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―― 橇置き場 ――
[――坂の上には、木の橇が並んでいる。
ゆるやかな傾斜は、初速をつけるに適したそれ。
人探しの態で戻り来た蛇遣いは、帽子の男を見る。]
…また、外へ出たのか。
[長くテントの前へ佇んでいた、かの時を思う。
ほうとしろく漏れる吐息は、早や鬢の毛を凍らせて]
唄とでも聴くかね。幻燈とでも見遣るか。
[遠吠えと、極光。――今は嫌でも注意引くもの。]
…空気か。
確かこの地に住まいする、
大気の精霊はイルマタルと教わったが…
空気に毒を漏られて、難儀なことだろう。
言葉も情けも、今は時を奪うよ。煩うな。
[ラウリの自嘲を慰めもせぬ薄情は、先刻と同じ。
彼の口から、"支配"なる言葉を聞くと眉を顰めて]
それでも、みじかい夏の歓びに惹かれて
あたしはこの土地に居るよ。長い冬と闇の地に。
――なあ、ラウリ。
思い起こさせられたなら、お前は…
…否。そんなことが聞きたいのではないのだ…
[尋ねかけ、寒がりの蛇遣いは彼が辿る
顎の曲線と、帽子の鍔のそれとを重ね想う。]
そんな小洒落た帽子を年中着けているお前がな。
街へ住まずにどうしてこの地へ留まり続けるのか。
おそらくは、あたしが訊かずとも
誰かが訊くのだろうがね。…うむ。
今さらに、尋ねてみたく*なったのだよ*。
皆と過ごす、夏がな。
[補足して、一度口を噤む。
ごまかす、はぐらかす――
然し隠さぬ素振りは確かに返答で。
異質な音ごとに、蛇遣いは眼差しにやや険しさを
混ぜて影引く男を見詰めていた。離れゆく*背も*]
[小高い丘の上から、雪原を眺める。
――獣達の包囲は相変わらず。腹に据えかねるのか、
トナカイ追いの犬たちが時折控えめにも吠え返す。
飼い主が慌てて静かにさせるのは、恐れのためか。
蛇遣いは、身体の前で毛皮をかき寄せ眉を寄せた。]
『出来ぬこととて、想いは』――
[…ほう。レイヨの言をなぞる呟きにつれ、吐息。
極夜の日々の「朝」は、総てが蒼く、蒼く染まる。]
想うと焦がれるは、似ていて違う…と言っても。
嗚呼。果たして面白がってくれるのだろうかね?
面白かったとしても、あたしは――
[毛皮の下のしろい大蛇を、片腕は庇い、抱く。
無意識にも恐らく相棒が蒼く染まらぬようにと。]
…そう、わらえないな。
[さくり。足は雪を踏み分けて丘を下りだす。
背後に並び在るのは、よく手入れのされた橇。
曳くトナカイも犬も、今は狼に怯え繋がれず。]
―― カウコの小屋 ――
[――招かれる。
二軒目は、目の合ったカウコの小屋。
少し迷うように視線を動かすと、胸裡に探していた
イェンニは、ビャルネの後ろを歩いていくようす。
蛇遣いは後ほどと自らに頷きカウコの小屋を訪ねた。]
とりあえず、戻った。
…レイヨは性格がわるいらしい。
[畏まらぬ間柄。戸口で霜を払いながらの報告。]
うむ。
せっかく珍しくお前が茶を出してくれたのに、
入りそうにないほど茶を振舞われてしまった。
[勧められる椅子へは、目礼と共に腰を下ろす。
人相のあまりよろしくない男の手から、茶を貰い
温もりばかりはいただく態で両手で緩く包んだ。]
告白と言えば、告白かもしれん。
…普段は吐いてくれなさそうだ。
[指先を唇の端へあて…真横へと滑らせる仕草。]
迂闊をすれば、ドロテアを出し抜けるかと
思ったのだがね。うまくいかんらしいよ。
そいつは、どうもね。
[蛇使いは、自ら唇へ触れた後は決まって舐める。
大蛇を踊らせる笛を吹くための唇を確かめる癖。
カウコの悪めかす笑みには、酒がいい、と真顔。]
誰にでも実のある話かというと、そうでもない。
…レイヨも言っていたよ。
あたしに『奪わせてしまわないといい』、とね。
[外気に冷えたこわばりを解すように瞬きは遅い。
笑みを使い分ける知己の曖昧を聴いて、容れはせず]
――ドロテアは、ドロテアの出来ることをする。
…そうして、あの娘を
我々が無力にするのではないか?
密かにでも奪わぬなら、それしか出来ないと
突きつけるようなものじゃないかと―――否、
[激さずとも豊かな感情は、他者へ伝わるに易い。
声音の芯へ籠る力をふっと抜き、蛇遣いは詫びた。]
すまんな、やつあたりだ。
…うむ。次に貰うとする。
[示された棚、酒瓶の位置を覚えると確とうなずく。
何しろ今はレイヨの茶で腹が膨れていると素振りして手にしたあたたかなカップで寛いで暖を取っている]
そんなところだな。
因みに、今は"危険"を冒してるつもりはない。
[歓談には遠い状況下、過ごすひとときは静か。
ドロテアについて想うことをカウコが語る声へと
蛇遣いは耳を傾けひとつふたつ相槌を挟みもする。]
ちから、か。
…… ああ。気持ちは無力ではないはずだな。
ドロテアのも…お前のそれも。
もしも、だな。
もしも袂を分かつことがあるなら、カウコ。
[やがて彼のもとを辞する折には、
ひとときの暖と時とに礼を伝えて。]
先に一発入れさせてくれる
くらいのサービスは、――あるんだろう?
[戸口で少し押し黙ると…笑まず軽口を*叩いた*。]
[ 『 そりゃ"どっち"の前提だ? 』…
別れ際、カウコの応じめく問いに、蛇遣いは
「あとで鏡を見るとわかるんじゃないか?」と
悪人顔で損をする性質の相手へ添えておいた。
ぐず、と歩むまま鼻先に音を立てて眼差しを上げる。
――双列を為した灯りが、ゆっくりと動いていく。
凍る湖上、冬だけの雪原を目指して…ゆらゆらと。]
祭壇を、つくる…のか。
[或いはあの列の中へ、既にドロテアが居るのか。
蛇遣いはじわり、嘆きを押し殺し双眸を細める。]
[蒼い極夜。
寒風が粉雪をさらう凍った湖面に、紅い極光が映る]
紅い輝きは常に惨事とともにある、…か。
[呟く。思い出したのは、先のビャルネの台詞。
先刻見かけた彼は、確か自身の小屋へ戻った筈。]
けれど、止まぬ験しもなかったろう…
夜も世も、在るばかり――だな。
[さくり。往来に踏み固められた道に沿って、
蛇遣いは歩をビャルネの住まいへと向けた。]
――ウルスラ先生。戻ってたのか。
[ビャルネの小屋を訪ねる扉前…獣医たるウルスラと
行き会い声をかける。軽く足踏みして待ち歩を揃え]
お疲れさまだ。
晴れるは気でなく赤の空ばかりだが…
ただ、ひとを感じてまわっているよ。
…先生は、トナカイたちを?
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