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―― ラッセルの自室 ――
[もう、帰る主など失った、誰も居ない家の一室で、
幽かな物音と共に、ひとの気配が俄かに立ち昇る。]
――…何とか…辛うじて生きていた、か。
あの"書生崩れ"も、酷い事をするね?
僕の体をこんなに傷物にするなんて。
[言葉少なげに自らの四肢を眺める男。
彼はかつて、この家の少年に"ハーヴェイ"と呼ばれていた。]
所で。彼らは無事、任務を遂行できたのかな?
ま、アーヴァインもシャーロットも。
捨石でしかなかったんだけどね?
しかし、此処まで殺伐とした空気が
村中に流れているという事は――…
彼らにしては上手く行った方だろう、ねぇ?
[部屋の一角から村の外を眺め、ひとり語散る。
傷だらけの体に、意地の悪い微笑みを貼り付けて、
「ハーヴェイ」と呼ばれた男は、自らの頭髪を引き摺り下ろした。]
結局、誰も"僕ら"が摩り替わった事に気付かなかったとは、ね?
――っくくっ…あははっ! 可笑しいの。
結局小さな村だろうが、
ある一点を突けば信頼なんてなし崩しになるんだよ。
[引き摺り下ろした茶色の贋髪の中から現われたのは。
一番初めに死したはずの赤い頭髪。
「ラッセル」と呼ばれた少年その者の容姿だった。]
さて、もうこんな村には用は無いし。
次の仕事に行こうかな?
[軽い口ぶりで「ラッセル」とよく似た容姿の男は、
小さな村を後にする。]
―― 数ヵ月後 とある小さな村 ――
ねぇ、フレディさん。知ってる?
数ヶ月前、此処から少し離れた小さな村でね、
"魔女狩り"が起こったんだって。
怖いよね、今のこのご時世に魔女狩りだなんて――…
絶対ありえないと、思うんだけどね?
[酒場のカウンター越し。
少年の好奇に満ちた眼差しは、
主人の幽かな動揺すら見逃さない。
無言の恐怖に脅え行く様を、裡でひっそりと味わいながら。
少年の顔をした悪魔は、再び村の悲劇の幕を*引き開ける*]
[>>52 >>53 目の前の光景をただ、黙って見ていた。]
……バカ……
[残された家族にどうやって伝えればいいというのか。
夫と娘を失ったジェーン
父と姉妹を失ったリック
この現実を…あの二人は…どう受け止めるのだろう]
だから…殺人から平和なんて生まれないのに…。
[溢れる涙をおさえることができず…その場に立ち尽くした**]
─?からの手紙─
白い紙のところどころに、黒い煤のようなものがついている。一部のインクがにじみ、紙がごわついている。
綺麗でも丁寧でもない、さっと書かれた文字たち。
「これをよむ あなたへ
あなたが、ビンセント先生ではなかったら、そしてもし村が平和だったら、全部燃やして、書かれていることは、すべて忘れてください。
もし、ビンセント先生だったら、あれが身の潔白の助けになればいいんですが……私は同居していたので、逆効果かもしれません」
医師の名前の綴りに、誤りがあった。
「遺すのがいいのかと、いまでも悩みます。燃やしてしまおうかと思いました。私■■■」
続く文字は、そこだけ丹念に、強い力で真っ黒に塗り潰される。
「のことは忘れてください」
そっけない言葉の後に続く文字はなく、手紙は終りを告げる。署名はなかった。
─回想─
「ヴィンセント」
「びんせんとせんせぇ」
まだ、医院に来て間もない頃。幾度目のやりとりか。
「すいません……はつおんが、むつかしいです」
ニーナがため息をついた。
しばら考え込んでいたが、急に笑顔になり、ヴィンセントを見上げた。
「せんせぇって呼んでもいいですか?」
それの呼びかけすら、発音が怪しい。けれど、そういうことになった**
―― 墓地 ――
忘れろと言うのなら、忘れる方法を教えていきなさい。
[薄青い花の咲いたルリマツリの枝を、墓石に置いた。
迷ったけれど、赤い花は置かない**]
暑いなぁ。
!?
[シャーロットがへの一撃は予測していた。
けれど、ヒューバートの最後の行動は、予想外で]
いけません! せんせぇ……!
[ウェンディが傍らに居たからなのか、彼自身に鋭い声を投げかけた後に、反射的に*医師の元へ*]
……。
[何かを意識した。
音、ぬくもり、そんなもの]
……『それじゃ、みんなによろしく』
[>>62最初に見えたのは、光のしずく。
立ちつくしたままの、ローズマリーの姿。
そっとのばした手で、彼女の肩を叩く。
触れることはできぬけれど、その、形を作った]
[医師の元に行きかけていた足を止め、振り返る。
>>69 ローズマリーの肩に触れる手。淡い影]
──…。
[親子が、互いに触れられるところにたどり着いたところを認識する。
ゆらりと頭を下げ、動きはじめる]
─墓地─
[>>67 暑いという声が聞こえる。
空を見上げれば、太陽が大地を照らしているのは分かるけれど、見下ろしても足元に影は無い。
なのに、ルリマツリが光に反射するのをまぶしく感じるのは何故だろう]
また帽子を忘れて。日射病で倒れてますよ。おいしゃさんなのに。
[常日頃ならば、そう言ったに違いない声は、光に溶け込んでしまう]
[>>70この世とあの世の世界が折り重なってなる景色は、見慣れた村の景色だけれど、どことなく頼りなくも思えた]
……。
[ゆるりと見回せば視界の隅で、青い髪が、ゆらりと揺れた]
― 酒場 ―
いらっしゃい。今日は何にするの?
[いつも通りに店に出る。
この村で突如起こった惨劇…村人たちに少なからず影響はあったが、表向きはすぐに平静さを取り戻す。]
今日は新しいお酒が入ったのよ。
[どんな惨劇があったとしても、時は流れ、人の営みは変わることなく続く]
― 自宅 ―
[女はこの惨劇を心の奥底にしまい込む。
彼女の先祖がそうしてきたように。
そして…割れたはずの鏡は…その呪いはまだ効力をたもっているらしく、いつの間にか元に戻っていた。]
いつか…呪いが解ける日がくるのかしら…?
[場違いな感想をつぶやく。
母が自分に伝えたように、自分もまたわが子にこの鏡を託す時が来るのだろうか。]
できれば私の子がこれを使う日が来ないことを…願うしかないわね。
[女は窓辺に行き、空を仰ぐ。
目の前で亡くなった人々を思う]
惨劇が繰り返さないように…見守ってね。
[誰にともなく呟き、*微笑んだ*]
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