[ソラの言葉を心地よさそうに聞いている]
未来か──。
[ネギヤが目に入っていないらしきソラに首をかしげる]
混ざったんじゃないのかな?
あれ。まぁ──いいか。夢だし。
夢かな。
[くすりと笑う]
消してほしいの?
ん──。
[少しだけためらう。
すっと立ち上がり、棚から【レン】と書かれた蝋燭を持ってくる]
じゃあ。オレのはソラさんが消して。
ありがとう。誕生日……か。
[ソラに何かうまいことを言おうかと思いつつ悩んでいるうちに炎を消されてしまい、あわてて口を開く]
オレはソラさんの居場所が見つかって、幸せになることを祈ってる。
[ふーっと息を吹きかけて、”ソラ”の炎を消した]
間に合って、良かった。
[蝋燭が消えると同時に、ぴゅうと消えてしまう気もしていたので。
ほっとして、ソラに笑みを返す]
地球の誕生日は、今、でいいんじゃない?
−?−
[”ふぁーあ……ねむいな……寝てていい?”
合成音声がえんえんと間抜けな声を繰り返している]
寝てていいよー。
[目覚ましにのんびりした声が答えて、布団から伸びた手が頭を叩くと声はやむ]
[”ふぁーあ……ねむいな……寝てていい?”
目覚ましのスヌーズ機能が再び喋り始める]
……。
[あきらめたように布団から起き上がり、金髪の首をこきりと回し、仕様どおりの無残な姿にする。
”人狼なんているわけないじゃん。みんな大げさだなあ………。”
”あぅ。”
最後にそう言うと、目覚ましは沈黙した]
どういう目覚ましなんだこれ。
[半身を起こして、ぽりぽりと頭を書く]
もう、5年も建つってのになぁ。今更夢に見るとか。
[長い夢を見ていた気がした。
瞬きをして首やら肩をくきくきと鳴らし、大儀そうに起き上がる]
何で今頃なんだろうね。
正夢、なのかな…………?
[子供の頃から幾度となく見た正夢を思い出すが、軽く笑って頭を振る]
まさかな人狼に食い殺される夢なんて。
絶対チカノの贈り物の仕業だ。
[大人気との触れ込みの”ゲルト目覚まし”。
全くもって趣味が*わからない*]
─?・キッチン─
[火の気の無いキッチンで家政婦の猫村さんに挨拶をする。残念ながら人なのだが。
コーヒーを入れてもらってのんびりしていると、背中に聞きなれた妹の声が聞こえてきた。
キクノに朝の挨拶を返して、タカハルのことを聞けば朝練だと言う]
大きくなったもんだなー。
[キクノに口をへの字にされて、じじむさいと言われつつもどうしても感慨に耽ってしまう。
──そこで夢を思い出す。タカハルとキクノ。
夢の中で自分は弟と妹になっていた。
なりたかったのだろうか──庇護される対象に。
口の端に笑みを浮かべてわずかに頭を横に振る]
そういえば、お前さ、和菓子の洋菓子化に反対してたよな。
[キクノはこくりと頷く。
近年の和菓子の売上の低下。洋菓子──スイーツへの流れ。職人の反発と若手の後押しに挟まれていて、あんまり寝ていなかったかもしれない]
無理して変らなくてもいいのかもな。うちはうちだし──な。
[一番自分が逃げてしまいたかったのは老舗の和菓子屋を継いだ頃だと思っていた。
その頃は山のような重圧に耐えつつ、がむしゃらに、何とか片付けてきた。
新たな一手を打とうかと言う時に、逃げたくなるって言うのは何だろうか]
焦ったのかもな。ま。羊羹でも食いながら、ゆっくり考えるか。
[猫村さんに入れてもらったお茶と羊羹を食べていると、朝から羊羹なんて太るよ、とキクノが笑う]
お前少し太ったほうがいいんだよ。まじめな話。
ほら、ソラさんみたいに──。
[それは夢の中に出てきた女性。
誰よと聞かれて、少し口ごもれば何か誤解をされたよう]
イヤイヤ。ええと、知り合い。
[適当に答える。
さらに誤解されているかもしれないけれども、なんとも説明のしようがない]
ほらキクノ時間だしそろそろ行かないと遅刻だぞ。
[無理やり話を切り上げてキクノを見送る]
じゃあオレも行ってきます。よろしくお願いします。
[猫村さんに挨拶をして家を出る]
森を出て、駿河の国に出なくてもいいか。
[吹いてくる風に目を細める。
夢で感じたような、涼やかな風]
のんびり行こう。無理に変らなくてもいい。
[楽しそうに笑いながら、歩き出す。
変えないことでまた何かあるだろうけれども、*実に迷いがなく*]