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ら く え ん …? と、何…?
もしかしてアンは…
眠る前のこと、覚えてるですか?
[刻まれた数字を見比べ、また向き直る。
すると長い髪の少女は、
肯定も否定も伝えず、手を挙げ今度は上を、
硝子の天井を包み込む素振りをして。
そして空中へ溶け込むように去って行った]
[その時ひときわ、
カナメの声が高まる]
カナメ…?なに…。
ルリが、生き延びる為に…?
ミナツ…?
ミナツが、どうしたですか…?
ミナツの所為でレンが…?
そんなこと、ミナツ、言ってたですか…?
わかりま、せん…。
なにを…はい、
ミナツには、死者になってほしくない、です…
[やがて声は、優しげな調子を湛えてきて]
手向ける。
[扉の前でしゃがみこみ、、
幾度も幾度も吐かれる言葉]
どうして、ですか――。
死者って、なんですか。
[地を這う蟻へ、差し出された指]
[見えぬものとの対峙は続く]
――いいえ?
カナメは、良いものだとおもいます。
それにカナメだけじゃなくて……
…さわげばいい。
ただし ちゅういぶかく。
[含蓄じみたこれは、
ルリ自身の言葉ではない]
せかいが かんまんに ちんもくしていく…?
[蟻を手に乗せたまま。
届かぬ扉を、knockするフリ]
……ずっと、思ってたです。
テンマは、いぢわる です。
そのくせ――
[あとは、口をつぐんだ]
鍵はまだ、かえしてあげない。
[ポケットの中身へ触れて独り言。
いましばらくは必要と。思ったか]
振り回したら、
…蟻、目を回してしまう、です。
[立ち上がる際には、よろめいて。
より緑が茂る所へ、蟻を連れて行こうと
樹の間に消え行く姿*]
誰に?
何を?
[“手向ける”ことを尋ねても、答えは聞こえない]
カナメ……
[泣かないで、という声は風に飲まれるほどの*か細さ*]
[ずきり、ずきり、痛む頭。失人は、右手で目頭を抑えて俯いた。瞳を閉じて、真っ暗な目の前に映るのは女の後ろ姿。首から上は、ぼやけていて見えないけれど。それでも、わかる。彼女は大切な人だった気がする。意識の底から浮かぶ、失人の想いとは違う、不思議な感情が、言葉になって口から漏れる。]
来世でまた会おう……か。
果たして俺に来世があるかな………
……。
[墓碑のミナツたちを写真に納め、
そのままレンズを墓碑に向ける]
requiescat in pace やすらかにねむれ。
[刻まれた言葉を読み上げた]
ダーリンは何をしたいの?
ずっと眠っていて欲しいなら、世界の終わりまで起こさなければよかったのに──ね。
眠り姫を無理矢理起こして、手向けろだなんて、酷い王子様。
[キッチンに響く小さな足音。
ぺたぺたぺたとシンクへ向かい、続いて物音と水音]
しゃぼんだま。
[ふぅ、とストローに息を吹き込むと、ぽたぽたと滴が垂れる。
しばらくそれを繰り返すと、いつしか綺麗な球体を作り出せるようになった]
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