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く……っ、そ、
[足がふらつく。頭がガンガンと痛む。
さっきぶつけたところだろう。
振るわれる鑿を避け、錐を振るう。
決着は、つきそうになかった。]
──…理由、か。
関わりがなかった所為も、あるな。
関わりない奴のほうが、……やりやすいだろ?
[互いに武器を振るいながら会話する。
ちょっと前には、考えられないような風景だった。]
守りたいのは…、そうだな。
守りたい。
その為に、見知らぬ相手を蹴落とそうと思うくらいには。
………ッ!!
[大きく振り被って狙いにいった錐を外され、バランスを崩す。
そのまま、身体を開くようにしてフユキの後方へと飛び下がった。
は。と、息をついて振り返った。距離を取る。]
あんたを狙ったのは、俺からは傍観者に見えたからだ。
生きたいだけじゃ、生きるに足りない。
気持ちだけではやっていけない。
生き残るために──…戦えないのなら、それは敗者だ。
俺は生きたい。生きて守りたいものがある。
その為になら…、見知らぬあんたを、殺す。
[錐を構えた。右手首、日記の端末に手を触れる。
時が満ちる。神の日記の力を奮う──はず、だった。]
[けれど]
────…っ
[力は、奮われない。別の場所で発動したのだ。
薄暗闇の中、顔色が変わった。
く。と、唇をかみ締める。]
これ以上は無理、か。
…っ、の。逃げるのか。
待て!!……くそっ!!!
[がしゃがしゃと音を立ててカートが押し付けられる。
日記の力なくば、所詮はただの人だ。
結局はなす術もなく、フユキの背を見送ることとなった*]
…日記を取られた?12thに?
[困ったように告げられて、目を見開く。
少し考え込むような、間を置いてしまった。
謝るクルミに、首を横に振る。]
いや、謝ることはないさ。
日記を取っていった…ということは、
12thの狙いはゼンジさんかな。
その…、…壊すなら、もうやっているだろ。
[言いたくないように、その言葉を口から押し出す。]
[血に汚れたポールを拾い上げ、手に収める。
彼女に渡さなくてはと考えていた、動きが止まった。]
────…、な、に…?
[思いがけず、声が零れる。]
ソラ、が……、
[3Fで。ここで。
日記に新たな未来が書き加えられる。
”屋上でソラの遺体と対面する”
クルミを振り返った。
ただならぬ気配は伝わるだろう。]
[クルミへと日記越しの言葉を伝える。
足を踏み出したのはどちらが先だったろう。
駆け出した。
動かないエスカレーターを上り、フードコートを抜ける。
怪我にお互い足を時折縺れさせながら、
そんなことは感じていないように、ただ走った。
血に汚れたポールを片手について、屋上に立つ。
幾人かが振り向いたようだった。
けれど、それよりも目に留まるのは、]
…大事だよ。だって、俺たちは欠けちゃいけない。
欠けてしまえば、それだけゲームは終わらなくなる。
だから俺たちは、……。
[───利害ではなく、信頼で。
そう、別の人物と交わした言葉が脳裏を過ぎる。
僅かに顔を歪めた。
彼らの信頼など、得られている気はしない。
無論、あの彼からも。]
……悪い人じゃあ、ない。
[小さく、答えにもならないことを呟いた。]
─ 屋上 ─
[ソラの亡骸は、ひどく静かに10thの傍らにある。
彼らの元へポールを置きかけ、その手を止めた。
貰っていくと宣言するように引いて、ぐ。と握りなおす。
それから暫く、彼女の顔を呆然と見なおした。]
守るって……、言ったのに…
[乾いた声。
独り言のような音は、どこまで空気を震わせたか。]
……っ!
[ぎりりと握り締めた拳に爪が食い込む。
肌が破れるまで、拳を白く握り締めた。
ソラの傍らに眠る男は、あの日、誰かを守るために来た男。
彼は誰かを守って逝き、自分は守れずここに在る。
彼が逝ったのは、日記という力の差だと思っていた。
内心、哀れんですらいたというのに。
けれど守れなかったのは、何の差だ。
己自身の力のないが為ではないのか。
───グリタの口髭が、笑う気がした。]
ゼンジさんはただ、ソラと10thは共にはと…
…っ、クルミ!!
[彼女の向こうに、セイジの姿も見える。
傷つけてしまった相手だ。
彼の金の瞳に、あの時浮かんだ色は忘れていない。
次に会ったら詫びたいと、話がしたいと思っていたのに。]
…クルミ。
12thはクルミの日記を奪った。
ゼンジさんは12thを倒した。
クルミに渡したいからって、言われていたんだ。
俺、ソラのことで動転していたから……。
伝えるのが遅くなって、ごめん。
[クルミに向けて説明をし、二人へと小さく頭を下げた**]
……セイジ。
[ゼンジと共にある彼へと、声を掛けた。
名を呼んでから迷うように、少し、沈黙をする。]
…どうかしていた、悪い。
偉そうに言った癖に、あれじゃ呆れられても当然だ。
けど…。もし良かったら、あとでまた話せたら、……嬉しい。
[そこまで口にして、彼へ頭を下げる。
動くとじくり。と、首の後ろと脇腹が痛んだ。
未だ彼らが屋上に留まるなら、それ以上は口にせず。
視線が交わるだろうかと、暫しセイジの上に視線を留める。]
それじゃあ、また。
[やがて踵を返し、傷の手当てをすべく階を下った*]
[口を引き結んで、ポールを手に歩く。
血のついたポールを手に、傷だらけの姿は異様だろう。
けれど呼び止められることもなく、階段を下った。
エレベーターには12thの死体。
彼が生きて思惑を行動に移していれば、
未来の記述は変わったのかも知れない。
けれどもうそれが記述されることは、永遠にない。]
…わかった。
[囁くように落として、一人階段へと向かった。
気付けばポールを支えのように使って、ついている。
一段一段降りていったが、ついに途中の踊り場にへたり込んだ。
恨めしく階数表示を見れば、2階と3階の中間であるようだった。]
───…は。
[壁に背をつけて、座り込む。
首から後頭部をぶつけたあとは、打撲だろう。
鈍い痛みは頭痛のように変わりつつある。
脇腹は、じんじんと心臓と同じリズムで痛みを伝えてくる。
落ち着いて見てみれば、
シャツごと腹を裂くように鑿の刃が滑ったらしかった。
内臓に突き入れられなかっただけ良しとはいえ、痛む。
耳朶に、未来を告げる日記が響いた。
見上げてみれば、あとを追ってきたらしき姿がある。]
セイジ。
[自ら頼んだくせに軽く目を見開いて名を呼んで、
それから、嬉しいのか情けないのか分からないような顔で、]
ごめん。…ありがとう。
[礼を口にした。]
……酷いことをしたな。と、思って。
[なんでと言われれば、また眉が下がる。
傷口を看てくれるのには抗わず、目の前に揺れる髪を見ていた。]
俺はお前の気持ちに…酷いことをしたと、思ってさ。
だから、きちんと話がしたいと思って。
…、ああ。
[その通りだと思う。
瞼の裏には、先に見た冷たいグリタとソラの姿がある。
あの怪我は痛かっただろう、と思った。
ぐ。と、唇を引き結ぶ。今はその時じゃない。]
お前───、”も”?
[セイジと間近に視線が交わった。
疑問は、先に見たゼンジとの親しげな様子を思えばそうかとも思う。]
うん…。だからさ。
俺は、”仲間”を増やして勝とうと思っていた。
[言葉を継いだ。]
俺は鬼で、だから日記で繋がる仲間とあとは、
他の”仲間を”見つけようと考えた。
自分が生きながら最大に世界を救えるのはこの遣り方だけで、
だから俺は、仲間と呼べる人を探していた。
…こういうと綺麗そうだけれど、別に綺麗なものじゃない。
人数は多い方が勝ちやすい。
だから俺は、完全に俺の利害で動いていた。
クルミやソラと出会ったのは偶然で、
話してみたら2人とも裏がないっていうか──…
だから、これでいいと思ったんだ。
丁度いい味方を2人ゲットしたくらいに、思っていた。
心から信用出来るとは、最初は別に思っていなかった。
けどさ。
会話をして、行動をして……ソラが言ったらしいんだ。
俺やクルミが、鬼でも何でも関係なく守る、…って。
それは利害とかじゃなく、気持ちだと思う。
俺は利害を思って動いていたけれど、
結局、何だかこう──…自分で納得出来ないと、
満足出来ない気が、してきて、
[クルミに問いを掛けられ、グリタの願いを聞いた。
思いは少しずつ、この世界で変質してきた。]
…だからセイジが、
信頼で動きたいと言うのを聞いたときは嬉しくて、
そんな風に在りたいと──…そう思って、
鬼役とか関係なく手を結べたらいいと思って、
…──それも利害のうちでも、あったけれども。
やっぱり…嬉しくて、
だからあの時俺が言った言葉は、
半分くらいはきっと打算で、けれど半分は本当だ。
けど、その”半分”が、きっとお前を傷つけた。
…俺は、日記の仲間にも信用があまりないから、
大事な仲間だと言っても、要らないような顔をされてしまうけれども、
──…多分、大事だと思うのは返されるのが大事じゃないから、
[そしてひとつだけというものでもないと思うから]
俺からは大事な仲間だと言い続けようと思っていて、
だから──…お前も、
ソラも、クルミも大事だけれど、
あっちが。とかじゃなくて、お前とも大事だと言いたいと思う。
そんな風な関係になりたいと願う。
……我侭な言い草とは分かっているけど、
もし出来るなら、もう一度あの時の言葉を繰り返したい。
[口にするのは、あの時セイジの表情を見たから気付けたこと。
傷ついた金の瞳を見たから、気付けたこと。]
けれど、今度はすぐにとかじゃなくていい。
ゆっくりでいい。
そんな時間があるかは分からないけど、それでも。
お前と、利害じゃなく…気持ちで繋がりたいんだ。
俺はお前に、これを伝えたくて──…、…
なんか、ごめん。
[饒舌を恥じたように、口を閉じた。]
[傷口が、鼓動のリズムを伝えてくる。
当てられる手は布越しに、彼の体温を伝えてくる。]
…、ああ。
[彼が失望を重く語るのに、息を落とした。
返す言葉はなくて、それを受け止める。
言い訳は、ただ軽くなるだけだろう。]
うん、多いな。
…多いって、実は、言われた。
[誰からとも言わず、続ける。]
これだけの手しかなくて──…
零れ落としてしまうものもあって、でも、
…俺にはこれが、
ただ生き残るだけのゲームに思えないから。
勝手な、…もしかしたら鬼だから思うことかも知れないけど。
手を伸ばして、欲張りでも掴めるだけ掴みたい。
…──ただの我侭だと、分かっているけど。
[告げる。彼が応えないことに、強い感情はない。
多分そうだろうとは思っていた。
けれど伝えたかった。伝えずにいられなかった。
これも自分の、我侭だ。]
────、うん。
[大事なもの。
クルミの強さと優しさを守りたいと思っている。
大切なものに思っている。
けれどセイジの思い。
痛みを連想させる言葉に、告げられる言葉を自分は持たない。
だから、口を噤んだ。]
…そっか。
お前にいきなり攻撃されたら、きっと俺は死んだな。
こんな風に手当てをして貰えることもなかったな。
[架空の空想に、少し笑う。
何だか切ないような笑い方になってしまった。
傷口を押さえていた手が離される。
見れば新たな血の滲みは、随分と減っていた。]
……すごいな。
[ごく素朴な感嘆が漏れる。]
ここで会えて良かったと、思ってくれるか。
俺もちょっとだけ思ってる。
……こんなところじゃなければ良かった。
でも、ここじゃなければ会えてなかった。
ならばやっぱり、会えて良かった……。
[まったく、現実は子どもの言葉遊びじみている。
視線が少しぼやけて、目は心の裡を覗き込んだ。
ここで出会った全ての人に、それは言えるのだから。]
────、え?
[だから、それはちょっと不意打ちだった。
目を見開いて、セイジの顔を見つめ返す。
金の猫目を間近に見て、瞬いた。
ゆるやかに、口元に柔い笑みが浮かぶ。]
… うん。
こちらこそ。
───…ありがとう。
[嬉しくて思わず、大きく微笑んでしまった。
そのままちょっと間抜けに、そうして*いた*]
今までは、こんなに望んだことはなかった。
安穏として何も望まずに、静かに死んでいくだけだと思っていた。
けど──…だから。
ここに来た意味がもしあるなら、
変化に意味があるなら、俺はこれを大切にしたい。
[自らの手を見つめ、セイジに答えた。
甘い理想論だと分かっている。
既に零してしまったものは、もうそこにある。
自分の望みを貫くことは、それ以外を切り捨てること。
望みが多くなればなるほど、全ての手は繋ぎきれない。
…───分かっているけど。
望む未来は、諦めた瞬間記述を変えてしまうと知ったから。]
[別れ際に声を掛けられた>>203
静謐な視線から先までの穏やかな気配は消えている。
それへ目を細めた。語られる言葉を聞く。
揺らがない彼とは対照的に、少し眉根が寄った。]
…俺はクルミもゼンジさんも大事に思うよ。
けれどゼンジさんは判定を…するひとだ。
彼の言葉は時折遠くて、少し見えにくい。
だから彼女はああ言ったんだと思っている。
クルミは、真っ直ぐに正面から貫いていく人だから。
彼女が重みを感じていないなんてことは、絶対にない。
ただその重みも負う覚悟を決めているだけだ。
だから──…
彼女がゼンジさんに危害を加えることはない。
それでもセイジが彼女を狙うなら、俺は止める。
殴ってでも押さえつけてでも、絶対に止める。
刺すかも知れない。けれど殺しはしない。
お前が誰かに狙われても、俺はきっと止めるよ。
俺は未だ…お前を諦めちゃいないから。
[静謐な瞳を真っ直ぐに見て、欲張ったままの言葉を返す。]
……けど。
[その瞳が少し揺らいだ。
物思うように一度、瞼を伏せる。]
逆を望むなら、俺はそれでも構わない。
それがセイジの望む道なら、それを貫けばいい。
───これ、ありがとう。じゃ、な。
[治療に礼を言って、複雑な笑みを向けた*]
[一人になり、服飾売り場で身なりを新たに整える。
青いジーンズに白いシャツ。
それに軽めの上着を羽織った。
そして、周囲を歩く警官へと歩み寄る。]
───武器が欲しい。
[直接的に要求を口にした。
渡されたものを、ホルダーごと腰に装着する。
ずしりとした重みが腰に加わった。
ポールを手に、未来日記を確認する。
2ndの場所は、すぐに知れた。]
[物理的に襲おうとするなら、相手の未来日記に記される。
出会う未来を選ぶなら、それも日記に記されるだろう。
だから敢えて、隠れるをしない。
”1stは、3Fフロアで2ndと5thと遭遇する”
望む未来のまま、日記は更新された。]
…逃げないんだな。
[当たり前のことを口にした。
こっちは一人、向こうは二人。
いかに武器を手にしていても、数では不利だ。けれど、]
デッドエンドフラグは立った。
[手にしたポールで、5thを指し示す。]
そうだな。そっちの動きはすぐに分かるし。
[無駄との2ndの認識に同意を返し、5thを見遣る。
怪我の程度はさして重くもなさそうだ。
それよりは2ndの方が余程重傷なのだろう。]
鬼を聞いてどうする?
あまり意味がないだろう。
[答える気がないとばかりに肩を竦めて、]
それより戦う前に聞いておきたいことがある。
二人は、勝ち残って神になってやりたいことはあるか。
[望みのありようを聞いた。]
まあ、そうか。
…いや、ジャッジはしない。出来もしない。
別に神になりたくて戦っているわけでもないし。
ただ何を思っているのかを、聞いてみたかった。
どんな相手なのかと、会話出来るならしてみたくてな。
[2ndには肩を竦めて、5thには首を横に振る。
ただ知ろうと思った。
知ることから逃げるのではなく、
自分がどんな相手を手にかけようとしているのかを知ろうと思った。
けれど無理に促すつもりもなく、]
なら、戦おうか。
[躊躇わずにポールを竹刀のようにして構えた。
運動の一環レベルであるから、さして期待も出来まいが、
なんの心得のないよりマシだろう。]
[5thの返答が素直だったから、少し笑った。
憎いわけでもなく、悪いわけでもない相手だ。
それをエゴのために今、死なせようと自分はしている。]
そうか。見たまんまだな。
[皮肉ではなくそう返して、ふたりの動きに目を配る。
やはり2ndの動きが鈍いと見て、5thへと向き直った。
腰に下げているものは、まだ手にしない。]
[セイジの手当てのおかげで、脇腹の傷は押さえられている。
痛み止めは頭痛をおさめてくれていたし、
服を代えているから、一見すれば万全にも見えるだろう。
とはいえ、長くやりあう体力はない。]
……せあッ!!
[素早く足を踏み出し、モップを手にする5thへ向かう。
中段からモップにポールを打ちつける音が、辺りに鋭く響いた。]
怒鳴る?……ああ、
[少し目を見開いてから、思い出して頷く。
いや。と、小さく口にして、]
悪い。
[簡単な謝罪を告げた。
気遣うかの言葉には肩を竦めて答えることなく、
本気を問われれば、軽く目を眇める。]
───そっちもだろ?
[これ以上は必要ないとばかり、軽く返して唇の端を上げた。]
[数合の間、モップとポールが打ち合わされる。
横薙ぎを防がれ、掬い上げる動きを強引にやり過ごした。
激しく動けば、脇腹の傷が開く。
じわりと嫌な感覚が、身体の中央に広がっていく。]
────ッ!
[ガードが開いたと見えた。
それへ頭上から打ち込むようにポールを振るう。
身体が開いた、そこを蹴られた。
襲い来るモップの先を、ギリギリで身体を開き避ける。]
…っ、そ……
[距離をとれば、視界の端に2ndが映る。
それへ脇の棚からボールを手に取り、
纏ったビニールごと思い切り蹴りこんでやった。
その隙に再び来るかと思えば、5thの姿はまだ遠く、]
…───そっちも痛むか。
[言わずもがなとばかりに投げかけて、
左を狙って再びポールを打ち下ろした。]
[蹴られた脇腹の傷は、すっかり開いて、
白いシャツの上にじわじわと赤を滲ませていく。
羽織った上着の合間からでも、それと見えるほどに赤く。
荒く大きく息をついて、ポールを強く握り締めた。
───まだだ。]
じゃあ、勝ちだ。
[返答に返す言葉はごく短い。
覚悟負けぬと言い切らない相手に、負けるわけにいかない。]
そっち……先に、してやろうか。
[荒く息をつく2ndへと低く声を投げ遣る。
どうにか身体を起こしてみるが、
開いた傷はつけられた時よりも、なお痛い。
それでも、ポールを握った。精一杯握るが、血や汗で滑る。
拳銃を乱暴にポケットへと突っ込む。
そうして、2ndの頭上に金属の棒を振り下ろした。]
人を殺すのに足る理由か。
世界を滅ぼすのに足る理由か?
───…そんなもの納得させる理由など、ない。
けれど5thは本気かと俺に聞いた。
俺はそうだと答えて、5thは受けた。
覚悟を決めてやりあっているだけだ。
…あなたも撃ちたいなら、撃てばいい。
[強い瞳をゼンジへ向ける。]
……っ、させ…るか!
[セイジの姿が見える。
何をする気なのかなんて、分かっている。
5thへと向けていた銃をポケットへと押し込み、
ポールを手に握った。
立ち上がり、駆ける。
素早く動いたつもりでいたけれども、随分と遅い。
それでも全力で、2ndの前に置かれた拳銃を弾き飛ばそうとポールを振るった。]
……に、たいなら…、
[誰の声とも確かめず、コハルの声に低く言葉を紡ぐ。]
か…ってに、死ねばいいだろ…。
自分で、死ねよ。
殺してくれとか、
…───甘えてんじゃねえ。
[けほ。と、咳き込めば、口の中に血の味がする。
吐き捨てるように言い捨てて、酸素を吸い込む。]
…死なせない。
[それは、少し遅れてクルミへと向け。
死なないと言い切る彼女に、言葉を重ねる。
その望みを耳にはしてないけれども、
想いは、きっと重なっているはずだ。
強く、支えを求めるようにポールを握り締めた。]
……安易に人の名前を、呼ぶな。
今、構っている暇なんてないんだ。自殺志願者。
死ぬ覚悟も出来ないなら、黙って見ていろ…!
[コハルに言葉を叩きつけ、ポケットから銃を取り出す。
セイジに教わったように片手で傷口を押さえ、彼を見た。
クルミを庇う位置に立ち、セイジと対する。]
嫌だ。
[返すこたえは、ごくシンプルだ。
取り出した銃は結局、手に持ったまま。
セイジが教えるように両手で銃を構えるのを見れば、
泣き出すかの表情に顔が歪んだ。
歯を噛み締め、怒ったように彼を見つめる。
ぐい。と、銃をポケットに突っ込んだ。
代わりのポールを、やはり竹刀のようにして構える。]
言っただろう。止める。
お前は殺さない。クルミも、死なせない。
ある。
[もはや駄々っ子のようでもある。
またも短く二文字で答えた。
揺るがない銃口の先、セイジの顔をただ見つめる。]
…俺がそんな未来に、して、みせる…!!!
[次は止まらなかった。駆け出す。
彼は手慣れている。
銃口が揺らぐことは、きっとないだろう。
それでも駆けた。その手の銃を、下ろさせる為に。]
──── は……ッ!!!!
[ポールを突きの形に構えた。
構えた銃を下、鳩尾を狙ってポールを突き出した。]
いやだ… …ッ!!!
[どん。と、ゼンジの身体を突き飛ばす。
ならば彼はどこだ。
コハルはもう死んだのか。
ならば、死ぬべきはあと一人────、]
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