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ビスマジッルヒッサコブラルディカデロス。
略して「バロン」。
[小さくドアの軋む音だけを立てて、彼は室内へ滑り込む。
さらさらと雪は室内に舞い落ちるが、寒風は最小限に抑えられただろう。]
確か村の名物ってそんな名前だったはずです。
[見慣れない人物によそ行き顔の微笑みを一つ浮かべ、若齢者はコートに積もる雪を手で*払った*]
…………。
[衝撃に耐えられなかった体は、床に手を着く形で崩れ落ちる。
痛みより気恥ずかしさといらつきに、内側に伏せた表情を彼は一瞬だけ歪めたが、何事もなかったかのように立ち上がり、膝に着いた汚れを叩いた。]
あ、グレンさんご無沙汰しております。
いつも野菜を届けていただいてると、実家の両親からも窺っています。
[所作の粗い訪問者はさておき、先客にも不謹慎かと迷ったが、日ごろの礼と並べよそ行きの笑顔を浮かべる。
あわせて、見慣れない長髪の姿にも短い自己紹介を告げ、彼は少し離れた椅子に腰掛ける。]
変な噂も疑いも雪も、早く止んで欲しいですよね。
[ひとりごちると、鞄から本を出し視線を落とす。
ページを捲る音はさらさらと雪のように舞い、意識は嫌疑から物語へと*落ちていく*]
[勢いよく吹く寒風に視線を上げると]
なんだ、具合のいい人が見つかったなら、もう此処にいる必要ないよね。
[訪問者に口許を緩めた彼は、*帰路へ*]
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