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そうだな。少し、積もるといいな。
[イマリには、遠くを見ながらそう答えて。ひゅぅと吹き抜けた風は、俺の髪を撫でていって。靡く短めの髪が、少しだけくすぐったかった。]
お、じゃぁ飯一緒に行く?
[同意してくれた美夏ちゃんに、そう聞いてみて]
あぁ、勝ったからおごり。
[クスクス、美夏ちゃんに微笑んで。彼女とは、なんだか一緒にいたいんだ。なんだか、楽しいんだ。麻雀以外で楽しいのって、凄く久しぶりなんだ。]
何くいたい?好きなもんとかある?
ズイハラさん、何一人で悶えてんすか?
[葛藤する彼を眺めつつ]
オムライスかー!
黄色いふわふわの………ごほごほ。
[黄色で昨日の事を思い出したらしい]
おう、またなイマリ。
[去っていくイマリに軽く右手をあげて挨拶。]
ズイハラさん?
俺ら今から飯行きますけど、ご一緒にどうっすか?
[一応誘ってみる]
う、うまくやれって………そんなんじゃないっすよ!
[去っていくズイハラさんを見ながら、美夏ちゃんに行こうかと声をかけた。時間も時間だから、人とすれ違わなかったのは気にもしなかったけれど。]
さみぃー。美夏ちゃん大丈夫?
[などと、たまに心配しながら歩いていく]
[店についても、人がいない事など気にせずに席について。メニューも特に見ることなく、厨房に向かって]
オムライス2つよろしくー。
[と声をかける。しばらくは、美夏ちゃんとの会話を楽しんだろうか。しばらくすると、一人の少女がオムライスを運んでやって来た。何故か高校の制服で、俺は不審に思い顔をあげた。]
………アン……ちゃん?
あれ………俺おかしくなったかな。
すんません、知り合いに似てたもんで。
[それにしても似ている。おかしい。ここはおかしい。音がしないんだ。厨房からも、外からも、音がしないんだ。]
[どうしたのかと、美夏ちゃんは聞いたろうか。俺は、なんでもないと答えるだろう。それでも、ここはおかしいと思ったから。オムライスを食べ終わったなら、勘定を少し多目にテーブルに置いて]
すいません、勘定ここに置きます。
美夏ちゃん、出よう。なんか変だ。
[そう言って、彼女を連れ出した。街を見た。車の一台も通らない。コンビニを覗いた。店員すらも見当たらない。おかしい、おかしい、おかしい。]
美夏ちゃん、おかしいよ。人がいないんだ。
一回、家に帰ってみて?親とかいるか、確認してよ。
なんかあったら、すぐメールして。
俺、ぶっ飛んで行くから。
[美夏ちゃんと別れて、俺は走っていた。あり得ないんだ。言い様のない胸騒ぎがするんだ。]
―自宅―
おとん!いるか!?
[ばんっとドアを開けた。しんと静まり返った家の中。どこを探しても、父親の姿はなかった。母親はいない。外に男を作って、俺が中学の頃出ていった。今日はたまたま帰らなかっただけなのか?それとも………]
……………
[俺は、しばらく美夏ちゃんからのメールを待っていた*]
やっぱり、なんかあるんだ………
親父、生きてんのかなぁ………
美夏ちゃん、大丈夫かなぁ………
[頭に響く、不思議な声。それはきっと、あの人の]
………ズイハラさん………
[気がついたら、眠っていたらしい。着信メールを確認していると、俺はおかしなメールを見つけた。]
11/1 MON
差出人 アン
件名 わかるでしょ?
内容
もういないのよ。
誰も、いないのよ。
[意味がわからなくて、俺は外に出た。やはりそこには誰もいなくて。孤独、その為だけにあるような世界。そこに、俺は言い様のない不安と、小さな安心を感じていた。]
「誰もいないのよ。」
[不意に聞こえた声に振り返れば、そこには昨日の少女………アンが立っていて。美しいはずの黒髪は、何故かとても恐ろしくて。見慣れたはずの制服が、何故かとても異様に見えて。]
アン………お前、なんでここに………
[俺の質問には答えず、彼女はこの世界の事を語る。消えた人々、死者の思い、帰る方法。そして、自分はこの世界に長くいられないという事。一方的に俺にそれを伝えると、黒髪の少女はくるりと背を向けた。]
「サヨナラ、ジュンタ」
[何度も聞いたサヨナラは、何故か心に刺さった。]
待て、アン!もう少し話を!
[彼女は表情すら変えず、消え入るように去っていった。]
[日はまだ高い。俺は学校に行っていた。下駄箱に収まった上靴達に温もりはなく。職員室にも人影はない。いつも、休みだと言うのに青春してる野球部の叫びも。体育館からいつも聞こえるはずのバスケ部の声も。テニスコートで和気藹々としていたテニス部の黄色い声援も。そこにはない。]
なんなんだよ………なんなんだよここは!
[久しぶりに着た制服は、誰に見られるわけでもなく。珍しく履いた上靴は、誰もいない廊下に足音を響かせるだけで。]
「まだ信じられないの?」
[何処からか聞こえたその声に、俺は振り返る。すぐ横にあった理科室の中で、たたずむ一人の女生徒がいた。長い黒髪のその人は、何故かとても異様な雰囲気がした。]
「私のいう事、まだ信じられないの?ジュンタ。」
[雪は、ちらちらと降り積もる。冬に広がるその空は、灰色の雲に覆われていた。葉を失った木々が寒そうに、その枝を擦り会わせる音がした。]
アン………なんでお前はここにいる………?
「私はいつも、ここにいる。貴方を見てる。」
嘘だ、お前は俺を見ていなかった!
「いいえ、見ていた。ずっと、見ていたよ?」
なら……ならなんで!どうして!
俺はこんな一年を送らなきゃいけなかったんだ?
俺は、俺は………!
[彼女の瞳は、とても悲しそうに見えて。ふいに、言葉を失ってしまうのだけど。それでも、俺は彼女に。久しぶりに会えた彼女に。伝えたくて、伝えられなかった言葉があり。]
アン……俺は………ずっと…………
[その言葉を紡ごうとした時、ふっと美夏の顔が頭をよぎり。]
「なぁに?ジュンタ」
[不思議そうに俺を見る女生徒に、小さく舌打ちをして。信じられないのは、自分自身だ。知り合ってたった2日。そんな女の顔が、こんな時にまで頭をよぎるなんて。]
なんでも………ない。
[そう、俺はもう失ったんだ。今さら何が取り戻せる?]
「そう………サヨナラ、ジュンタ。」
[泣きたくなる。サヨナラの言葉を聞くたびに、俺の心は縛られていく。凍りついていくんだ。自分自身の足を、一度強く殴ってみて。痛みから我に帰り顔を上げれば、もうそこに彼女の姿はなかったと思う。]
―学校・理科室―
[誰もいない学校で、俺は女を探していた。一人は先ほどいなくなったアン。もう一人は………]
ち、昼過ぎじゃ、もういねぇかなぁ。
[一休み、と理科室の机に寝転んだ。]
[誰もいない理科室。冬の訪れは、全てを凍らせてしまうのだろうか。凍りついたように静かな、平日の学園。外に吹く木枯らしが、がんがんと窓を叩いている。鳥の声すらも聞こえなくて、望まずして訪れた静寂。まさにそうだ、世界は凍っているのだ。]
氷付けの世界………ね。
俺にはお似合いの世界なのかもしれねぇな。
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