまた少し包帯に染みを作るけど、巻き直せば滴るほどでもない。]
もつんかね、この調子で次にいって。
[時間は限られている――マティアスに使った呪はそろそろ効力を失う頃。]
尽きる前には、居ねぇかな、俺は――。
[疑われて当然の行動だ、と思い返しつつ、着替えて一度だけ大きく息を吐いてから外へ出た。]
[携える書士の杖は、水平に手にして在れば
しゃらとも音を立てることはない。縋らぬ杖。]
"49"、…まだ戻らんかね。
[――やがて訪ねる、マティアスの小屋。
長老のテントへ向かうと別れたきりの彼は不在か、
戸口の厚い引き布越しに、 あん と声がする。]
…
そうだな。奴ではない。
だが腹が減っているというわけか。了解した。
[別段声に出す返答する必要もないことを呟いて、
蛇遣いはマティアスの留守宅へと躊躇わず入りゆく*]
[瞼が開いていたなら、それも閉じさせてから。スコップで雪をかけ、ビャルネの体を埋めていく。傍にあった血痕は早くも薄れかけていただろうか。穴を埋め終えると、その上に小さくビャルネの名を記した。程無くして消えるだろう、仮初めの墓碑。微かに赤が混じった、指による痕。石を一つ、横に置いておき]
……嗚呼。
[コートに幾らか付いた血は、やはり目立たず、多少の臭いを纏うばかりで。斑に赤で染まった白い手袋のみを変えに、小さな己の小屋へと戻った。その後、男は改めて任に向かう。ビャルネの死を、彼が無実だと言う者がいるという事を、伝達する任に**]
…――――
[怪我をしているらしきカウコは何も言うなと言うから、彼の言葉を踏み躙ってまで語れる言葉を持たない。テントを去るならば後姿を気遣わしげに見送り、テントに残る者と長老を見回した]
…狼を嗾ける者があるなら―――…
[届けるべきと判断した報せを伝えたアルマウェルは今頃、ビャルネの遺体を埋めているのだろうか。供犠の娘とて彼らの意思が狼に喰わせたのかも知れぬと、長老の言葉に言外に添えるのはそんな想い。
他に交わす言葉があれば少しは留まり、暫くすれば目礼を置き場を辞す事を示す。マティアスの姿があれば去り際に近寄り、彼の顔を見上げる]
マティアス…―――
[男の家の扉に鍵はかかっていない。
トゥーリッキが扉をあければ、飛び出す子犬の尾はちぎれんばかりに振られている*]
見えぬ分も聞こえるなら…
貴方におおかみの声はどう響くんでしょうか。
おおかみは喰らった者の声を…―――
[聞くんでしょうかと、零す声は語尾をあげぬ囁きに留まり、場を辞すのは気配が伝えようか。キィキィキィキィ…―――長老のテントを出ると曇る眼鏡を袖口で拭い、石のひとつ置かれただけの墓を見た]
きこえる…
こえが、きこえる…
[狼の遠吠えはなくとも、墓の前で明けぬ夜を仰ぎ零れ落ちる掠れた声。キィキィキィキィ…―――車椅子に座す求道者は、カウコを迎えるべく自らの小屋へ向かう*]
―― マティアスの留守宅 ――
[世話を任された橇犬の仔、その毛並みのいろを
マティアスが知っているか否か蛇遣いは知らない。
飛び出してきた毛玉をちらと見遣ると、そのまま
足元へ纏いつかせてマティアスの「家」へ入った。]
…寒いな。
[呟く蛇遣いの足元で犬がしたん、したんと跳ねる。
媚び強請るすべは、生をうけて間もない者の本能。
浮かべる嫌悪もないままに、蛇遣いは燐寸を探す。]
[外へ出て、誰かとすれ違うことはあったか。
足はレイヨの家がある方へと向いて。
途中少しだけ、立ち止まって視線を投げた先には、見えずともビャルネを殺した現場の方向。
帽子をぐっと抑えて足を目的地へと進めて。]
――カウコだ。
戻ってるか?
[扉を叩き一応問いはすれ、中に灯りが点っているのならわかっていることのはず。]
…っ、 熱…
[ ――じゅっ、
とちいさな音がして、蛇遣いは低く声を立てる。
火傷した右の小指を反射的に庇うその様子にか、
あんあん と鳴いていた犬は耳を立てて立ち尽くし]
なに、…大事ない。
…それよりも、部屋があたたまるのと
お前の同居人が戻るのとどちらが先かね。
[小さな火傷を詮無く己で舐めながら腰を下ろす。]
[レイヨが、カウコに何か囁く気配を聞いたけれど、その声は小さく男が聞きとる事は出来なかった。
ただ、公に出来ぬ事がふたりに在る。
それだけを胸裏に落とし、テントを出る]
…――まだ、におう…
[温度ある臭い。
男は鼻をひくつかせてから、自分の小屋へと向けて歩を進めた。
感じる、別な気配に眉を僅かに寄せて]
[さて、場所はどこだったか。
長老のテントに戻ることはなく。
さて、どうしてくれようかと思案を巡らす最中に。
目に留めやる赤は血ではなく。この雪に映える赤い衣。伏せ目を緩くゆがませながら]
アルマウェル。ごきげんよう?
先ほどはビャルネ様をどうにかなさって?
姉様やウルスラでは重そうでしたものね。
[埋めて差し上げたの?と言外に。ビャルネの件を仄めかす]
カウコ、どうしてあんなことしたのかしらね。貴方、あれをどうみていらっしゃる?
[胡座の膝上へ、ぽんと人懐こく乗ってくる仔犬を、
蛇遣いは撫でない。右手を腿へ軽く載せて無視する。
しばらく好きに嗅ぎ回らせて舐めさせて、ストーブに
柔い火が回るのを眺め――何をするでもなく寛ぐ。]
……
[そのうちに仔犬が最前の火傷を舐めても…儘に。]
[ぴと、][ぺろり]
[心配げな舌使いが、懐こい円らな瞳が、生焼けの
人肉の味を知りゆく熱を帯びるに時は…長くない。]
[部屋を温める焔がそのまま明かりの役割を果たす朽ちかけた小屋に、来訪者の問う声が届く。彼の到着を待ち部屋を温めながら焔を見ていた車椅子に座す求道者は、顔をあげ扉を見た]
はい。
戻らずとも開いてはいますけど。
[キィ…―――促す声はすれど迎え扉を開く事はせず、カウコの来訪にあわせて帰宅して初めての茶を煎れ始める。扉に向ける背は普段と変わらぬ装いなれど、警戒心よりは自らの住まいですら所在無さを漂わせる]
火の傍へどうぞ。
― 自身の小屋 ―
[戸を開ける前から、中に気配を感じる。
眉を中央へ寄せたまま、手を伸ばして内へと姿を見せた]
…――盗るものはないぞ…
[子犬の気配だけではないそこに、
低い声を向けた]
――痛。
こら、噛むのはいかんぞ。
笛が吹けなくなると困る。
[まだ尖らぬ牙を立てた子犬を窘めると、
無邪気そうないきものは我に返るよう。
次いで――戻り来たマティアスの姿に
振り返って あん と高い声を上げた。]
おや、戻ったか。
盗るものは…無いかね?
…無いと思うが…――
[少なくとも金目のものは。
呟いて、背で扉を閉める。
家内は、外ほど杖で慎重に地面を擦らなくても、歩く事が出来る]
…――、茶でも淹れるか…?
――邪魔する。
[扉を開いて、中に入り一拍の間。
火の傍へと促されれば促されるまま。
茶を煎れに向けられた背を眺めやり、かける言葉]
先に、質問に返しておこうか。
[告げて、少し思案する間を置いて]
何もしなければ、長老から指示が出て――
誰かが死んでた、ことが前提か。
[事実、テントへと人が集まったのは沙汰を聞くため。]
長老の指示通りに誰か殺せば、間違っても後悔なしか?
元より、長老の言葉を免罪符にするつもりはなかった。
人一人殺すのに、
「命じられたから仕方なく」とは言いたくない。
[ほどなくすれば茶の香りが漂うだろうか。]
間違いでも、俺は自分でビャルネを疑って殺した。
そして、後悔するくらいなら最初から――しない。
が、答えでいいか? 納得しろとは言わない。
[後悔"出来ない"と同義にとられようと、自分の中では"しない"と定めて動いているから。]
[声をかけられて立ち止まる。イェンニの姿を認め、その話を聞いた。ビャルネの件を仄めかされると]
ビャルネは、埋めてきた。
[そう、簡単に答え]
理を考えれば、恐らく。
思うところがあったのだろう。
疑心であれ、保身であれ。
疑心も保身が含有するものではあるが。
[カウコの事に話が及ぶと、ぽつりと返してから]
…ふぅん。
ま、つまらないわね。埋めてしまったの。
狼に食べさせたらまた時間稼ぎができるとか思う人、いなかったの?
[薄い唇にそっと当てる指先は手袋をせずに僅か赤く]
ビャルネ様が無実…と。成程ね。
何方からそれを?…あぁ「保身のために」いえないでしょうけれど。
疑惑と真実が交わるのみ、と。
そこには秘匿も、あるのだわね。
無ければ、そんな険しい面持ちで
帰ってくるものではないよ。これが怯える。
[これとは相手ゆえに指しもせず仔犬を示して、
ぐずと鼻先へいつもの音を立てる。怯える、と
口にするほどには当の仔犬は怯えもせず―――
ぱふりとマティアスの脛へと両の前足をつく様子]
否、こちらの用件で上がり込んだのだ。
あたしがやろう。
[慣れた室内を進む相手に声をかけ立ち上がる。]
先刻の問いは覚えているかね、"49"。
…そうか――有難う。
[言って、立ち上がる相手に指で水場を差し、自身はストーブの近くへと。
あん と 子犬が鳴く]
…勿論だ。
答えもこう、単純なものだ――
…――何か合った時の為、
機転を利かせろと言ったのは…
――お前だと、記憶している…。
[低い声 顔を蛇遣いへと向け
口元に浮かべるのは、微かな笑み]
[コトリ。カウコに茶を渡そうとする手は、もう彼に触れた折に着いた血の色はない。自分の分のカップを両手で包み、彼の言葉に黙し耳を傾けた]
…………ありがとうございます。
ひどい問いだったのにに答えを頂け感謝します。
ただ僕は…
長老が今日も誰かの名を挙げる心算だったなら…
あるいは誰かの手にかかるなら…
僕ではないかと思ってあそこへ赴きました。
でもそれは死ぬ為でなく出来るだけ生きる為です。
[彼の言葉の終わって後に口を開き、不審も信用も過分になれば危険が増すであろう状況で、弁明をして叶う限り人をいかしたいが為とは伝わるか否か。彼の想いとは違えど厭う事はなく、静かに頷いて茶を啜る]
説得が無理ならせめて村を襲う理由を聞きたい。
いかしいきる為の手段と同時に…
誰ともなく話す事しか僕には思いつきませんでしたが。
[コトリ。一本だけ脚の短い机にカップを置き、手を伸ばす先は容器の並ぶ棚。ひとつを手に取り、カウコへ差し出す]
…傷薬です。
化膿止めくらいにはなると思います。
[傷の事を訊ねるよりは、先に置いた問いに答えてくれた彼が来訪を求めた件を聞こうと、温まり湯気にも曇る事のなかった眼鏡の奥の眼差しが促す。彼が狼使いか否かよりは、薬を持つ事を知られる事に怯えるように視線を逸らした]
まぁともかく。ビャルネ様が無実というのなら……さぁて…あのイカレ帽子屋さんから何が聞けるかしら。
えぇ?イカレ帽子屋?どこかの遠い遠い国の御伽噺に出てくる帽子屋さんですって。
保身か、秘匿か。どこで見極めるかは…死後でも十分ではなくて?
死人にくちなしとはいうけどね。
狼らへ受け渡せば、時間稼ぎにはなるだろうが。
出来るものなら、死は二度もたらされるべきではない。
[イェンニの赤みを帯びた指先を見ながら、感情に染まらない声色で告げる。やや緩慢に瞬きをし]
私ではない。それ以上は、言わない。
その者が直接に伝えない限りは。
あるいは、その者が死んでしまわない限りは。
[言えないではなく言わないと。己の意思を含む行動]
彼を殺した貴方がこわいです。
でも疑いで人を殺す貴方は狼使いには見えない。
…装っているだけかも知れませんが。
[訥々と語り、カウコを見上げる。曇らぬ眼鏡をはずせば、彼の姿は滲む―――カリといつもの癖で眼鏡のつるに歯を立て、かけなおした]
[ビャルネの亡骸を見つけ、アルマウェルが
埋葬するのを見届けてから別れたその後]
…やっぱり疑ってた、ってことなんだろうね。
うむ。せいぜい恩に着ろ。
[教えられた水場で壺から水を汲むと、薬缶を
ストーブにかける。蒸気の噴出すだろう注ぎ口を
自分のほうへ向けて置くのは、村で教わった流儀]
…
…
それは、あたしにしか通用せん理由だな。
…それで、自己評価はどうだね。
好い機転だったと思うか?
[半ば呆れの面持ちで、マティアスの口元を見遣る]
問いが酷いんじゃなくて――俺が酷いんだよ。
[言葉はどこか自嘲めくも笑ってはいない。
茶を受け取れば礼を添え、一口含む。
返されるレイヨの声に耳傾け、ゆっくりと、嚥下して。]
……――そういうのを、見てから動くのも、
良かったかもしれんな。
[どこまでを理解してか、そう呟いて。
それでも早まったとは想わない様子ではあり。]
お前が、まじない師なら――死んだらダメだ。
俺のとは、"性質"が違う。
生きる者は差し出すくせに。
綺麗言ばかり。いやぁね。
やはり保身ときますか。
いいわ。死で無実を知れるなら、それを繰り返せばいいだけよ。
ありがとう。ではまたね。
皆にそれを伝えるのでしょう?
…むしろ「理由」が必要な事だと、
思わなかったな――?
[歪めた口元を戻し、素直にまっすぐな言葉を零す。
蒸気の向こうへ向いた気配に、
頬を僅かに緩めたのは、一瞬]
ただ、気になったから行っただけで…
――正直なところ 効かせる機転も何も…だな…
[差し出される傷薬に瞬き、レイヨを見やる。]
ウルスラにでも言わなきゃないかと想った。
……ありがたく、使わせてもらう。
[しかし傷薬をもらいにいけば怪我の理由を問われると。]
説得と言えば、マティアスが――狼と話せば
狼使いに声が届くかと、俺に聞いたことがあった。
――止めても行きそうだったから、狼だけからは
"守っていた"、――俺の血を以て。
ひとつ、教えてくれた礼だ。
ひとつ、情報かかえとけ。
綺麗事。……違うな。
これはただの私欲だ。
[イェンニの言葉に、表情と声色は変わらずも、返した内容は何らかの心情が過ぎるものだった]
犠牲の可能性を減らすためだ。
嗚呼。力と血を以て、深奥を暴かん。
[続けた言葉は普段と変わらず。確認には頷いて、踵を返す。止められなければそのまま歩き出し]
正直、誰の真偽もわからんし、結局自分しか信じてない。
でも、それで滅びるのは俺らだから。
お前の言葉を最初に信じてみるのも一興だ。
味方同士で殺し合うのも滑稽ではあるけどな。
[お茶をもう一口すすり]
――こういう力だから。
誰かの盾になるのが俺の力だから――
俺が死ぬ代わりに誰かが死なないなら、それでもいい。
だから、迂闊な殺しも一番にやっちまったのかもな。
[そして付け足すように]
……本人の血なら少量で済むから、
守られてくれる気があるなら、
ちっとだけ分けてくれると助かる。
俺の血ばっかでやると、俺が勝手に死にそうだ。
[最後は軽口に似た言葉。]
俺が死んだら、俺は誰かを守れたと想うだけだから
俺が自分を守ることはない。
[守らないのか、守れないのか――真相は本人の*内*]
貴方と僕は違います。
…どちらもひどいのだと思います。
[笑まぬ自嘲の言葉に笑まず答えるかたちは、いつかトゥーリッキに面白いと語った言葉とも似る。早まったとも思わぬ後悔のない様子の彼の言葉―――死んだらダメだ―――俯いてしまわぬように彼を見たまま唇を噛んだ]
…僕がわかるのは死んだ人だけです。
それでもこの力が少しでも役に立つかも知れないと…
彼女を止められませんでした。
[性質と言うカウコの言葉に焔から彼へ視線をあげて、生きる意思のあるのを示すようにぎこちなく軋みそうな所作なれどうなずいた。傷薬を渡した彼の言葉―――ひとつの情報にマティアスにも想いは流れる]
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