[晴れた青空に高らかと笑い声をあげる]
さすが私の輝子さん。
なぁ、ゴロウマル。
[だてに大きくないだろう?と肩を組むと再び笑う]
ところで、今日は何をすればいいんだい?
よっし晴れたぞー!!!
[やっぱりジャージ姿の女子が一人、教室の窓を全開にして叫んでいる。
テンションのあがった見知らぬ生徒が「おー!」と拳をつきあげてくれた]
[肩を組んでいる男子を見ながら、鉢巻を締める]
ベックって、意外と暑苦しいよね。
[コハルの雄たけびには、右手を挙げて、暑苦しく]
勝つぞぉー!!
輝子さん!? 名前まで!?
[どの位置から見ても、ひと目でわかるベックの輝子さんは、どうやら外を警戒中らしく輝く眼差しは見えなかった]
なにって……体育祭だろ。
ラジオ体操やって選手宣誓やって100メーター走やって借り物競走して……
って抱きつくなよ暑苦しいな。
[むいむい押し返しても剥がれないのは経験済みだ。無駄な労力は使わない]
コハル元気だなあ。
というか、みんな元気だなあ。
[勝つぞ、おー と教室内でも上がる声。
わんわん、と犬の吠え声がした]
まったく女子は姦しいな。
[やれやれと肩を落とす。
自分の話が出てるなど、露知らず]
ラジオ体操とはまた地味な!
[プログラムを口にくわえると、三つ編みを編み始めた*]
晴れたわね。しかもすごくいい天気。
(大きく伸びをしながら空を見上げた)
さて。今日は頑張ろう! (クラスメイトたちの雄叫びにあわせ、右手を上げた*)
地味ったってしょうがないだろ。みんなの体操するわけにいかないし。
その割りにはやる気じゃないか。
[ちゃちゃっと三つ編みを始めるベックに、笑いを漏らす]
晴れて良かったな。
[視界に入ったアンに声をかけると、不思議そうな顔をされた]
いや。
てるてる坊主が首切られなくてよかったなと思って。
[言って、肩をすくめる。
何でもない、といって笑った]
首を切るとは物騒な。
昨日の神隠し話、信じているのかゴロウマル。
[にやりと笑うと、そこの女子とアンに声をかけた]
てるてる坊主と戯れている場合じゃない。
今日は勝ちに行くぞ。
第2は女子が嫌がりゃしないか――
しなさそうだな。
[ちらりと見た先は、内緒である。
手加減せん、と笑うベックに、似たような笑みを浮かべてみせる。多分、自分の方が悪い笑みだ]
そりゃあ、まあな?
負ける気なら、休むわ。
[言いながら、腕のばし]
準備体操は大事よね。
それとも、ラジオ体操って競技だったのかしら?
(なんだか楽しそうな二人の男子の会話に微笑んで)
さて、晴れ空のついでに、てるてる坊主さん、私たちを勝たせてくださいね。
(教室の窓に揺れるてるてる坊主を見上げた*)
んー?
まあ……
[信じているのかと言われると、ぽりぽりと頭を掻いてしまう]
まあ、神隠しがあったとして、でもてるてる坊主吊すのやめなかったんだから、悪いことばかりじゃなかったんだろうよ。
[言って、微笑んだ]
ラジオ体操競技。
何を競うんだろうな。
[微笑むチカノに、腕組みして悩んでみせる]
まあ、大丈夫だろ。
ベックの輝子さん、御利益ありそうだしな。
[自分の福笑いみたいなてるてる坊主は、見ないことにしておいた]
ふん、そうかもしれん。
そうかもしれんが、その笑顔、気に食わん。
[組んだ肩に乗りかかるように体重をかけ]
ラジオ体操が競技ならば…。
芸術点で競うしかなかろう。なぁ、チカノ?
[きらりと歯を輝かせた]
ラジオ体操競技は
歌の元気さと振りの完璧さを競うのっ!
[大真面目である。
窓にかかったてるてる坊主はにっこりスマイルマークを太陽に向けていた]
なんか笑顔のことはお前に指摘されたくねー
[のしっと重くなる肩。
無駄とは知りつつ、やっぱりぬぐぐとベックの顔を押し返すのでした]
芸術点か。
元気さはコハルがいれば大丈夫そうだな。
俺はマイナス点にしかなりそうにないので、身代わりにうちの犬を連れてこよう。
歌なんかあったか?
[はて、と首をひねり。
笑顔については、なんのことやら]
ラジオ体操が踊れる犬を手に入れたのか。
賢いな。
連れてこい、見てやろう。
あれだろ。
あ〜た〜らし〜い あ〜さが きた〜
[音痴]
正直驚くぞ。
代々うちにいる犬だが、運動会が大好きだ。
[ふふんと自慢げに胸を反らした。
飼い主馬鹿だ]
えー、マジで? やばくなーい!?
[アンを中心として女子達が騒ぐ。
今朝一番に登校したときに、窓辺のてるてる坊主が首から切れていたのだという]
[顔を引きつらせて組んでいた肩を開放する]
お前の歌は…遠吠えか?
飼い犬といいコンビが組めそうだ。
[校庭の中央に向かうにつれ、塊を大きくする女子たちに続いて歩を進める。
間もなく開会式]
だから戦力外だって言っただろうが。
……。
じゃあお前が歌えばいいだろオペラ歌手。
[犬並みと評された歌声。
離れていくベックに半眼になる]
[茂みから現れたのは、いつの間にか女子の輪から離れていたワンコ]
何持って来たの?
変なもの食べちゃダメだよぉー?
[ワンコが咥えているものを取ろうと、手を伸ばす]
よしいっけー!!
[なんて校庭からコハルのおたけびが聞こえてくる。
授業とは違い本気で勝負するサッカーが気に入った様子。女子サッカー部があればよかったのになあ、なんて。バレー部を引退したコハルは思うのだった]
[わん、と。
すぐ背後から聞き慣れた吠え声]
うお。
なんだマルゴロウ驚かす な ……?
[どす、と体当たりしてくる自分の愛犬は、誰にして貰ったのか「3年1組必勝」のはちまきをしている]
あれ?
[自分の足下にいるのは間違いない、マルゴロウだ]
じゃあ、あれは?
[マシロの前に鎮座して、自慢げに尻尾を振っている、マルゴロウそっくりの、微妙にシャープなあの犬は?]
[見たことがないくらい低い位置に水銀は留まっている]
どこで拾ったのこれ?
[ワンコに連れられて、祠にそれを納めに参るのは、もうちょっと後の話]
[わん。
マルゴロウではない犬が、マシロに吠える。
どこに持っていたかもう一つ、土で汚れて布もかさかさなてるてる坊主をマシロに渡した]
[まあてるてる坊主の行方はさておき。
マルゴロウに似た犬は、マシロの呼び声には吠えるものの付いて行きはせず。
一度、マルゴロウを見ると、わん、と吠え]
お前、行かないのか?
[声をかけてもその場にじっと佇んでいて――]
[応援の最中、ワンコに渡されたてるてる坊主]
え、何これ……
[汚れて消えかけた顔、そして裾に書かれた文字]
『マシロ』……?
[不安げな顔で、クラスメイトを見やる]