[呼び戻されるように覚醒し、一番に気づく。
あったはずの感触がなく、温もりもない。その子が見れない]
ウェンディ。
[名前を呼ぶ。返事は返らない。いない。]
どこだろう。
[起き上がって呟く。当てもなく不安そうにとてとてと歩きだす。
その場を離れ、駆り立てられるように少女を*探し始めた*]
いない。
家に帰ったのかな。心配だ。いない。
[根拠もない焦りを追い払うように呟きながら、暗い建物の中を小さなぬいぐるみが歩いている。
諦めもせず、うろうろと一人で探し続けている。いるはずのない場所も総て巡り、一度探したところにも何度も何度も顔を覗かせた。
変だな。いない。また囁いて繰り返す。ひたすら繰り返す。
あと何百回やってもぬいぐるみがあの少女を見つけることないだろう――。]
[呼ばれて、立ち止まる。声の主を見上げ、確かめるように名前を呼んだ]
メイ。
[逡巡したあと、ぽつりと呟いた。自分でもよくわかっていないのだろう。そんな声になった。]
ウェンディがいないんだ。
さっきまでいたのに。抱きしめてくれたのに。
探しても、見つけられないんだ。心配です。
うん。
[返事は短く、ただこくんと頷いた]
いない。ずっとすれ違ってるのかな。いませんでした。
家に帰ったなら、帰る前に言うよね。……じゃあ、どこだろう。
[途方に暮れたような声でそう言った]
[メイの視線につられるようにマキを見やる。]
おはよう。また会えたね。縁があるみたいだ。
……マキは、ウェンディがどこにいるか知りませんか。
うん。ありがとう。
[ぽむぽむと頭を優しく叩かれながらくりくりの目でメイを見つめ、そして再び小さく首肯して言った。ほのかに安心したのだろう、一瞬だけ声が和らいだ。それから、マキが尾で示した絵に目を移して――。]
ウェンディ。
[ぬいぐるみがかすかな声をあげた。悲痛な声だった。じっと絵を見続けながら、マキの説明を聞いていた。]
[マキの言葉を聞いて、漠然と理解する。そうなんだ、と。どこか得心したように言った]
じゃあ、戻るのかな。
うん。きっと戻る。良かった。
でも、たぶんぼくたちとは入れ替わりだね。それは残念だ。
[そこまで話した時、メイにぎゅうぎゅうと抱きしめられた。ありがとう。優しいね。大丈夫だよ。とスノウが言った。きっとメイの待ってる人も戻ってきます。とも。]
[自分を抱くメイの腕に労わる様に触れた。]
そんなことない。優しいです。
馬鹿じゃないよ。ちゃんと生きてるだけだよ。
事情は判らないけど、そんなこと言っちゃだめです。
[しんどかったら悩みを聞いてやろう!と威張ってみた]
ごめんなさい。ぼく何もできなかった。
警備員じゃありませんでした…。
[しょんぼりと言った。どうしよう。と言った。]
朝まで起きている?
出口を探して逃げてみる?
しかし坊主が今の騒ぎでもまだ寝ている。置いていくと人権問題に直結するだろうか。見たこともない大物です。
[ん。とメイにも頷いて]
では今度こそぼくもちゃんと見張っておこう。
ただ見てても何もできない可能性はあるね。
なにぶんこの身体です。
[申し訳なさそうに言う。
それでもそれなりに良いところを見せたそうだった。
――夜は*もう少し続くのだろうか*]