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[アイノがそれまで目にしたことのある死体と言えば、棺の中の眠っているような、綺麗に整えられた後のものくらいだった。
その所為もあったのかも知れない]
……そだ。
嘘だ、嘘。こんな非現実的な事、嘘に決まってる。
[自分の目で見るまでそれを信じようとはしなかったが、実際にそれを見、見開いてしまった目を無理に引き剥がす。
そのまま暫くの間は誰の声も耳に入らない様子で、小声で現実を否定し続けた**]
[ヴァルテリの言葉には確かにと思ながらも暫く考え込んだが、小さく溜め息を零しカップを見つめたまま]
…マティアスだよ。
あいつは映らなかった。
[自分が見た相手を呟いた。
それはその場に居る者には聞こえるだろうか。
首飾りが本当に人外を映すかどうかはわからない。
それを愚痴のようにヴァルテリに告げれば、また茶を口に運ぶ。]
別に疑ってじゃ無かったんだがな。
たまたまあいつが目の前に居た、それだけさね。
[困ったような笑顔でヴァルテリに言葉を返す。]
あー…まじて参ったなこりゃ…。
[無意識に手を首飾りにあて、再び溜め息を落とした。]
ウルスラ、さま。
ありがとうございます…
わたくし、…身を、清めて参ります。
その、
…ありがとうございます。
ドロテアを―――見ていただいて。
[部屋から出る前にお辞儀をする。
彼女が共に来るならば柔らかく笑み、
部屋を出る時にアイノの姿を見れば、
痛々しそうに眉を顰め、横をすり抜けた]
[コップから零れた水が、マティアスの布団に染みていく。
コップが床に落ちる前に掴み、ニルスは小さな溜息と共に眼鏡のブリッジを押し上げた。
マティアスの、目に見える動揺が何ゆえにかを測りかねるのは、獣の爪に掻かれたかのような傷跡の所為か、ニルス自身がマティアスに抱くイメージの所為か。
ともあれ、長老がマティアスに告げたことが事実であれば、人狼は殺せる存在であるということは確かだ。
それをしっかりと記憶に留めて。]
もし君が疑われることを恐れているなら、私に関してはその心配は無い、と言っておくよ。
勿論、それが永久のものでないことも言っておかねばならないが……少なくともドロテアの件では、君を疑うつもりはない。
[わざわざ安心させるように言葉にしてから、空いた手でマティアスの肩をポンと叩く。]
……長老殿は、他に何か言っていたかい?
[そして、風呂場で湯を貯めて暖まった。
身体にこびりついた血も落として
ウルスラが共に入れば不自由は助け
十分に落ち着いてから着替えて出る]
[寄り添う肌から、細かな震えが伝わってくる。
常は助けてくれるイェンニが、珍しく支えを求めるとみて]
いいの。
[短くそれだけを彼女に告げた。
声色のうちに言葉以上のものが伝わればと願う。
ちらりと目にしたのは、青ざめたアイノの顔。
その様子に顔を曇らせて、レイヨがいれば目配せをする。
そうしてイェンニと共に、浴室へと向かった]
……獣が。
[>>101果たして、そのようなことはあったろうかと記憶を探るも、思い当たる節は無い。
ただ、獣が騒ぐと聞いてニルスの視線は、さっとマティアスの顔へと向いた。
獣の爪で掻かれたような傷跡。]
君の怪我も、騒いだ獣の仕業……だったりしてね。
[あくまでも冗談めかした口調で呟いて苦笑いを浮かべてから、マティアスが抱える汚れた枕を引っ張った。]
まあ何にせよ、君は血を拭って包帯を巻き直すべきだ。痛々しくて、見るに堪えない。
[言葉と共にニルスはコップを持たない手でマティアスの腕を引き、布団から離れるように促す。
そしてマティアスが立ち上がれば、彼の鞄の中から包帯を持ち出して、彼と共に居間へと。]
イェンニ。
…私からも、お礼を言うわ。
怖がらないでくれて、ありがとう。
出来ればずっと、言わずに済めば良かったと思うけれども。
[少しあとに口にした礼は、先の彼女>>98へと向け。
そうして支えあうように入浴を済ませれば、
随分と気分が落ち着くのを感じる。
衣服を整えて、最後にもう一度、
彼女を軽く抱きしめるようにしてから居間へ向かった]
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