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[翠の袖をきゅっと掴んで引っ張り、安子を手招きして歩みだす。]
[そうして二人を連れて進めばほどなくして、一人の青年の後姿が小さくみえてきた。
…村道から続く森へと、彼は駈けて行こうとしていた。]
神隠し…この事件とあのひと、
……きっと何か、関わりがある。
[遠目の青年を指さし、
躊躇いがちに低めた声でそう告げた。]
[地面を見下ろした。]
そもそも…神だとあやかしだの…わたしは信じてない。
きっと…どこかに皆いる、から…。
[雑貨屋の主人も消えたとなると。
これからアイスを食べるのも困る。]
駐在さんに知らせてくる。
また消えたって…。
――――ねぇ…、
[首を傾げた。]
[少女の言葉に、微かに口許をゆるめて頷く]
そうだね、戻ってこないと決まったわけじゃない。
消えた、ただそれだけ。それ以上はわかっていないのだから。
[駐在に知らせにいくと言う少女を見送りかけて]
[向けられた問いに、少し切なげに首を振る]
……ごめんね、私にもそれはわからない。
神隠しが何故、何のために起きているのかも。
[道の途中でイマリの祖母と出会う]
え? 萩原さんが…居ない。
はい、探してみます。だいじょうぶ。きっと戻ってきますよ。
[教師の笑顔で老婦人をなだめながら、家の近くまで送る]
はい。ではまた。
[一人きりになったあと呆然と呟く]
──神隠しは大人だけじゃないの?
――――…。
あなた……。
[空を見上げる。]
神隠しがなんのため…。
理由があれば人を消してもいいの…?
自分勝手かもしれないけど…。
消えられて悲しむヒトもいる。
[歩き出す。]
消えた、それだけでイヤだ。
[小さい頃、消えた父の姿を思い出した。]
お邪魔します。
[鳥居を潜る前にふかぶかとお辞儀をする。
何かと理由をつけて、神社には行かないようにしていたので、今日が始めての参拝だった。
緊張の面持ちで*階段を登る*]
ネギヤに村のニュータウン化計画を提示して、餌を撒いて、賛成派を増やして。
どれだけ労力がかかったと思ってんだ。
これでまた、人は示された神の力に平伏して畏れ敬い奉る。
[森の中で、舌打ちをひとつ]
……いや、まだ諦めるのは早え。
……ごめん。
[少女の言葉を聞き、肩を落とす]
それはそうだ。消えるだけで嫌だ。
……なんでこんなことするんだろうとか、帰ってきてほしいとか、
そっちばっかり考えて、根本的なことがお留守になってた。
ごめんなさい。
……なんで…謝る…?
[振り向かず言った。]
悪いことしてないなら謝らなくていいよ。
じゃあ、行くね。
[駐在のいる方へと向かう。
最後にかけられた声は届いていなかった。]
消えるならわたしでいいのに。
[父が消えたのは神隠しでもなんでもない。
飛行機事故だと聞いたのは大きくなってからだった。
母とももう何ヶ月会ってないだろう。]
神などいないと、呪われた血などないと証明するために、神を殺す。
……どうかしてるぜ。笑えねえ話だ。
まずは呪いの効果を減らす。そのためには、神の力を削げばいい。
祠に社に。あとは……神社に奉納された神具か。やるなら早え方がいい。あいつらに嗅ぎつかれたら厄介だからな。
[森の中に座り、一人計画を立てるのでした]
[予報士を目指そうと思ったのは。
死んだと知らない父に見つけてほしくて。
空が好きな父のためだった。
今でもそれは変わらない。]
――――――…。
[駐在に会えばまた消えたと報告した。
町中に広まるのも時間の問題だろう。
消えたのは医者と雑貨屋の主人だと伝えてある。]
――――――…。
[手にある白衣をどうしようかと困ってしまった。]
[返事も出来ず、ただ見送った]
悪いこと、か。
[少女の姿が見えなくなった頃、空を見上げて呟く]
神隠しは、知らない。
でも、少しだけ、重ねてしまった。
それは、悪いこと、かなぁ。
自分の存在に気づいてほしい、って。
そんなふうに、私と同じように、
村の神様も思ったりしたのかなぁ、なんて。
重ねてしまった。
私は『 』だから。
責めたければ責めるがいいさ。
俺が生まれて来たのが罪。
人の温もりや会話を欲するのも罪。
神隠しに遭うくらいに弱いことも罪。
そいつを止められないのも、罪。
人の世なんざ、理不尽なもんさ。
……今更。
[大きく息を吐いて]
肉、食いてえな。
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