[首筋に熱さが掠める。>>0
とはいえ、それに気を取られていられる状況ではなく。
意識は突き出した刃の行方にのみ向けられた]
……受けた仕事は完遂する、が売りの運び屋なんでね……!
[震える声が紡ぐ声に、返すこちらの声は掠れていた。
刃を通して伝わる手応えは、致命を負わせたと感じ取れるもの。
ぐ、と一度力を入れて刃を回した後、後ろに下がりながら突き立てたそれを引き抜いた。*]
[賛辞>>2に反応できるほどの余裕はない。
今はただ、対峙していた相手に意識は集中していた]
……は。
[倒れ込んだカウコが紡ぐ言葉>>3に、一つ、息を吐く]
ほんと。
理不尽、だよ、なぁ……こんなの。
[こと切れたカウコを見やりつつ。
零れ落ちたのは、ぼやくような、呟きひとつ。**]
[十字を切って瞑目するイェンニ>>5に倣うように僅かに目を伏して。
それから、はあ、と大きく息を吐く]
……さて、これで終わり……外に出られるはずだと思うんだけど。
[言いつつ、ふと振り返ればいつやって来たのかそこにはメイドがひとり]
「『ゲーム』の終了を確認いたしました。
扉を開きますので、御支度が整いましたらご出立ください。
……雨は止んでおります。どうぞ、道中ご安全に」
……いや、ご安全に、ってねぇ……。
[淡々と綴られる言葉には、どう反応したものやら。
なんて思いつつ、イェンニの方を見て]
……て、事だけど。
きみは、これからどーしますの?
[投げかけたのは、こんな問いかけ。*]
[メイドの態度に対する思いは、どうやら変わらないらしい、と。
素っ気ない返し>>8に思ったのはそんな事。
ここに来る直前の状況。
暈されてはいるが、色々と厄介だったと察する事のできる答えに僅かに目を細めた]
そりゃまた、難儀な事で……。
[ぽそ、と呟いた所に向けられる視線と問い返し。>>9
それに、一つ、瞬いた]
俺? 俺はまあ、『仕事』の途中だったからね。
森を抜けられるならさっさと抜けて、そっちを終わらせるのを優先するさ。
[それ以外にない答えを返した後、軽く肩を竦める]
……まー、とりあえず、なんだ。
土地勘もないってんなら、とりあえず近場の町までご案内しましょーか?
どーするかは、それから決めても遅くないと思うし。
[深く関わるのもどうか、というのはあるものの。
土地勘もないというのに、じゃあ元気でね、と別れるのも気が引けるから。
軽い口調で向けたのは、こんな提案だった。*]
あー、いーのいーの。
こんなとこで知り合って、一緒に生き延びたのもなんかのご縁、ってね。
[軽い口調は崩さず、さらり、返す]
そんなに畏まらんでもいーさ。
まあ、俺も表通り堂々と歩けるよーな手合いじゃないけど……働き口探す伝手くらいならあるしねー。
[下町や裏通りなら素性をとやかく言わずに働かせてくれる場所も少なからずある。
どうするかは当人次第だが、路を繋ぐくらいならできるだろう、なんて思いつつ]
……んじゃ、ま。
せめて、安置くらいはやってから、お暇しますか。
[自ら手にかけた男を、このまま転がしていくのはさすがに後味が悪いから。
投げかけたのは、軽い口調の提案、ひとつ。*]
[こちらの提案に賛同したイェンニが、カウコの髪を切り取り包む。
その様子に、僅かに目を細めた]
……ああ、確かにな。
まるっと置き去りも、酷か。
[他に知る者もない場所に置き去りのように弔われるというのも、酷な話よな、と改めて思いつつ。
先に使った担架をまた借りてきて、地下へと亡骸を運んだ。
先ほど運んだ名も知らぬ男の亡骸は、弔われたのか既に見えず。
土の上にカウコを下ろして、しばし瞑目した後]
んじゃま、行きますか。
[軽い口調で呼びかけ、外へと促した]
[支度を整え、エントランスへ向かう。
玄関の扉は開け放たれ、その向こうに揺れる緋色の華が見えた。
メイドが先に言っていた通り、既に雨は止んでいて。
立ち込める霧の中、一筋だけ霧の晴れた道が開かれていた]
……お帰りはこちら、って?
至れり尽くせりだねぇ……。
[呆れたような口調で吐き捨てつつ、その道へと踏み込む。
進むにつれて背後を霧が覆い、やがて、屋敷への道は完全に閉ざされた]
……ま、何と言うか。
できれば、二度と通りたくねぇな、今の道は。
[零れ落ちるのは偽りなき思いを込めた言葉。
それを笑うように風がふわり、と揺れて。
その感触に目を細めつつ、男は自身の知る現実へ戻るための道へ、一歩を踏み出した。**]