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- 家屋前・ハナミズキの真下 -
〔屈みこむ風雪の背後。
色の無い表情は、男と、自身を見下ろすだけ。
風雪のかける言葉を聴き、〕
――、別に。
寒くなんて、ないです。
〔緩やかに首を振る。
きっと倒れている器でならば、
かたかたと小さな震えも伴ったろう。
けれど否定をするその顔には。
いつの間にか、震えよりもずうっと寒そうな
悲しみに近い色が浮かんでいる〕
〔会いに戻りましょうか、と声がすれば
表情からは悲しみが吹き飛び笑みが浮かぶが〕
私は一人が、良いから。
もう少し此処で……
この子と一緒に、居たいから。
〔口をついて出た言葉は震えていた。
そうして去ろうとする彼を見送る形になる。
自身に上着が掛かるのを見て、
無意識にか、風雪の背へ手を伸ばすが〕
――、っ
〔辛そうな面持ちで、其の手を引っ込めた〕
〔何処までも"独り"と口にしては。
伸ばした手は一体何に触れようと云うのか。
決して伝わる事の無い言の葉。
降り積もった葉はやがて色を失い、
雪に覆われて見えなくなってしまうのだろうか。〕
……ぅ
〔もう必要が無い、というのに。
悲しいと感じれば、涙の様なものが頬を伝う。〕
どう、して……。
〔自問の声は、静かに響く。〕
〔たった一言のお礼すら言えず終い。
傷つけぬように、負担にならぬ様に。
そう思い相手を退けた言葉は、
周り巡って杏奈の表情を悲しみで彩った。〕
〔去ってゆく風雪の背を、見送る瞳*〕
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