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けはっ。
やっぱりおとり捜査には、一般人が適任なんだよ。
ははっ、お姉さんに怒られそう。
ゲンちゃん、どこ?ごめん、目が霞んで、見えない……や。
あれ、言ってなかったかな、アンと僕のこと。まあ、いいか。
僕らの両親はとある会社の社長だった。でもある日、突然死んじゃった。
死因は不明。でも、警察は何もしてくれなかった。科捜研だっけ?ドラマとは全然違ったね。
それで、以前世話になった興信所に頼んで、調べたんだ。そしたらね。
パパとママは、副社長に毒殺された……んだって。調査結果にはそう書いてあったよ。
パパたちの仇……副社長を恨んだよ。でもね。実際に手を下したのは彼じゃない。彼に雇われた殺し屋……。人を殺すのを生業に、お金を稼いでのうのうと暮らしてる。そんな奴等がいるから、頼む人が出てくるんだ。
それでね、アンと僕が依頼したんだ。毒殺請負人を雇って、山荘におびき寄せて奴等を捕まえようって。
パパとママが遺してくれたお金……といっても、ほとんどが取られちゃったけど、それを全額つぎ込んだよ。殺して欲しい人がいるからって。
ある程度特定できた請負人の身内に、出した手紙が数十通。情報屋に手を回して、警察の関係者も呼んでさ。
それでね、ゲンちゃんは……あの。うん。
ほとんど無関係なんだけど。言いにくいな。
アンがね。
一目惚れ、なんだって。それで、死ぬ前に一度お話したかったんだって。
怒った?
ああ、もう迎えに来たのかい、アン。
どうしたの?怒ってる?
そっか、内緒にしといて、って約束だった……っッ。ごめん。
うん。また一緒に暮らそうよ。
パパとママと……アンと。
ああ、アン。そっちにいたんだ。
あはは……ゲンちゃん、怒ってないって。よかった。
でもさ、やっぱりゲンちゃんってボケ担当だと思うんだよ。
ケホケフグ“ョ”“ォ”……ッ
[焼けた喉は異物の侵入を拒む。靄のかかった視界にぼんやりと人の影]
行……って……やっ、置い……かな……で。……りは、もう……
[蝕む毒に舌は痺れ、掠れた言葉は山荘へと吸い込まれていく。
その人物の影が小さくなっていく様子を、ただ見つめていることしかできなかった。
彼に対して抱いた感情の名は……
やがて山荘に来た者は気づくだろうか。そこから外へ向かって点々と地面に残る赤い沁みに]
死亡者、6名。生存者、1名。
そう報じられた事件は一時マスコミの興味を引いたけれど、
左程時もたたぬうち、日々の雑踏の中に埋もれ、人々の記憶から消えていくのだろう。
静まりかえった山荘。人気のないダイニングの机の上。
無造作に残された一通の手紙。
そこには―――
[* Fin *]
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