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[闇夜の中で、くるくるとコウモリ傘を回す。
仄かにろうそくの灯が揺れるその場所に佇む少女の姿を見とめると、薄く笑みを浮かべた]
こんばんは、アンちゃん。
君が一番乗り?
[傘を閉じると、ボールペンを手に取って用紙の記入を始める]
■氏 名:高原 美之(たかはる よしゆき)
■学 年:2年生
■その他:夜の集まりには参加できる予定だよ。
ところで、これは何の集まりだったっけ?
遅くなってごめんなさい。
……って、まだアンちゃん先輩だけなんですか?
え、あれ?肝試しって今日でいいんですよね?
ですよね。
[制服のスカートの下にはジャージという出で立ちで、わたわたしている]
[目に入った用紙に、ボールペンを走らせた]
■来海 蛍(くるみ けい)
■1年生
■ソフトボール部員募集中です
[書き終えると、プールサイドの小さな黒板にマグネットで用紙を止めた]
[突如響き出した水音に、飛び上がりそうになった]
ぎあぁっ!?
[ぜぇはぁと息を整えて音の方向へ視線を向けると、暗闇の中泳いでいるらしいアンの姿が何となく見て取れた]
ぶつかんないんですか……?
[茫然と、蝋燭が照らす水面を*見つめた*]
うん? これ、書けばいいの?
[黒板に止められている紙に気づいて、誰にともなく尋ねる。けれど答えは期待していなかったし、書いて悪い事はないだろうと、ペンを手に取った]
■直木 裕香(なおき ゆうか)
■三年生
■受験生が何してるのかって? まあ、息抜きよ。
部活には入ってないけれど、これでも元生徒会副会長だし、図書館にはよく行くから、そっちで知ってる人もいるかな。
[几帳面な文字が並ぶ。先に貼られていた用紙の隣に、自分のを添えた]
まだ、全然集まってないみたい?
まあ、待たせて貰おうかな。
[プールサイドの地面に僅かに残る滴を、靴を脱いだ裸足の爪先で掬い上げるようにして伸ばす。この場所特有の塩素の匂いが鼻につん、と来る。視線を、長方形に区切られた空間へと投げた。
ゆらゆら揺らぐ水面は果てなき射干玉の闇のようで、ゆらゆら揺らめく蝋燭の焔を映し出す様は夜空のよう。それも特別、何かが起こりそうな――]
(なぁんて、ね。)
[自分の思考がおかしくなって、或いは、冗談として笑い飛ばしたくて、否、その両方で、くすりと口元に手を当てて、笑った。
やがて足下に広がる薄闇から目を逸らそうとして、ばしゃりと跳ねる水音と生まれる波紋に、*ぎょっと目を瞬かせた*
誰の仕業か知れば、クスクスと笑い出す事だろう]
あ、誰か来たんだね。
[ゆらゆら揺れる水面にろうそくが薄い影を伸ばす]
アンちゃんやっぱり早いなぁ。
[水飛沫を追うように、しゃがみこんだ]
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