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あー、諸君、聞いてくれ。もう噂になっているようだが、まずいことになった。
この間の旅人が殺された件、やはり人狼の仕業のようだ。
当日、現場に出入り出来たのは今ここにいる者で全部だ。
とにかく十分に注意してくれ。
本日は、G号ミステリーツアーへご参加いただきまして、まことにありがとうございます。
どこへ着くのかわからない、着くまで何が起こるかわからない。――実を申しますと、私もわかりません。そんな一風変わった旅を、どうぞごゆっくりお楽しみ下さい。
さて皆様、IDカードはお手元にございますか?
こちらのカード、一つ仕掛けが施されておりまして。
[アーヴァインの視線を受けて、シェフがラウンジの照明を落とす]
IDナンバーの下に、カラーが浮かび上がりましたでしょうか?
赤、青、黄、緑、桃、黒の5色がございます。
こちらを使いまして、一つ簡単なゲームを。
どなた様がどの色なのか?正解者にささやかなプレゼントを用意させていただきました。
当てていただくのは、各1名様しかいらっしゃらない「赤、青、黄、緑、桃」です。
黒以外の方は、すでに一歩リードということになりますね。
[落とされていた照明が、徐々に明るさを取り戻していく]
[アーヴァインは参加者全員に、1枚ずつカードを手渡していった]
こちらのカードに最後に記入していただいていたお名前が、貴方様の推理ということにさせていただきます。
到着時刻は決まっておりませんので、変更の際はお早めに。何度でも書き換えていただいて結構です。
もちろん、このゲームへの参加は任意ですので、興味がない方はそのままカードを破棄していただいて結構です。
[そこで電話が鳴り出して、アーヴァインは、失礼と言ってエントランスのカウンターへ向かった]
失礼しました。
少々手違いがありまして、えー、私どもの手配しておりましたスタッフが1名入れ違ってしまったようです。
本来でしたら4名の当社専属アクターが、皆様の中に紛れるという形式でしたが、どうやら外部劇団の方が2名と、当社アクター2名が乗船しているようです。
そうは申しましても、私は船内で何が起きるか、そしてアクターが誰かなのかは知らされておりませんので、何事もなかったかのように進めさせていただきます。
それでは、ミステリーツアーをお楽しみください。
何かありましたら、お気軽にお申し付けくださいますよう。
[深々と一礼すると、ラウンジの端へ移動していった]
[カウンターの電話が鳴り、アーヴァインが足早に近づく]
はい、G号6階…ああ社長ですか。ええ、10人集まりましたよ。
『わしの自慢のアクターズはどうだ?』
訊こうと思ってたんですが、誰が客で、誰がうちの人間なんですか?
『さぁ?』
さぁ、って…。このままだと、私も誰を連れ去ればいいのか。
『その辺は、自慢のアクターズがちゃんと』
いや、それもどっかよその劇団員が混ざってるって話じゃないですか?
『えぇっ!?』
知らなかったんですか!?
『まぁ、事件が起きて、最後までトリックが見破られなかったらそれでいいじゃないか』
こういうのは、見破れた方が面白いんじゃないでしょうか。
『そういうもんかね?』
カタルシスってやつですよ。
[電話を切ると、カウンターに置きっぱなしだった地図、そして本社から届いていたFAXをメッセージボードに貼った]
[静まり返ったラウンジに佇んでいると、カウンターのファックスが紙を吐き出した。
それを手にして、ほぅ、と声を零す]
ケナー君、やっとメインイベントです。
腕がなりますね。
[読んでいた紙を丁寧に折り畳んで、スーツの内ポケットに仕舞いこんだ。
入れ代わりに取り出したIDカードを、メッセージボードに貼り付けて]
スタッフルームの鍵です。
果たして、部屋に用意したヒントに気付いてくれる方は、いらっしゃるでしょうか。
名探偵誕生を心待ちにしています。
[アーヴァインは、そう言い残してラウンジを離れた。
その後、彼が6、7階に姿を現すことは*なかった*]
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