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[間にあわなかったか、
それとも最初から無理のある勝負だったのか。
ソラは、そのまま行ってしまった]
……
[無言で、もの言わぬ体をかつぐ。
行く先はその名前と同じ空が見える屋上。
上を見つめる目は、何かを決意した*ようで*]
[そこには奇しくも他の死体も置かれていた。
思えば、死体を見るのも
初めてだったかもしれない。
――ここに来てからは]
仲良く並べてあげるから。
[ソラをグリタの隣に置いたのは
自己満足の嫌がらせ。
その目に涙はない。やるべきことがあるから]
ソラさんの仲間だったのか……会いたいな。
[ソラが伝えたいことなんて、日記を見れば分かる。
ただ、無性にクルミに会いたくて*下へと向かう*]
[ベンチに置きっぱなしだった医療品を手に取る。
使いどころは失ったが、まだ「意味」はあるモノ]
早く探さなきゃ。
[後悔はしたくない。
それに、日記はコハルに時間がないことも*知らせてていたから*]
[ぱたぱたと建物の中をめぐって
たどり着いたのは2階。
そこには、知らないはずなのに
見慣れた顔の少女――]
クル……
[気安くかけようとした声は
途中で途切れた。
向こうは自分のことを知らないのに、
馴れ馴れし過ぎる気がして]
じゃあクルミちゃん、でいいかな。
[自分の世界にいる親友と
勘違いしそうでそんな提案をしてみる。
普段は呼び捨てで呼んでいたから]
私、岸小春っていうんだ。
ちょっと話したいんだけど、いいかな。
いいよ。
……なんか変なの。
[最後の一言は、独り言のように言う。
クルミに促されるままにベンチに腰掛けて
話を切り出す]
……あのさ、クルミちゃんの世界って楽しい?
友達とか、たくさんいる?
私の世界に、友達がいるんだ。
クルミちゃんと見た目も名前も同じでね。
……しかも、こんな状況だから
変だなあって思ったんだ。
[目の前のクルミが何を考えているかは
コハルには分からない。
例え危害を加える意思があったとしても
それはどうでもよかった]
そっか。楽しいんだね。
友達もいるみたいだし……よかった。
[偽りのない安堵のため息が漏れる]
話、長くなっちゃうけど。
[そんな前置きの後で語り始める]
その、クルミちゃんと同じ子。
……私の世界だといじめられてて。
私も止めさせようかって、思ったんだけど。
「そうすると、コハルまで
同じ目にあっちゃうから」って言って。
……助けることもできなくて。
だから、クルミちゃんが幸せだったら
少しは安心できるかなって思ったの。
分かってるよ。
クルミちゃんは、クルミじゃないもの。
だけど「クルミ」は、
私の世界で生きるには優し過ぎるの。
実際……今生きてるのかどうかも分からないし。
[ここに来る直前にかかってきた
いつもとは様子の違う電話。
時間の流れ]
だから、苦しんでるのを見てるのは辛い。
……あの子が生きにくい私の世界は、嫌い。
[助けることはできなかったのかと
クルミから問われれば]
気持ちに無関係、ってことはできないよ。
よかれと思ってしたことを
咎められたこともあるし。
[ただ、その相手は「クルミ」じゃないと
補足して]
……ソラさんだったら、
「それでも意味がある」って言ったんだろうな。
[意味を求めず、ただ自ら運命を拓こうとして
散った女性のことを思い出す]
うん。
クルミが笑顔になれない世界だったら
私はいらない。例え自分が死んだとしても。
[ためらいのない答え。
自分にとって意味のないものなら
それが世界そのものでも価値はない]
それで悲しむ人がいるなら、私はやらない。
分かってもらおうとも思ってない。
それに私は……優しくなんてないよ。
人殺しだしね。
[今でも、忘れられない。
親友にさえ言えなかった告白]
それは、分かってる。
まだ生きてるかもしれないって。
だけど、あのまま私の世界が残っても
きっと同じ思いをさせる。
だから最初は神になろうと思ってた。
それで、ここに来て
……自分の世界って本当に酷いんだって。
ここに来た人が、みんないい人だったから。
みんなが自分の世界に価値があると思って
戦うなら、私は多分……いてはいけない。
私ね。
父親を――殺したの。小さい頃に。
……何ていうか、守りたかったんだ。
お母さんを。
父親って言うのが、クズの見本市みたいな奴で。
何もしてないのに、殴ってばっかりいて。
私もいつも殴られてた。
だから――殺したの。
でも、お母さんは
「もう絶対にこんなことしちゃだめ」って
泣いてた。
それから、他の人を悲しませるようなことは
したくないって、思うようになったの。
[クルミを見ていられなくて、視線が逸れる]
助けたと思ってた
お母さんも死んじゃったしね。
その時のケガとか、いろいろで。
自分の行動が遅かったことは
後悔してるけど……
自分のしたことは自体は後悔してないんだ。
優しいって言われるのは嬉しいけど……
でも、何かが違うと思う。
[クルミの気持ちが嬉しい分だけ、
出てくる言葉には否定的になってしまう]
私は……結構このゲーム自体を疑ってるけどね。
悪趣味な神様が楽しみ、的な感じでさ。
[苦笑をひとつして]
したいことのため……うん。
[もうやりたいことは決まっていた。
ただ、それはクルミのいう「戦う」とは違うと思って]
あはは、ソラさんだったら
確かに言いそうだね。
[友達と語るように声を立てて笑うのは
久しぶりのような*気がした*]
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