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あー、諸君、聞いてくれ。もう噂になっているようだが、まずいことになった。
この間の旅人が殺された件、やはり人狼の仕業のようだ。
当日、現場に出入り出来たのは今ここにいる者で全部だ。
とにかく十分に注意してくれ。
[人目につかぬ時間に、裏口のゴミ箱に空き瓶を放りいれるのが、男の数少ない不定期的習慣だ]
ひとつひとよの生き血をすすりぃ〜♪
[アパートに響く大時計の音に合わせて、階段を一段一段降りていく]
はっ。
[乾いた笑いを残し、男の足は何かに導かれるように進む。
心なしか、体が軽い]
あ?
[たぷん、という音を聴いた。
手元の瓶が液体で満ちている]
こういう焼きの回り方なら歓迎だ。
[くくく、と喉を鳴らし、元来た道を振り返る]
[あったはずの扉も、アパートの影も、見当たらなかった]
[夜の庭はひっそりと静まりかえり、人も花も眠っています。
眠りを覚ますように、大時計の鐘がなりました。
ひとつ、ふたつ……。]
しーっ。
[振り向き、室内の大時計に人差し指をたてると、鐘はぴたりと鳴り止みました。
一瞬の静けさのあと、今度は足音です。]
しーっ、静かにしないと、皆が起きちゃうわ。
[時計にしたのと同じように人差し指を立てて答えます。]
私は、お花を探してるの。
あなたはお散歩?
[声を顰め、問い掛けました。]
そりゃ悪かったな。
[笑い出しそうになるのをこらえて、にやけ顔と真顔を行ったり来たり]
花なんかそこらじゅう咲いてんじゃねぇの?
[抱えている酒瓶を視線で示して]
オレは、花見だよ花見。
おまえも飲むか?
[しゃがみこむと同じように声を低くした]
私が探しているのは特別な花なのよ。
[そこまで言って慌てて口を噤みました。これ以上は秘密です。
しゃがみこんだ男の隣りに立ち辺りを見回しました。
花の甘い香りに、お酒の匂いが混じった夜気を吸い込みます。
彼が手に持った瓶をちらりと見つめました。叔父さんが飲んでいるのと同じお酒です]
どうもありがとう。
頂くわ。
[礼儀正しく、そう答えました]
[持っていた中の一つの口を開く。液体が満ちている。
口をつけると、やはりそれは酒で]
待て。
未成年の飲酒は法律で禁止されており、飲ませた大人がろくでなしと言われるのが世の常だ。
[男は、自分と少女の間の地面に一つ、瓶を置く]
自主的に摂取したもんは知らねぇよ。
花なんか、すぐ枯れるのにな。
[一瞬目を細め、酒を煽った]
[瓶を傍らに投げ置いて寝転んだ。
茎が折れる音が、男の心をにわかに浮き立たせる]
なぁ、知ってるか?
酒は、明日を忘れさせちゃくれない。
[秘密の話をするような小声で言って、男は自嘲した。
閉じた瞼に、雫が落ちた*気がした*]
[近く。遠く。鐘の音で目を覚ます]
ここは?
[そこは美しい草木に溢れる庭園]
きれい。
[そばにあった小さな花を手折ると、
開いたままの本に栞代わりに挟んで*閉じた*]
じしゅてきに……?
[その言葉の響きはなんだか素敵でした。
土に置かれた瓶と男を、一歩下がって思案するように見くらべました。]
じゃあ、「自主的に」頂くわ。
[茶色い小瓶を手に取りました。あけると濃い匂いが立ち上ります。
舌でなめるように一口。
失礼にならないように、しかめた顔を背け、瓶を土の上に戻しました。
口を開けて、舌に残る濃厚な味を夜気で薄めました]
水が欲しいわ。
[庭には水場があるはずでした。
男に小さく頭を下げると、水場にむかって歩き出しました]
[背にかかる男の声に、振り向いて首を傾げました]
だから、枯れる前に探すのよ。
[からん。ガラス瓶の投げ置かれる音がします。男の姿は、花の向うに隠れました。
聞こえて来る声は小さく、自分に向けられたものかも、男のものかも判りません]
明日を忘れる……?
忘れたいの?
[まだ舌に残る味を確かめるように、口を*動かしました*]
ドドンガドドンガー!
[何てことだ。猫と一緒にパンを食べていたはずがいつのまにか花避ける庭園に迷いついている。一体何が起こったんだ。全然わからないぞ。あと部族のエリートである俺はライオンとしゃもじで戦って倒したりできるもののこのままでは上手く歯車の一員になれそうにないぞ。どうすれば良いんだ!とまあ大体そんなような意味の言葉をノーマンは悲しそうに庭園の草を毟りながら紡ぎます。その瞳はかすかに涙に濡れていたそうです]
[腰ミノと柄のやたら長いどこかのしゃもじだけで自由に草原を駆け巡っていた頃の名残でノーマンは近くに存在する生命体の位置を正確に把握したものの、このままでは自分の存在はひどく危険であるということを本能的に察しました]
モルゴルロモアアホアア!!!!
[ノーマンはあわてた様子で人語を解するようになれるこんにゃくを口に*詰め込みはじめます*]
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