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― 生贄の檻のまえ ―
[ひょろ長い、という表現がまさに、という男ここにあり。
薄手の布で覆った眼の色は、男の過去犯された者しか知らぬ。
その声は、自ら噛んだ猿轡越しにしか出ず。やはり、近寄らぬことには、その意は伝わらぬ。]
キシキシキシ…
ケコケコケコ…
ギャザザザザザザザザ
[風が吹きすさぶこの村では、
なお、その声は冷たい大気に飲まれる。
そして、風の中、ひょろ長い男は、やはり風に衣服を靡かせながら、視界の歪みから入ってくるかのような存在感で、
今は、石女の檻のまえにあった。
その傍の桟橋の海に、ついと視線を向ける。
落ちた男は、這い上がっては来ず…。]
[――どさり。]
[長柄の斧を担ぐ人影が、薪束を置いていく。]
[舟小屋の軒下に、どさり]
[廃教会の入口に、どさり]
["家"とも呼べないねぐらの其処此処に。]
[頼まれもせぬだけ手つきはぞんざいに。]
[檻の石女が寝起きしていた場所は… 通り過ぎた。]
[苔むす墓守小屋に、どさり]
[かつての漁村に程近い森は、船材を得るために
野放図に伐採されたまま、荒果て放置されていて。
掘り起こした古い切り株を断ち割った薪は
節が多く、ところどころ泥を噛んでいる。]
[ず ずず、 ず
金属の錨のようなものを引き摺る、音。
男の足に繋がれたその重石はびっしりと付着した甲殻類で全貌が見えない。
古い呪いにふれた者、禁忌を犯した咎人の証。
上質だった仕立も今や立派な襤褸と化した。
男の歩みの遅さは、かつての優雅さとは程遠く、
しかしヒビの入った眼鏡をつい、と抑える指先は変わらぬ神経質さで隙間ない。]
あちらに私が行ったら、この桟橋は壊れそうだね。
[赤毛の男と同じく桟橋の先、檻を見やる]
しかし供儀とは、……ああ、実に興味深い。
[道を外れた知の探求者が吐く息は白く、しかしやたらと熱っぽい]
[…招く船足の絶えて久しい灯台にも、どさり。]
…
マミ
塗れることが、修行なのかね?
[ひとり言つるような僧の声が耳に入ってか、尋ねる。
上体を起こす男のフェルト帽の房が重たげに*揺れた*。]
[己の呼ぶ声に振り返る]
罪を償う為の禊。
死したる者を鳥で送るが我の使命。
その鳥を己の身の内に、罪深き事。
[半裸の体は痩せこけていた]
ああ、欲しい。腹が減る。
私の血肉になった鳥達が求めているのか?
[呟き。
かの人間の飢えた体は人間の暖かなモノを欲求する
脚衣の中の細い糸に指を絡める]
鳥か。
…そんな弔いもあるのだね。
[樹皮のように固く乾いた手が、木くずを払う。]
見せしめのための其れよりは、
使命とするに きっとまっとうに違いない。
[つめたい風に紛れて、壮年の男の耳が拾う呟きは端々。
薄い眉を動かさず――――枯れ枝の如き僧を見詰める。]
… 死肉を貪った鳥どもも、
似たような思いをしていたのかもしれんよ。
あぁ、だりぃなぁ…。
[ゆっくりと目を開ける。
ここは今となっては使われていない網小屋。
網を布団代わりに横になっていた。]
…あぁ。
[天井を見上げて、また嘆息し、…そっと目を閉じた。]
餓えからその鳥達を喰らってしまった私は、これからは鳥達の代わりを為さなければならない。
穢れた私が鳥達に近づけるために、禊をするのです。
貴方も送って上げますよ。
ここで尽きれば――
[答えにならない答え、返事にならない返事
悟りか、狂気か、澄んだ瞳で遠くを見ている]
>>#9
やぁ、ドロテア…。
どうやら、ラウリは浮かんでこないようだ。君はそこで見てたろう?
[悲鳴もあげない女の檻に近づいて、塞がれた布越しの視線、空気に溶けそうな声をかける。
それからいきなり檻を掴んでいたその女の手を包んで掴むと、檻に溶け込むくらいひどい力で握り込んだ。
そこらに響き渡るのは、女の悲鳴と罵声。]
まぁ、とりあえず、君の海底から引き上げられた深海魚のように膨れた身体も、もう見納めらしい。ああ、僕にはわかるんだよ。
[痛みに、檻の中に逃げ込もうとするドロテアの手をぐっと檻外に引き出すと、その胸の膨らみに大きな手を伸ばし揉みしだいた。それからうすぎたない襤褸の布切れを懐から取り出すと、慣れた手つきで檻にその手を脚を縛ってから、女の尻を引き寄せた。抵抗すれば、その脇腹にえぐるように拳を奮って…。
そののちは、女の声が抵抗から懇願へ、そして最後には嬌声へと変わる水音、そして、檻ごしに肉のぶつかる音が続く。女が限界を迎え、その身体に力がなくなっても、男は、その石女の苗床に己の竿を突き立て続けた。
だが、ふと、音は止み、女は檻の中崩れ落ちるが、そこに男の体液は注がれない。]
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