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人の味を覚えてしまったんですね。
[答えぬマティアスへなのだか訥々と零し、胸元から容器に入った丸薬を取り出すのは、先に車椅子の車輪に巻き込まれ開いた傷口から血の滲む指。身を乗り出し子犬の鼻先に差し出して血の臭いに寄り来る紅い鼻先、牙を立てられるのも構わず狭い顎を押し開き、喉奥へ丸薬を押し込んだ。
人であれ目覚める事の難しい薬は、子犬を二度と目覚められぬ深い眠りへ誘う。子犬ながらも獰猛だった唸り声は弱り、自らが喰らった飼い主たる男の傍でぱたりと動かなくなる前に、くうんとひとつないた]
傷の手当を…
[傷を負うイェンニは動ける様子だが、アルマウェルや自分の存在をどう認識しているのか。彼女の浮かべる感情は複雑で、極度の興奮状態ようでも酷く落ち着いているようにも、恍惚としているようにも見えた。
マティアスが息を引き取ったのは、子犬が眠るのとどちらが先だったか、車椅子に座す求道者は彼の死を覗かない。彼女を探すと言っていたトゥーリッキの姿はなく、いつしか彼女の姿もふらりと*消えているだろう*]
―― 回想/女たちの、秋の仕事 ――
[冬を越したトナカイは、殖える仔の数を見極めて
春に狩り集め、屠殺する。夏の間、湿った涼風に晒し
生干しにした毛皮を秋になめす作業は大切な仕事。]
…口と手が、同時に且つ至極滑らかに動くのは
お前の特技だがそれでは力が入らない、イェンニ。
[水分の程よく抜けた毛皮の裏を、ナイフ状の道具で
削いでいく。ジジッ、ジジッと皮から固い血糊や
脂肪片が剥がれる音。イェンニは、こびりつく赤が
瑞々しいそれでないことへと頻りに毒づいていた。]
女屠殺人になりたければ、今鍛えておくことだよ。
[――この仕事は、手首の力と握力がものを言う。
腕の力に頼っては、せっかくの皮は容易く裂けて
台無しになってしまう。蛇遣いは、自身もいまだ
熟練には至らぬなりに、イェンニへと手本を示す。]
尤も、その場で喰えぬ屠殺など、
さぞや腹が減ることだとは思うがな…
[蛇遣いは、新参たる妹分が口にする物騒な夢想を
概ねは程良く聞入れ、また或いは程良く聞き流す。
妹分も同様に、蛇遣いがにこりともせずに毎度呈する
指摘というか単なる感想というかを似た姿勢で扱う。
互いに理解を求めていないからこそ、通じ合う間柄。
秋の作業小屋の窓には、
厚い氷と薄い氷が疎らにこびりつく。
ユール祭を共に祝う約をしたのは*その時期だった*]
―― 回想/女たちの、秋の仕事 終了 ――
["庇ってくれたカウコに申し訳が立たん"
トゥーリッキの其の言葉に、
雪に投げ出されるレイヨに、
――こぼれたものは小さな舌打ちで。]
結局、俺は――……
[飲み込み、代わりに吐いたものは深い息。
名を呼ばわるレイヨにひととき意識預けて]
お前は――……死ぬな。
[かける言葉はいつかの*繰り返し*]
―― 長老のテント前 ――
[死する直前に届けられたラウリのなきがらは、
蛇を連れた遣い手が通りがかったときにはまだ
長老のテント前へ触れる者無く横たえられていた。
件の小洒落た帽子は、添えられていただろうか。
蛇遣いは、己を運ぶ狼に骸の傍で歩を緩めさせ…
少しの間、顔を向けずともそこへと立ち止まる。]
……
[虎の如き眼差しは俯かず、行手を見据えたまま。]
[見遣らずとも、頬に癒えきらぬ火傷がひとつ、
それ以外>>0:39>>0:40傷のないことは知れていた。]
ひとならば、悼もう。だが…
けものの骸へ構いだてするは、
喰らうときばかり――だな。
[けものとひとの境を、支配のまじないの均衡を
失ってしまったラウリへか、憐れまず確かめる。]
ひとに、別れを告げに来たのだよ。
[さくり、おおかみの前足が血に濡れぬ雪を踏む。
…村内を闊歩する狼の群れ。外へ出ていた村人は、
恐れおののき手近な小屋へと駆け込み閉じこもる。
蛇遣いを運ぶのは、灰褐色をした一際大柄の狼。]
…ああ。
どうか寛いで――常の如く在るといい、村の衆。
隠れて息を潜めたとて、
我らが群れにはわかるのだから。
[やがて見えてきたのはマティアスとイェンニの姿。レイヨの声を聞き、一度其方に目を向けてから、二人の方に歩み近付いていった。白に広がる赤。凄惨な光景]
マティアス。
[名を呼んだ彼は手遅れだろう事が知れた。彼の、人を喰らってしまった犬がレイヨによって永久の眠りにつかされる。目を閉じ、開いた時には、既にマティアスも息絶えているのが認められたか。怪我をしたイェンニには静かな一瞥をくれて――暫くの間、死したマティアスの体をじっと見下ろしていた*だろう*]
お前の答えの通り ……違わず、殺せ。
[深く被り直す帽子で表情がどこまで隠せるか――
否、そんなことをせずとも生者には見えない。]
嗚呼――……
ままならねーな。
[苦い――苦い苦い、*笑み*]
―― レイヨの小屋 ――
[崩れそうな小屋には、淡い灯りがともっている。
屋根の煙出しから昇るのは、薄くしろい煙と蒸気。
主不在の住まいで火を起こすのは二度目のこと…
蛇遣いは、レイヨの小屋で火の前へと座っている。]
…
[火にかけた小鍋の縁を、ほのおの舌が舐める。
くたり、と沸きかけの揺らぎが湯面を乱しゆき]
茶には合わぬのだろうな…
[浅く醒めて身じろぐ白蛇に触れ、ひとり呟く*]
…………
[眼前で息を引き取ったマティアスの遺体に触れず別れも告げず瞬きには長い瞑目を置いた時に、去る背を見送った覚えはなくもイェンニの姿はまだそこにあったかどうか。そうしてテントの前までたどり着けば、ラウリの遺体と対面する事になるのだろう。
恐らく死んでいるからではなく、洒落た帽子をかぶらぬ彼は、見慣れた姿より若くも幼くも感じる。ヘイノとは違えど他者から直接に危害を加えられたような外傷は見えず、静かに黙祷を捧げるも、集められた疑わしき者の中で可能性の高い彼の彼の死も覗きはしない]
貴方には感謝しないといけないのかも知れません。
むしろ謝るべきなのかもですが…
わからない事はわからないままにさせて下さい。
― 村の随分と上空 ―
[身体無き今 地の重力は枷に成らない。
男は紅いオーロラに混ざるかのように
随分と上から、地上を見下ろして居た。
長い間 視る事の無かった世界。
村の遠く向こう、別なる村が町へと変貌を遂げる所、
鉄の棒の組まれた足場が小さく見える。
男は眼を細めて ふと足元へと視線を落とす。
足元に子犬が纏う事は無く
ふ と 吐く事無き息の音を立てた]
[私に必要なのは空気なの。そばにいる人ではないの。そんなものは、いらないの。
姉様はそれをよくご存知でいらっしゃる。
私が貴女を手にかけても貴女はきっと恨みもしますまい。
だから私を殺して頂戴。人に殺されるのは嫌。空気のような、姉様がいい。
私を知っているようで、何も知ろうとなさらない、姉様だからこそ。私は好きなのよ]
[キィキィキィキィ…―――ラウリの脇を通りテントで長老と対面を果たせば、確証に欠けるながらも生前のマティアスの言であったカウコの死も、それがヘイノやラウリとは違うかたちであった事も聞けるだろう。狼の気配が村の中にまで息巻きはじめる重苦しい空気の中で、長老の語る声は遠のき、ほんの一瞬とはいえ呼吸すら忘れた]
………そうですか…
[ビャルネとカウコの異変にすら気づいたマティアスの言を疑う理由は薄弱で、掠れた声でなんとかそれだけを長老に返し項垂れる。曇る眼鏡を拭いもせず俯き、きつく瞼を伏せ、息を押し留め、かみ殺すも、隠し切れずに肩が震えた]
…………っ
………、…―――
[やがてヘイノの死や、人がトナカイに病を伝染すらしき事や、それを聞いたトゥーリッキの事、推察は交えず事実だけを簡潔に伝える。最後に場を辞すむねを口にして、長老に目礼を添えた]
[アルマウェルの姿はテントにあったか、あるいはまだマティアスの傍にあっただろうか。マティアスの傍に渡した膝掛けがあったなら、彼と子犬へ血に濡れたそれをかけて、アルマウェルへ向き直る]
………戻ります。
あの人にお茶を振舞う約束をしたんです。
報せの必要はありません。
でもアルマウェルが望まれるなら…
貴方にもお茶を。
[これからの事を考えれば隣人の手招く姿すら浮かびそうな今、忘却の術を持たぬアルマウェルに「使者」の役割を求めず、彼の意思だけを確認する声は静か。キィキィキィキィ…―――彼の返答がどんなものであれ、車椅子に座す求道者は自身の住まう朽ちかけた小屋へ戻る。
吹雪の向こうに見える住まいには明かりが灯り、既にトゥーリッキの姿はいつか招いた折と同じく火の傍にあるのだろうかと考え、眼鏡の奥の眼差しを細める。キィキィキィキィ…―――車椅子の音がやめば、断りを置く事はなく立て付けの悪い*扉を開いた*]
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