情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了
[1] [2] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
[影の側でまだ、誰かが座っているように、揺れる、
座るものの居ない揺り椅子を、
明るい声が掻き消えた場所を、それぞれ眺め]
……、…
ひとつ。
…いまいち…、おれには、
思い出せねえ事があるんですが。
[独り言のように男は呟く。]
[老女が編んでいた小さいセーターだけが、]
あのセーターは…
…ちいさい手にゃ、
…わたらなかったはずだ。
[──ぽつん。と、椅子の上に残っている**。]
おれが、
教会に埋めたんは、
一番最初に、食い殺されたアーヴァインの旦那を。
それから、おちびのお嬢さんに、
仕立て屋の旦那さんに──、
デボラの婆さんに、
…、…書生さんに。
[男は、覚えている死の順をぼそぼそとした声で並べて]
そいで、
[ハーヴェイが、部屋に引き上げていった後を視線で追い]
……、…渡さなくって…、いいんです?
[ぼそり。と声が投げられるのは、
既に彼が部屋に引き上げてより後のこと。]
[ただ、]
… ……、おれには、あんたさんの態度は、
ただの食餌をしただけ。ってな風にゃア、
… いまいち、見えませんけどね……
[ぼそり。と、自分の見解を男は呟き]
[男に聞き取れるのは、陽の声だけで、
くしゃりと握り潰された髪の音は聞こえない。]
……。そうですか。
[いまさら。と、一言で返された答えに、
それ以上は、問いを重ねず]
…まあ、 味ってよりゃァ。
あんたさんが、喰いモンに対して、
どう思ってるンかの方が…、…気にかかりますよ。
[男は、揶揄には乗らず、黙って顎を引く。]
……… 獣ってのは…、
…もともと、笑わねェもんです。
特に。
…おれは…、獣のうちでも…、
臆病モノですから。
[言いながら、
自分が笑ったところを思い出そうとしてみて、]
……
…それで、不都合も、ありませんでしたしね。
[結局。記憶の中に、自分が笑った顔は、思い当たらなかったようで、陰気な男は、ぱちりと瞬いた。]
……
[滑稽。といわれた、魂だけの手へ視線を落とし、
開いて、握ってみて、]
……
"自分を殺した奴らなんて。
不幸な目にあってしまえばいい。"…とまでは…
…… 仰らないんですね。
[男の声は、淡々と、どこか確認を取るようで]
[握って開いた手は──"見よう"と思えば
透けて、その向こうの床を映し出す。]
……
[コーネリアスや、ステラの姿も。]
…滑稽かはわかりませんがね。
おれは、墓守ですンで。
…あんまり、死者にそのへんをうろつかれると、
気持ちの良いもんには感じませんが……
おれは…、あんたとこうして──
もう一度話せているのが、
…狂ったおれひとりの妄想だか、
まぼろしじゃァ、なけりゃ良い、と……
思いますよ……。
…… あんたは、滑稽だ。と、
お思いになりますかね?
[尋ねて、続く言葉に、頷きの代わりだか、
前髪の影の下、瞼をそっと下ろした。]
[1] [2] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了