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―虚構の紡ぎ手・Level 6―
[春にはまだ少し遠い、ある日の昼下がり。
わたしは紡ぎ出した『物語』を、ベッドに横たわったままの『彼』に読み聞かせていた。]
…だから。全員無事に帰れなかったのは、仕方のないことなの。
あなたは何も、悪くないのよ。
[幸いにも『彼』は覚えていない。
あの日、松柏駅周辺で起きた出来事を。]
村瀬さんが、ああなってしまったのも。
あなたの所為じゃないの。
[わたしは『彼』の髪をそっと撫で、囁く。
パトロール中に起きた、居眠り運転のトラックによる事故。
その所為で『彼』とわたしと生徒達の運命は狂ってしまった。
それでも、『彼』の中であの日の記憶がないのは。
わたしにとって好都合だった。]
[あの日から毎日、わたしは『物語』を紡いで『彼』のいる病室へ通っている。
今日は『偽汽車』をモチーフにした『物語』。
どれかが『彼』の記憶として定着し、真実を覆い隠してくれるように願って。
今日も、わたしは『物語』を語り続ける。
たったひとりの聞き手のために。]
―完―
―クランクアップ〜Level6〜―
[おつかれさまでしたぁ!
ラストシーンを撮り終えた直後。
そんな、元気のいい声が響く。
それを発したのは、劇中で最初に退場した二宮だった。
監督なんだからちょい役でいいの、とは言ってたけど。
監督って大変よね、本当にお疲れ様。]
それにしても、随分大規模な撮影になったわよねぇ…。
文化祭での発表が楽しみね?うふふ。
ね。
お疲れ様会って何処でやるの?
[にっこりと笑いながら、二宮に聞く。]
あ、お酒が出る店はだめよ?
まだ貴方達、未成年なんだからね。めっ。
[と、ちょっぴりおどけてみせたりするけれど。
ちらちらと、共演者だった『彼』の姿を目で追ってしまう。
いつ、お誘いしようかしら。
それとも、お誘い待ちの方がいいのかしら。
わたしはちょっとだけ、悩んでいた。]
―続・クランクアップ〜Level6〜―
…あ。
ありがとう、須藤先生。
[差し出されたお茶のペットボトルを手に取り、いつものように微笑む。
お誘いのことで悩んでいたの、悟られていない…わよね?]
ええ、公開がとっても楽しみ。
きっと絶賛されると思うわ。みんな一生懸命やってたもの。
[須藤先生と共演出来たことも嬉しかったのだけど、
それを口にするのはなんだか面映い。]
うふふ。
ホラー映画って聞いてたから、ちゃんとやらなきゃって思ったの。
ちょっと怖いくらいの方がいいと思うわぁ?
[軽口を返しながら、くすりと笑う。]
…え?
あ、いいんですか?
[あまりに嬉しかったものだから、思わず声が裏返ってしまった。
気付かれていませんように。]
あの、わたし…美味しいフレンチのお店知ってるんです。
あ、純粋にお酒を飲むならお洒落なバーの方がいい、ですか?
[どうしよう。誘い待ちだったのがバレてしまうかも。
…でも、いいかな。別に。]
えっと、それから…。
[流石にこれは大声で話せないから、須藤先生の耳元で]
わたし、お酒はあまり強くないですから。
…つぶれちゃったら、おうちまで送ってくださいね?
[お茶を飲んでいる時、口にする話題じゃなかったかしら。
…でも、ちょっと反応が見てみたかったの。ごめんね?]
―続々・クランクアップ〜Level6〜―
はい。
文化祭の後、楽しみにしてます。
[約束を取り付けることが出来て、満足げな笑顔。
耳打ちした後の反応も、なんだか初々しくてかわいい
なんて思っちゃったりして。]
はぁい、いってらっしゃい。
[ひらひらと手を振って、須藤先生を見送るわたしなのでした。]
─END─
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