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ラウリ、か…
…何か、していたら…
――…邪魔、したか…――?
[針葉樹の匂いが冷たい空気の中キンと鼻をつく。
声の主の、洒落た帽子も見る事は出来ない男は、さくり、雪に杖を刺して首を傾けた]
[雪は音を奪い、光源を与える。
それでも時折響く遠吠えに、]
うっさいわね! ひとが考え事してんのに、
少しは気遣おうとか思う気はないのっ?!
今度吼えたら焼肉にしてやるんだからねっ!
[遠吠え以上の大声を出し、制する人影が一つ。
言葉の効力かそれとも他の何かか。
少なくとも森に響く忌々しい獣声はぴたりと止む。]
はぁ、それにしても"あれ"は見つからないわ、
ひととは会えないわ、意図が解んないわ、最悪だわ。
一体狼操って何をしたいのよ、ボンクラ共は…。
[煮詰まったのか。ぼすりと音を立てて地に横たわる。
その横を好奇心の強い小動物が駆け寄り、
無遠慮に服に潜り込んだ。
強い警戒を解かせるものは、身に纏う匂いか
はたまた別の何かか――]
時間稼ぎ、ねえ…。はぁ、合理的かつ的確に、か。
となると、やっぱり目星つけていかなきゃなんだけど…
はぁ…、
[服の中に潜り込んだ客人を招き寄せて手のひらへ。
ぼんやりと見つめては呟きは続く。]
言葉を持たぬこの子達のほうが、
ずっとストレートなのにね。
それは操られている方も同じでしょうけど。
…センセーに聞いてみようかしら? 狼の特性。
アプローチを変えたら少し見えてきそうな気がするのよね。
"こっち"の方では探れないし。
[がばりと起き上がると、森の住人に別れを。
大きなスノーエンジェルを残してひと気のある方へ。]
―自宅へと続く道―
[雪景色の村の中。
じゃらり、じゃらりと杖を鳴らしながら歩く。
イェンニやラウリと分かれてからしばらく村の中をうろつき、村人に声を掛けられれば応えていたために、意外と時間がかかってしまっていた。
この雪の世界になれているとはいえ、冷えから逃げれるわけでもなく。
凍えた体を温めるために、一度自宅へと戻る。]
…いや、邪魔ではない。
むしろ、いろいろと持て余していたところでな……気がついたらこんな所に来てしまった。
[首を傾げる彼に、頷いて答える]
君こそ、何かしている最中ではないのかね?
しかし寒い! 寒すぎるわ!
ひととも話したいけど、何より寒いのよ!
[ずぼずぼと近道をしたのだろう。
積雪に大穴を空けて立ち去った姿に、森付近の人影は見えず。
いや、見てないだけかもしれないが。
そんな視界の先に一つの影。]
――ん? あれって…ビャルネ?
捕獲…できるかしら…?
[寒さに背を丸め、杖を鳴らし歩く姿を発見。
あわよくば暖と会話、二つの利を得ることが出来る。
此処からだと明らかに自宅に戻るより早い。
ごくり。喉が鳴る。
驚かさないように足音を沈めて近付き――]
いや、俺は、別に…
[何も、と。
語尾を飲み込みつつ、相手の様子を窺うように顔を向けた]
…お前は、何か…
――考えて、いる、か…?
[策を、それとも。
また語尾を臓腑に落とし、問いをひとつ置いた]
―自宅前―
[じゃらり、じゃらり、杖を鳴らしながら歩く。
雪を踏みしめる足音は聞こえず。
背後から近づいてくる人影には気づかないまま、自宅にたどり着いてほっと息をひとつつき。]
――やれ、さむいのぅ……
[ぽつりと呟きながら扉に手をかける。]
よっしゃぁ! 暖ゲットっ!!
おやっさん寒いから!
もたもたしない! 早く入って火をつけて!!
[扉に手をかけた瞬間を見計らって、
両手をぶんぶん振りながら背後から急かすように声をかけた。]
何を考えるべきかを考えている。
……答えになっていないな。
[肩をすくめて、笑う。
語尾を飲み込んだ相手の様子には、特に頓着する様子を見せずに]
三人、対抗するまじないを扱える者がいると、長老は言ったな。
力を、うまく動かし利用できなければ――狼を操る者も、つまりはまじないを扱うのだろう。
[自身に言い聞かせるように、呟き始める]
人間の腕だけでは、あの大群には勝てんよ。
[その言葉だけは、妙に確信じみていた]
―自宅前→自宅―
[不意に背後から掛けられる声に驚いたように振り向き。
見えた相手にやれやれと肩をすくめた。]
お主……まぁよいわ……
[せかす様子に僅かに苦笑を浮かべ。
小屋の中へと足を踏み入れ、入り口で雪を落としてから、暖炉に入っていた炎を更に大きくする。
火が消えてなかった小屋の中は寒さで凍えていた体には暖かく感じられて。
暖炉にかけていた薬缶に雪を足して湯を沸かしなおした。]
そこらに適当に座るといい。
……お主、何をしておったんじゃ……雪だらけじゃないかのぅ……
[改めて目にした相手が、スノーエンジェルを作っていたとは知らぬまま、雪まみれなのを呆れたように見やった。]
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