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― 住宅街 ―
[つまらなそーに歩いている。
その目は何か面白いことはないかとあたりを探りながら]
ちぇーつまんねーなぁー
[頭の上で手を組んで口を尖らす。
歩くつま先はこぶし大の石ころを器用に蹴飛ばして]
がっこーとか、なくなっちゃえばいいのに。
[ほぼ空っぽのランドセルを放り投げる代わりに、
すっこーんと勢いよく石を蹴り飛ばした]
『ウウウウウウ』
やっべぇぇ!
[石の飛んでいった方向から犬の唸り声。
肩をすくめてすぐに体の向きを変えて]
『ワンワンワンワンワンワンワンワンッ!!』
きたああああっ
[ノラ犬が吠えながら追いかけてくる。
逃げるその表情は、とても笑顔]
うひょぉーっ
あはははっ!おっもしれーっ!
[追いかけてくる犬と離れすぎないように。
けらけらと笑いながら道を*走っていく*]
―藍住中央公園―
かーちゃん、おせーなぁー…
[流石に犬とのデッドヒートは疲れたらしい。
公園のベンチにくったりと座ってぼんやり]
ちくしょー
腹減った。
[家に帰ればあるはずのオヤツ。それが今日に限ってなかった]
かーちゃん頼むよー。
ソダチザカリなんだぜ、オレー
[偉そうに胸を張って、ふんぞり返って。
口をへの字に曲げてみる]
ぐうぅぅ。
[虚勢もほんの一時。
空しく響く腹の虫の鳴き声にまたくったり]
[のさーっとベンチに背中を預け、ぐうう、と身をそらす。
逆さまになった茂みの中に、サッカーボールを見つけて]
よっ、と!
[勢いよく立ち上がる。
すたすたと慣れた手つきで茂みをかきわけて
目当ての物を手に入れてしたり顏]
っと、よっ、よっ、っと
[とんとんと小気味良くリフティング]
[誰かの視線には気づかずにだだポールだけを見て。
たまにボールを頭に乗せたり、背中に乗せたり。
調子づいて勢いが止まらなくなったのか
やや焦ったような顏をして]
あっ、やべっ、落ちる、おっ、おっ
[…ぽてり]
あーあ。
…んあ?
[落ちて転がったボールを残念げにみて口をあんぐり。
いつの間にか非とに見られていたのに気づいて
口をぼかりと開けたまま辺りを見回した]
…み、みんな、よー…。
[やがてむすっとしてぼつり、と]
[自分よりずっと背の高い大人の男性がなれたように
ボールを扱うのを見て、口を尖らせる]
…あーっ、オレの、返せよーっ
[拾い物のボールをさも自分の物のように言って
パスされて戻ってきたボールを足で受け止める。
それをひょい、と上に蹴り上げて自分の手に]
なんだ、おめーら…
[不意に現れた大きい人々に警戒するように。
胸の前でボールをぐっと抱きしめた]
[知り合いらしい二人が話をするのを怪訝そうに見て。
しゃがれ声にまた口を尖らせた]
かーちゃんはまだかえってねーからいいんだよっ
[言いながら特徴のある髪型をじーーっと]
…だんご。
[ぼそっと口にすれば大人しかった腹の虫が鳴いた。
ボールを腹に押し当てて、むすっとして]
…べつに、心配なんてしねーもん。
[眉間を叩くだんごヘアを見上げた]
……あんがと。
[さっきから寒そうにしていた女の人から飴を貰う。
早速口に放り込んでもごもごと舐めれば
とりあえず腹の虫は黙ったらしい]
かわいい?
[だんごヘアをまたじーと見て]
…やっぱ変じゃん。
[はっきりと口にして、頬に飴の形を浮かせた]
かーちゃんは、そのうち帰ってくっからいんだよ!
[心配してないことなんてない、と聞こえて
それに反発するように言い切った]
…やった!
[だんごの女性がスナック菓子を取り出すのに
目をキラキラとさせて。
よかったら、と聞くが先かさっと手を出した]
くれくれっ!
へっへー。
[泣いた振りをしている隙に菓子を奪い、いそいそと開けて]
いっただきーっ
[得意満面の笑顔でぱくぱくと。
話している二人をよそに]
おっさんも、食うか?
[大人の男性に菓子の袋を差し出した。
さっきのボールの扱いから、只者じゃないと思っているらしい]
なんだコレ?
[男性に渡されたのは白い粒々。
クンクンと匂いを嗅ごうとしたが鼻が詰まっていた]
さんきゅー。
[へっへーと笑って粒々を口に放り込んだ]
…ж☆$%#(’&っっ!!
[目をぱちくり]
げええええ、なんだコレーっ!
[はひーはひーと息をしながら足踏みをして
残る粒々を乗せたままべえっと舌を出す]
はーっ
はーっ
はーっ
[そのうちに足踏みだけでは我慢効かずに
そのあたりをうろうろと走り始めた]
[不意に足を止めれば、喉がごくりと動く]
ん、が、ぐぐっ
[口に残る刺激を追い出そうと
大きく口を開けてはひーはひーと]
オトナって、わっかんねーっ!
ひでーや、おっさんー。
[はあはあと肩で息をしながら
粒々をくれた男性をむすっとした顔で見て]
なんでそんなまじーの、くえんの?
[他の二人にも渡す姿を見ては首をかしげた]
…あんがと。
[だんごヘアの女の子にジュースを渡されれば
素直に受け取って。
あっはっはと大人ぶった笑い声に小さくなりながら
ちゅうちゅうとジュースを飲む]
ぶふっ
[急にアタマを触られて肩をすくめた。
びっくりしたのとこちょばゆいのと]
な、なにすん、だよ…っ
[さてはオレのアタマにも団子作る気かと。
身をかがめても触る手からはなかなか逃れられないか]
[アタマをわしゃわしゃとされながら
肩をすくめたままだんごヘアの女の子をじー、と]
[名前を聞かれて、目をぱちくりさせ]
……でん、ご。
佐々木、伝悟。
[何で涙目なんだ?とおもいながら
なんとなくその涙目に逆らえずに]
[いい名前といわれて照れたのかやや俯きながら。
手を取って笑うイマリを不思議そうに見る]
…イマリ、な。
うん。
[覚えた。
けど……だんごのほうが覚えやすいな、とは口には出さず]
オレ、そろそろいくわ…
かーちゃん帰ってるかもしれねーし。
[だんだん手を取られたのが恥ずかしくなって。
乗っているジュースをイマリの手に押し付け、
そこから駆け出した]
じゃーなー!
[数歩駆け出したところで振り返って手を振って。
それからまた*駆けていく*]
―教室―
[教師から見えないように、隠れるようにして
机に覆い被さって頬杖を]
(ねみー。そんなん覚えたって役に立つわけねーじゃん)
[口には出さずに思う。
そんな風に思っている奴は他にいないのか?と思ったか
隣の席や、その向こうの子の顔をチラ、と見て]
『デンゴ、隠れてんのはわかってるんだぞ。この問題わかるか?』
[にや、と笑った教師に指されて、頭をかきつつ立ち上がって]
えーっと。ワッカリマセーンっ!
[極めて能天気な声で答えて、ぺろっと舌を出す。
教室には笑いが*響いた*]
―商店街―
[級友達と騒ぎながらの下校中。
揺れるランドセルは空と思えば、今日は何か入っているらしく。
皆一様に目を怪しげに輝かせて]
どこに置く?
『あの辺なんてどう?』
『おい、あれっ!』
[一人が指を指したのは裏路地に停められた一台の高級車。
子供達の顔がにいいいいと笑う]
せーっの!
[掛け声と共にジャンケンが始まって。
やがて一人が情けない声を上げた]
[実行犯に決まった級友にランドセルからブツを出して渡す。
それは、図工の時間に隠れて作った大作]
ほら、行ってこいって!
[小声で言って、実行犯となった級友の肩をとん、と押す。
実行犯はうん、と頷いてブツを手に車へそっと近づいた]
[はちきれんばかりのコーフンをそれぞれに抱いて、
目を輝かせて実行犯を見守る。
そして、犯行の決定的瞬間が…訪れる]
『べちいいいいいい』
[実行犯がブツを車のフロントガラスに向けて投げつける。
何かに似せて作った粘土の塊が、べしゃりと崩れて貼り付いた。
高級車は見るも情けない姿に相成れば]
やった!
[小声でガッツポーズをとっては満面の笑顔で実行犯を迎え入れる]
『こぉらぁぁぁぁぁぁ!!クソガキがーーーっ!
どこのヤツだぁぁぁ!!』
[向かいの不動産屋から車の持ち主と思しき男が
怒り狂って飛び出してくる]
逃げろっ!!
[口々に喚声を上げて皆が違う方向へと走って逃げた。
そう、こういうときは固まって逃げてはいけないのだ。
それに、集まる場所は決まっている]
…ぷっ。くはは、あははは!
[何が面白いわけではないが、面白い。
一人家路を走りながらけらけらと*笑った*]
―自分の家―
ただいまー…。
[秘密基地で散った友達と合流して
今日の反省やら次回の作戦を相談しているうちに
あたりはすっかり暗くなっていて。
お腹の空いた子供達は三々五々散って家へ帰っていった。
自分もそのうちの一人で]
かーちゃん、きょうはちゃんと晩メシも置いてってくれたな。
[鼻の下をこすりながら食卓へ座って、
一人だけの晩餐。
お笑い番組を見ては笑い、
トーク番組を見ては笑い。
いつしかくったりと疲れて寝っ転がったまま*夢の中へ*]
―放課後―
[掃除用具入れの奥に潜ませた今日のブツ
教室に残るのは自分達だけなのを見計らって取り出して]
おい、いるか?
『あー、うん、出てきた!』
[にいいいい。
皆同じような笑顔]
[一度、窓から身を乗り出してターゲットの位置を確認。
それは丁度隣の教室の窓の下に]
いくぜっ!
[厳重にビニール袋に封されたブツをさっと取り出して
くしゃくしゃのままのそれを手首のスナップを効かせて窓の外へ放つ。
牛乳がたっぷりしみこんだ、とびきりの逸品が広がりながら宙を舞った]
………。
………………。
[じっと声を潜めて帰りの支度をして]
『くぉらぁぁぁああああ!!誰だっっっ!!!』
[外から教頭の怒りに打ち震えた声が届く頃にはすでに廊下]
[サッカーボールを蹴りながら、イタズラなんてそ知らぬ顔で
教頭の傍を、そして校庭を駆け抜けて]
ぶっわははははははっ!
[堪えていた笑いをぶちまけた]
見たか?!教頭のカツラずれてたぜ!!オレってすごくね?
『見た見た!!テンゴさいこー!!』
[一仕事終えて朗らかな笑顔で向かうは、いつもの*秘密基地*]
―秘密基地―
じゃぁ、明日はケータんち集合な!
『おっけー』『えへへへ』
[なにやら秘密の会合も終わり間近で
やっぱり子供たちの顔は何か企みでもあるのか
それとも単に楽しみにしているだけなのかはわからないが
一様に満足げな笑い顔]
かいさーん!
[トタン板の出入口を捲って一味は外へ。
マンション造成で更地にされて久しい場所。
なかなか建設に至らず、資材の置かれたままのその一角に
日々悪巧みがなされる秘密基地はあった]
―駅前―
[植え込みの縁に座って道行く人を眺める目は
誰かを探している]
あ、かーちゃん!
[小さな声をあげて、ハッキリした化粧をした
スラリとした女性に駆け寄る]
[母親と二言三言交わし、頭をポンと軽快に叩かれて
へへへ、と頭をかく。
仕事へ行く母を見送ってから、
再び植え込みの縁に座った]
なに、食おっかなあー。
[明るい駅前の雰囲気がすきだった。
特に急いで行き先を決めることなく、
ただ明かりと、人の流れを見ていた]
……ぁ。
[人の流れの向こうに警官の制服が見えて立ち上がった。
何度も家出少年と思われて派出所の世話になったことがあったから]
ちぇ。
[母親にもらったお金をポケットにしまいこんで歩き出す]
さーみっ。
マフラーが要るかなー。
雪降りそうだし。
[雪が降ることを考えると自然ににーやりと。
ポケットに手を入れたまま、肩をすくめて住宅街へと]
―ケータ宅―
うおおおーまた勝ったー!!
[悪戯一味は揃ってTVゲームに夢中。
対戦ゲームで怒涛の10連勝を記録してばたり伸びた]
オマエらよえーよー!
[ごろんと横になったまま文句を言えば、
オマエが強いんだと言われて脇腹にパンチが入る。
ぐぇ。とカエルが潰れたような声をあげて体を起こして]
そろそろいかね?
[一味を見回してにいいいいと歯を見せた]
―藍住中央公園―
[入り口の近くの茂みの中。
公園のそばの交番が見える場所に身を潜めて。
木切れを数本、石を支えにしながら斜めに地面へ刺し、
空ペットボトルで作ったレールを置く]
あーもうちょい下、右みぎ…おっけ、そこそこ
[地面にはいつくばってその向きを確認して]
ビニール袋からコーラと何か小さな物を取り出す]
こっからが時間勝負だかんな。
[一味は僅かな緊張と、大きな大きな期待を込めた
なんとも言えない表情を浮かべ
射出口用意!
[一味のうち二人がフェンス際の茂みに手をかけた]
発射台用意!
[一人がさっき作った発射台を手で押える
よーっし!いくぜ!
[コーラと一緒に取り出した小さな物の包みを開けて
中身を2粒手に取ってコーラの中に落とす。
急いで細工をしたペットボトルの蓋で栓をして
発射台に飲み口を下にして置いた]
発射!!
[言うと共に栓をはずす。茂みが二人の手で掻き分けられると
そこにはぽっかりとフェンスに開いた穴。
勢いよくコーラを噴出しながら、
ペットボトルはフェンスの穴を抜けて交番へ向かって飛んでいった]
[やがて聞こえる騒ぎの声を背中に受けて
意気揚々と犯行現場を後にして]
『サッカーやろうぜ!』
おー。やろうぜー。
[サッカーボールは秘密基地に置いてある。
それを取りに集団で向かう一味の後ろからは]
マテ…オマエら…今度という今度は……!
ゆるさねえぞ……
[自転車に乗った若い警官が、
ぶつぶつと文句を*言いながら……*]
―自宅―
『あんた、いいからそこに座りなさい』
[母親に嗜めるような口調で言われ、
しょぼんと食卓の椅子に座る]
『これで何度目だと思ってんの』
[普段ならばええと…などと指を折って数える振りをずるのだが
さすがに今はそれは出来る空気ではなくて]
『あのね。お母さんはあんたに悪戯をよせって言ってるんじゃないのよ。
ただね、やるなら………もっとうまく。
嫌な思いをする人がいないようなものをしなさいっ』
[にいいと笑う母親の顔は子どもとそっくりだった]
いってらっしゃーい。
[つまらなそうに口を尖らせ、玄関の扉が閉じるのを見る]
…ちぇ。
[居間へ戻ってごろり。頭の上で腕を組んで]
かーちゃんたち呼ばなくてもいいじゃん…
あのオマワリ…
[それはもう、こっぴどく怒られた。
悪戯一味は全員母親を召喚され、
警官と母親からのダブル説教で反省を通り越してぐったりと]
くっそー。
[このまま怒られたままで済ますものか。
逆襲する方法を考えつつ、小さな体には長時間の説教も重かったようで
ふああと欠伸をすれば寝息を立てて、*くったり*]
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