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ん…?私?
なに言ってるの、華なんて、何処に。
[ひらりと手を振ってから苦笑を浮かべた。
化粧っ気の無い顔、若者らしからぬ髪型と言っても良いであろう結い方、地味な服装。
余程ロッカの方が華がある。
でも、百合や蘭などというよりは、道端に咲いているたんぽぽがよく似合う、と思ったりもするのだけれど。]
うん、午後はもうすぐ。
帰ってお母さん、手伝わないと。
[元々は父親がやっていた店だった。
幼い頃に父親が亡くなり、母親がその店を引き継いだのだった。
だから、幼い頃から彼女はいつもお店を手伝っていた。]
ロッカちゃんも、久し振りに来―――っ
[ロッカへと誘いの言葉をかけたその時、時計の音が聴こえた。]
な、何…?
[この音は何処から聴こえてくるのだろう、わけもわからずに周囲をぐるりと見渡して―――…、そして、何かが壊れるような澄んだ音、絶叫。
次の瞬間、世界がくるりとまわって、目の前には… ]
う、うさぎ…?
[暫くの間、茫然として何も喋る事はできなかったか。
喉の奥から絞り出すような声を漸くあげた。]
時計…?思い出…?
[一方的なうさぎの言葉。
何故うさぎが喋るのだろう、そんな事すらすぐに疑問として浮かんでこない程に、彼女の頭は混乱していて。]
ワスレモノ…?
[その言葉に、ひっかかりを覚えて、口から零れた言葉は僅かに掠れている。
ロッカはどうしていただろう。
そっと、海へと目を向けた。
そこに見えた海の景色は、先程まで見えたものとほんの少しだけ、違っているように見えた。**]
うん、私は大丈夫。
ちょっと目が回ったけどね、もうおさまった。
[気にかけてくれるロッカに、心配いらないよ、と頷きながら笑う。]
そうだね、街の方に行ってみようか。
誰か、他にもあのうさぎを見た人がいるかもしれないし…
[ず、と砂に足を取られながら、ゆっくりと街へと続く道へと向かう。]
― 海辺の道 ―
[それはサンダルの底がしっかりとした地を踏むことが出来るようになって間もない頃だったか。
街の方から歩いてくる二人の人影の姿が目に入ると、じっと目を凝らした。]
あれ、珍しい。
祐ちゃーん。
[其処に見知った男の姿があれば、手を振って名を呼んだ。
もう一人の女子高生らしき姿には見覚えは無い様な気はした。]
久し振り、こっちに帰ってきてたんだ。
[久々に見た顔と、彼が手にしているものが目に入れば、自然と目は細まる。]
みんな、芸術家さんばっかりね。
[海をスケッチに来たのだろう、そう言われてみればこの懐かしい景色には、昔海でスケッチをしていた彼の姿が何処か重なるかもしれない。]
はじめまして、古川チカノです。
ロッカちゃんとも知り合いなんだ。
[初めて会う女子高生に、小さく頭を下げてからふわりと笑んだ。]
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