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あらあら、お口の周りがソースで茶色になっちゃって。
[今年の焼きそばも時計屋の息子が焼いている。
手渡した一皿を連れの少女は、美味しい美味しいと言いながらもの凄い勢いで食べ終えてしまった。]
まあ、やっぱりこの子私に似ている?
弟のところの娘なのよ。
……チグサ君、ちょっと残念そうな顔をしてるけど、あなたさては私の隠し子だと思っていたんじゃない?
[首をすくめるチグサに苦笑いを向けながら、食べ終わって空いた姪の手は繋いで離さずにいる。]
[しゃがみこんで、姪の口元のソースをハンカチで拭き取る。]
あなた、小学校のお給食の時もお口の周りが真っ赤になったり真っ白になったりしているんじゃない?
[そんな事ないもん、もう幼稚園の子じゃないもん、とふくれた少女のほっぺたを指で突っついた。]
……そうなの。
誰かが寂しいって言っていたのね。
[この子にも聞こえたのか。]
去年の今日、ここからどこかに行っちゃったお姉さんがいたのよ。
おうちの人やお友達と離れちゃって、きっと寂しいのね。
[虫の声に混じって、時折聞こえる杏奈の声。]
だから。
今日は伯母ちゃんから絶対離れては駄目よ。
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